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ECの物販系分野の市場規模が21.71%増!2020年統計に見るECの成長と今後の可能性

2020年~2021年の新型コロナウイルス感染症の蔓延は、消費者の購買行動に大きな変化をもたらしました。特に物販系分野では実店舗からオンラインへの移行が進み、前年比21.71%増の12兆2,333億円と大きな成長を遂げています。

本記事では、2021年7月経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」を中心に、成長するBtoC、BtoB、スマホ経由の利用率、越境ECの現状と今後の展望を紹介します。ECへの新規参入や今後の拡大を検討している方は参考にしてください。

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【2020年】国内BtoCのEC市場規模・EC化率に見られる大きな変化

ECの市場規模調査
インターネット登場以前は、消費者が幅広く商品や価格を比較しようと思えば、数多くの実店舗に足を運んだり、カタログやチラシを集めて比較検討したりするしかありませんでした。しかしインターネットの登場とともに、消費者がほしい商品を、最適な価格で見つける仕組みが構築されました。

また、SSL(Secure Socket Layer:データを暗号化して送受信する仕組み)の登場によって、安心してクレジットカードや口座番号などの個人情報のやり取りができるようになりました。現在ではインターネットショッピングの利便性は大きく向上し、ECを利用する消費者も幅広い年齢に及んでいます。

その結果、BtoC-ECの市場規模は一貫して拡大を続けてきました。しかし、2020からの新型コロナウイルスの蔓延と外出自粛によって、BtoC-ECを取り巻く状況は大きな変化を余儀なくされています。

EC市場規模が前年比0.4%減となった2020年の特殊事情

2013年より成長を続けてきたBtoC-EC市場規模でしたが、2020年、初めて前年比マイナス0.43%となりました。これはEC市場規模の成長が頭打ちになったのではなく、2020年の特殊事情によります。

BtoCは「物販系」「サービス系」「デジタル系」の3分野で構成されています。それぞれの内訳は以下のようになっています。

  • 物販系分野…食品、家電、書籍、化粧品、インテリア、アパレル、自動車などの有形財
  • サービス系分野…旅行サービス、飲食サービス、チケット販売、フードデリバリーサービスなどの無形財
  • デジタル系分野…電子書籍や音楽配信、動画配信、オンラインゲームなどのデジタル財

2020年までのEC市場規模の推移を以下のグラフに見ることができます。

2020年、3分野の合計は19兆2,779億円となり、前年比830億円の減少となりました。

グラフから、物販系分野が大きく成長し、デジタル系分野も増加したにもかかわらず、サービス系分野の落ち込みが全体に影響したことが見て取れます。

各分野についてさらに詳しく見ていきましょう。

全カテゴリーで二桁成長率を遂げた物販系EC

物販系分野の市場規模は2019年の10兆515億円から、2020年の12兆2,333億円へ、伸長率21.71%と大きく伸長しています。

ここで注目したいのは、以下のグラフでは折れ線で表示されているEC化率です。EC化率とは、すべての商取引の中で、EC市場の取引が占める割合を示す指標です。EC化率を比較することで、その業界でECが利用されている割合を把握できます。

物販系分野のEC化率は2013年以降、一貫して順調に成長を続けていましたが、2019年から2020年にかけては急成長しています。

物販系分野での各業界の市場規模・EC化率を2019年、2020年と比較したグラフが以下のものです。

物販系分野ではあらゆる業界で市場規模が二桁成長を遂げていますが、なかでも大きく伸びているのが、「生活家電、AV機器、PC」「書籍、映像・音楽ソフト」「生活雑貨・家具・インテリア」の分野です。

EC化率に注目すると、従来「書籍、映像・音楽ソフト」「生活家電、AV機器、PC」「生活雑貨・家具・インテリア」の3分野でEC化が進んでいました。元々EC化が進んでいた分野が、外出自粛による「巣ごもり消費」の中で、一層伸長したことがわかります。

一方、「衣類・服飾雑貨」の分野は、2019年から2020年にEC化率が大きく進みました。本来であれば商品を手に取って確かめたい分野であるにも関わらずEC化率が伸長している背景には、各メーカーの魅力的なSNSが消費者の購買意欲を喚起したことや、Webサイトを通じての購入しやすさへの工夫が効果を上げていると考えられます。

