モール型ECサイトを構築したいけれど、自社に合う出品・出店先がどこか分からない…という悩みをお持ちの方も多いでしょう。ECモールには種類があり、自社の目的や販売戦略に応じて選ぶ必要があります。
本記事ではECモールの概要、3種類のECモールの特徴やメリット・デメリットを紹介するほか、国内ECモール主要7社を比較します。自社に合うECモールのイメージを把握するために、ぜひ役立ててください。

ECモールとは
ECモールとは、Amazonや楽天市場などに代表される、インターネット上の仮想的なショッピングモールです。企業や個人事業主が自社商品を「出品」したり、テナントとしてECサイトを「出店」したりします。
用意されたプラットフォームを利用するので、参加するECモールのドメインを使用するのがポイントです。独自ドメインの使用にこだわる場合は、自社ECを構築することになります。自社ECとは、自社で取得したドメインを元に、自らの方針でECサイトを運営することです。
モール型ECサイトと自社ECサイトの違いをおさらい
ECサイトの構築・運用はモール型ECと自社ECの2種類に大別できます。ここではモール型ECと自社ECの違いをおさらいしましょう。
項目 | モール型EC | 自社EC |
集客力 | 高い | 低い |
運用・構築の自由度 | 低い | 高い |
ブランディング | 困難 | 容易 |
費用 | モールの料金体系で決まる | 自社の予算内で自由に決められる |
モール型ECを活用する最大のメリットは、その集客力の高さです。知名度・信頼性の高さから、ECモール自体がブランド化していることから、日常的にアクセスするコアなユーザーを数多く抱えています。そのため、商品やブランド自体の知名度が低い場合には、モール型ECを利用したほうがユーザーから見つけてもらえるチャンスが高くなると言えるでしょう。
ECモール自体がブランド化しているので、自社の個性を打ち出すことはできません。運用・構築に関しても、ECモールの都合に合わせて体制を整える必要があります。
モール型ECにかかる費用は、それぞれのモールによって料金体系が異なるため一概に高い、安いと言えません。一方自社ECサイトの構築では、無料ASPから高額なフルスクラッチまで選択肢が多いため、ECサイトの売上規模に見合った予算の範囲内で自由に決めることが可能です。
モール型3種類の特徴やメリット
ECモールには3種類あり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
ECモールのタイプ | 運用の特徴 |
マーケットプレイス型 | ・フロントエンド業務:モール運営側 ・バックエンド業務:出品側(自社) |
テナント型 | ・フロントエンド業務:テナント側(自社) ・バックエンド業務:テナント(自社) |
総合管理型 | 複数の異なるブランドやショップの管理を一元化(自社モール構築) |
ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
出品型:マーケットプレイス型ECモール
ECビジネスに初めて参入するなど、ネット上で商品販売だけを行う場合には、Amazonに代表されるマーケットプレイス型がおすすめです。自社商品の登録作業は必要ですがモール本部からのサポートを受けられるほか、自社サーバー不要、商品発送を委託できるため簡単に始められるのがメリットと言えます。
デメリットはブランディングが難しく、価格競争に巻き込まれやすい、売上手数料が高い傾向にあるなどです。
出店型:テナント型ECモール
自社のブランド力を活かしてECビジネスに注力したい際は、楽天市場に代表されるテナント型がおすすめです。モール内に自社の店舗ページを開設して運営するため、マーケットプレイス型よりもブランディングしやすく、モール本部からのサポートも受けられるのがメリットと言えます。
モールによってランニングコストは異なりますが、原則、売れても売れなくても固定費がかかる点や発送・顧客対応など運営業務にリソースが必要な点がデメリットです。テナント型モールに出店する場合も、価格競争は避けられないため独自のサービスで差別化を図りましょう。
統合管理型:自社モール
統合管理型は、自社でモールの本部も出店する店舗も運営するため、複数のブランドを展開する企業におすすめです。ブランドやショップを一元管理・運用でき、ブランディングに強く自社ブランドの認知拡大をねらえるのがメリットと言えます。
基本的に自社でモール構築から運営まで行うため、自社モールにはそもそも集客力がありません。そのためWebマーケティングも自社で行う必要があります。構築時には初期費用やローンチまで時間がかかる点や、運営にノウハウが必要になる点がデメリットと言えるでしょう。
主要ECモール7社の特徴・費用を比較
ここでは国内主要ECモール7社の特徴や出店費用・料金体系(2021年12月現在)などを見ていきましょう。料金体系を見ると、各モールがどのように収益を上げる方針なのかがわかります。初期費用が無料の場合には、月額費用や売上手数料をチェックすることが大切です。
どの有名ECモールが自社の商材や実情に合っているのか、比較検討する際にぜひ参考にしてください。