その反面、EC化率が低い「食品・飲料・酒類」「化粧品・医薬品」「自動車、自動二輪車、パーツ」の分野では、EC化率はさほど上昇しませんでした。これらの分野は、商品を手に取って確かめてみたいという消費者のニーズや、物流などの整備が難しいことなどが背景にあったことがうかがえます。

以上を踏まえると、EC化が進んでいる「書籍、映像・音楽ソフト」「生活家電、AV機器、PC」「生活雑貨・家具・インテリア」「衣類・服飾雑貨」などの分野は、コロナ収束後も順調にEC化が進んでいくと予測されます。また「衣類・服飾雑貨」の伸長に見られるように、SNSやWebサイトをうまく活用することが、今後ますます重要になると考えられます。

コロナが打撃となったサービス系

サービス系分野には以下のサービスが分類されています。

  • 旅行サービス…インターネットを通じてホテルの予約や乗り物のチケット販売を行う
  • 飲食サービス…インターネットを通じて注文を受け、デリバリーしたり食材を販売したりする、またレストランの予約を行う
  • チケット販売…インターネットを通じて映画・演劇・コンサートなどのチケット予約・販売を行う
  • 金融サービス…インターネットを通じて投資など個人の資産管理を行う
  • 理美容サービス…インターネットを通じて美容院や理髪店の予約などを行う

この分野で大きな市場規模を確保しているのが「旅行サービス」です。詳しくは以下で紹介しますが、旅行業界は比較的早くからEC化が進み、2015年頃には航空チケットの予約の半分以上がECを通じてなされるまでになっていました。

その結果、サービス系分野全体も2013年以降、旅行サービスを中心に、2019年までは毎年8~11%程度の成長を遂げてきました。

2020年に入り、コロナ禍によってサービス系の中で最大の市場規模の「旅行サービス」が大きな打撃を受け、全体として、前年比マイナス36.05%という結果になってしまったのです。


サービス系各分野について、さらに詳しく見ていきましょう。

2020年、コロナ禍の直撃を受けた「旅行サービス」「チケット販売」は、前年の市場規模を大きく下回りました。一方、「飲食サービス」も外出自粛の影響を受けましたが、デリバリーなどがある程度の補填となったことがうかがえます。

また、ビットコインをはじめとした投資を始める人も多く、金融サービスは増加、さらに新しいサービスの形態として、フードデリバリーサービスが項目に登場しました。

新型コロナウイルスの影響が今後どうなるかは不透明ですが、今後のサービス系ECは少しずつ回復することが予測されます。

また、外出自粛に対してデリバリーを開始した飲食サービスに見られるように、状況に合わせた新しいサービスの創出が求められていることがわかります。

ステイホームが追い風となったデジタル系

上記の表で示したように、デジタル系分野は2019年から2020年にかけて14.9%の成長を遂げています。2013年から2019年にかけて、毎年5~9%程度の市場成長率を遂げていたことを考えると、外出自粛が成長の追い風になっていたと推測できます。

デジタル系分野で大きく成長したのが「電子出版」(前年比36.18%増)と「有料動画配信」(33.10%増)の2分野です。読書と動画が消費者のステイホーム生活の娯楽となっていたことがわかります。2020年以降も、書籍のデジタル化と有料動画配信の視聴は、消費者のライフスタイルに根付いていくことが予想されます。

BtoBのEC化率は安定して成長を続ける

BtoBにおけるECは、BtoCのECとは事業規模も仕組みも大きく異なるため、BtoCとの単純な比較はできませんが、EC化率は順調に伸びていることがうかがえます。

2020年のEC市場では、製造業を中心に設備投資が抑制され、減産も進んだことから、EC市場規模は前年比マイナス5.1%となりました。その反面、EC化率は順調に伸びており、BtoB-ECでも、インターネットを通じた受発注の仕組みが今後も進んでいくことが予測されます。