1. 楽天市場
「楽天市場」は国内で最も閲覧されているオンラインショッピングモールです。知名度の高さに加えて、楽天ポイントを獲得できるさまざまなキャンペーンが展開されており、多くのユーザーを集客しています。幅広い年代層から人気があり、特に女性の視聴者が多い傾向です。
商品の良さを伝えるページを作成できるため、実店舗の店員の代わりを果たせます。割引クーポンの付与や定期購入・頒布会の展開も可能。特色のある店舗ページを作成したり顧客対応・サービスを提供したりできるので、ファンやリピーターを作りたいなら楽天市場はおすすめです。
ネット販売のプロであるECコンサルタントのサポートも受けられます。ただし楽天市場では運用スタイルに合わせて3つの出店プランが用意されており、いずれを選んでも月額料金は他のモールと比べても高めです。そこで出店する際には、初期費用とランニングコストを十分まかなえる売上を期待できるか検討してください。
なお月額料金は10万円の最上位プランを選ぶと、「登録可能商品数」は5,000商品から無制限に、「画像容量」5GBから無制限になります。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
いずれのプランでも6万円 | 19,500円〜10万円 | 月間売上高の 2.0〜7.0% | − | 5,000点〜無制限 |
2. Amazonジャパン
2020年度の小売業調査によると売上高2兆円を突破したのがAmazonジャパンです。会員制プログラムのAmazonプライムを提供しており、迅速な配送サービスを展開しています。幅広い年代層に支持されており、特に男性の視聴者が多い傾向です。
商品の配送料は「自社で発送」「フルフィルメント by Amazon(FBA)を利用してAmazonに発送を任せるプライム配送特典を提供」するかどうかで異なります。同一の商品を複数の出品者が扱っている場合、価格設定ルールを設けて自動で価格を変動させることが可能です。
基本的に、出品までのハードルが低いのが特徴。セラーセントラルあるいはAPI経由で出品情報を作成しますが、別の出品者がすでに同一の商品を出品している場合には既存の出品情報を使用します。
初期費用なしでスタートできるので、ネット通販で商品を売ってみたいと考える企業におすすめです。自社のブランディングは難しいため、販売チャネルの1つとして割り切ると良いでしょう。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
無料 | ・大口:4,900円 ・小口:月額ではなく商品あたり100円 | 8〜45% | − | ・小口:毎月49点まで ・大口:毎月49点以上無制限 |
3. Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、大きな顧客基盤の上にECモールを展開。集客において、グループ全体の相乗効果を期待できます。日本で多くの利用者がいるポータルサイトYahoo! JAPANのトップページ、検索結果などから、さらにソフトバンクやLINEから、Yahoo!プレミアム会員、PayPay、ヤフーカードなどからの集客が可能です。Tポイントとも連携していることから、Tポイントユーザーも取り込めるオンラインショッピングモールとなっています。
Yahoo!ショッピングの大きな特徴は、費用を気にせずネットショップを開設できる手軽さです。初期費用も月額料金も無料なので、固定費が発生しません。ただし、ヤフーがキャンペーンを実施する場合は、その原資・手数料・決済サービス個別手数料などを負担する必要がある場合があります。
自社で自由にプロモーションをかけることも可能です。Yahoo!ショッピングのページに外部リンクの設置が可能で、自社ECサイトやSNSへの誘導ができます。自社で顧客のメールアドレスを保有(顧客が同意した場合)できるので、販促活動に使えるのもポイント。
無料な上、開店に向けたページ作成や開店後は売上アップなども相談できるので、ネット通販を初めて試してみたい企業におすすめです。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
無料 | 無料 | 無料 | なし | 無制限 |
4. ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは、アパレル業界最大手のファッション通販サイト。ユーザーの7割はF1層(20歳から34歳までの女性)です。EC発ブランドなど数多くのブランドが公式ストアを展開しているほか、ファッションメディアWEARも運営されていることから、アパレル好きの消費者に影響力があります。
ZOZOTOWNへの出店は、自社の商材をZOZOTOWNの拠点に預ける「受託販売」です。「ツケ払い(いわゆる従来の後払い)」サービスを導入したことから若い層も取り込んでいます。自社の商材がアパレル関連で、これからネット通販に乗り出す場合にはぜひ検討したいECモールです。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
要問い合わせ |
5. au PAY マーケット(旧au Wowma!)