拡大を続けるスマホ経由の市場規模

ここからは購入経路に焦点を当て、EC市場を見ていきましょう。

以下のグラフは、スマホ経由での物販系の市場規模の推移です。2020年の物販系EC市場では、スマートフォン(スマホ)経由のEC利用者が50.9%を超えました。

従来のスマホでの購入は、文字が入力しにくいなど、消費者にとっては障壁の高いものでした、しかし現在のスマホ経由での購入は、クレジットカードと紐づけておけば、1回タップすれば購入が可能であり、スマホ経由での購買を大きく後押ししています。

スマホがあらゆる年代に普及しつつあり、さらにスマホ決済に対する心理的なハードルも下がっています。スマホを経由しての購買は、今後ますます増加していくでしょう。

SNSやプッシュ通知などを活用した消費者とのコミュニケーションや、AIによるレコメンデーション機能の活用など、工夫次第で商機が拡大している分野といえます。

諸外国のEC事情と越境EC

日本のBtoC-EC市場が19兆円余りであるのに対し、世界一のEC大国は中国で、市場規模は2兆ドルを超えています。

中国がEC大国となった背景には、ECの登場以前に中国に大規模な流通網がなかったことがあります。全国的な流通網がないところにアリババグループが登場し、店舗開設も商品掲載も無料にして、多くの企業をプラットフォームのタオバオに集めました。その結果、多くの買い手が集まり、アリペイで決済するようになったのです。アリババグループの成功は、中国の独自状況に合わせたビジネスモデルを提供したことにあるといえるでしょう。

拡大する越境ECのビジネスチャンス

越境ECとは、国内から海外へ向けてECを活用して販売するECで、日本でも注目されている分野です。日本のECの主な取引相手国となっているのが、中国とアメリカです。

日本の越境ECの市場規模は3,416億円であるのに対し、中国は十倍以上の4兆2,617億円、そのうちの日本経由の市場規模は約半分を占めています。日本の越境ECにとって、中国は重要な市場であるといえます。

越境ECの運営には、主に3つの方法があります。

  • 自社で対象とする国を定め、越境ECサイトを構築する
  • 国内の越境ECに対応したECモール(Amazonや楽天など)に出展する
  • 海外のECモールに出店する

ECの運営・拡大を検討する上で、越境ECも検討する価値は十分あります。

2022年以降のECに求められるもの

新型コロナウイルスの状況が今後どうなるか、未だ不透明な面はあります。しかし、2020年の状況を踏まえるならば、以下の3点が求められているといえます。

  • SNSやWebサイトを通じての消費者とのコミュニケーションが求められる
    コロナ禍でEC化率を伸長させたアパレルは、本来、消費者にとっては、商品にふれて、確かめたい分野です。しかし、SNSやWebサイトを通じて消費者とコミュニケーションや使いやすい購入システムを導入することで、EC化率の伸長に成功しています。

  • サービス系では状況に合わせたサービスのあり方が求められる
    コロナウイルスの感染状況に合わせて、柔軟な対応が求められます。消費者のニーズに応えるサービスを提供するだけでなく、家族旅行や個人旅行の提案など、状況に合わせた新しいサービスを検討しましょう。

  • 一層のセキュリティ対策が求められる
    決済におけるセキュリティ強化を始め、なりすまし対策や、消費者への注意喚起が必要です。特に2021年には大手ECサイトや銀行を偽るメールやショートメッセージサービスが大きな問題になりました。

ECは大きなビジネスチャンス まずは自社Webサイトの構築を

2020年~21年の新型コロナウイルスの蔓延と外出自粛の影響で、BtoC-ECは、物販系分野を中心に大きく成長しました。その流れを後押ししたのが、スマホの幅広い年代への浸透と、スマホ決済の広がりです。

消費者のスマホを経由してのEC利用は物販系分野だけでなく、コロナ収束後はサービス系やデジタル系など、幅広い分野で進むでしょう。今後、少子高齢化時代となる日本では、ECという販売形態の需要はますます高まることが予想されます。

今後ECへの参入を検討する方は、まずはECサイトの構築から始めてください。またSNSを通じての消費者とのコミュニケーションを進め、自社のファンづくりを行いましょう。

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