au PAYマーケットは、2,500万人のauユーザーを集客できるECモールです。利用ユーザーは主に30〜40代。auサイトトップや全国のauショップでも、auユーザーへのモール利用のマーケティングが行われます。かつてはau Wowma! (ワウマ)として知られていましたが、KDDIのau経済圏構想をベースに2020年5月に名称変更しました。
顧客情報を分析しマーケティング施策に役立つ提案をタイムリーに行うなど、出店事業者との「共創共栄」戦略を打ち出しています。18歳以上の個人事業主、あるいは日本法人のみが出店でき、海外法人では出店できません。Web上でエントリー後に出店審査が行われ、出店審査通過から最短2~4週間ほどで開店可能です。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
無料 | ・5,280円 ・成約手数料(4.5~9.0%)には決済代行会社が取扱う決済サービス利用料が含まれる | 4.5〜9% | 1年 | 5万点まで無料 |
6. ポンパレモール
リクルートが運営しているオンラインショッピングモール。リクルートが展開する「じゃらん」「HOT PEPPERグルメ」「HOT PEPPER Beauty」など予約・購入サービスの会員と、Pontaポイント連携により約9,000万人のPonta会員からの集客を見込めます。
初期登録費用はかかりますが、月々の基本出店料は無料です。2021年12月現在、感染症対策のため新規の出店受付は停止中ですが、再開するまでの間に出店を検討されてはいかがでしょう。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
6万円 | 無料 (画像容量オプション1万〜2.5万円) | 2.5% | − | 100万点以上は要相談 |
7. Qoo10
Qoo10はeBay Japanが日本国内向けに運営しているオープンマーケットプレイスです。テレビCMに取り組んでいるので、徐々に知名度が向上しています。スマホでの集客に強く、ビューティー・コスメカテゴリー商品の人気が高いECモールです。女性からの支持率が70%以上と高く、そのうち10~30代が65%以上となっています。
出店の登録はWebからのみ可能です。出店審査にかかる日数はおよそ7日間。審査に通れば「J・QSM」と呼ばれる販売店専用の管理プログラムを使って、Qoo10に商品登録・注文確認・発送処理・広告を設定します。カード決済などの決済手数料はQoo10側の負担で、販売代金の回収は代行してもらえるほか、出荷は自社で行う(配送代行も可)のが特徴です。
エンタメ的なUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験の意)を提供しており、宝物探しをしたくてユーザーが訪問するECモールです。シンプルな料金体系なので、商材やターゲット層が合えば検討されてはいかがでしょう。
初期費用 | 月額料金 | 売上手数料 | 最低出店期間 | 商品登録数 |
無料 | 無料 | 7~12%(税抜) | いつでも | − |
ECモール選びは経験のあるランサーからアドバイスを得るのもあり
本記事では集客力のあるECモールへの出店・出品を検討中の方に向けて、ECモールの基礎知識や主要ECモール7社の特徴、費用をご紹介しました。楽天市場、Amazonジャパン、Yahoo!ショッピングの国内3大モール以外にも、特色のあるECモールが登場しています。
自社の商材はどのECモールと相性がいいのか決めかねている場合には、ECサイトの運用経験のあるランサーにアドバイスを求めてみてはいかがでしょう。専門知識が豊富やフリーランスに相談すれば、ECサイトのコンセプトづくりや適切なプロモーション施策につい現場経験者ならではのアドバイスを得られます。
