
BtoB営業・マーケティングに精通したコンサルタントが、提案力を劇的に向上させる実践的手法を徹底解説!
BtoB営業をするにあたって、ビジネス環境が近年変化を見せており、従来の提案書では成果を上げづらくなっている現状があります。特に成熟市場においては、従来の「モノ(商品やサービスそのもの)」を中心にした販売戦略から、現在ではそのモノによって得られる「価値」を重視する販売戦略へと変化しています。
そんな中、
・BtoB営業の成約率が思うように上がらない
・提案書を作成しても受注に繋がらない
・営業成果が属人的で再現性がない
などといった、悩みを抱えていませんか?
そこで今回は、“営業の商談ステージの中で「提案」に焦点を当てて、成約率の向上につながる極意“をお伝えします。この記事では以下のようなポイントが分かります。
☑️ BtoB営業における提案書の重要性と戦略的活用法
☑️ 受注に繋がらない真の原因の見極め方(課題・ターゲット・商品の3パターン分析)
☑️ 競合との差別化を実現する提案戦略
BtoB営業の成約率を向上させたい企業のご担当者様や、提案書作成に課題を抱えている営業担当者にとって、すぐに活かせる情報が満載です。ぜひご活用ください。

登壇者紹介
小嶋 崇嗣さん / ユニゾン株式会社 代表取締役(マーケティング コンサルタント)
2006年より工作機械メーカーDMG森精機にて、業務効率化や費用削減に向けたデータの活用・分析に注力。2012年以降は上海、東京のマーケティング支援企業や戦略コンサル企業にて、一貫して企業の営業やマーケティング課題の支援を実施。その間、自らも営業担当として提案型の営業活動をおこなう。
2022年以降は大阪でユニゾン株式会社を設立し、主に製造業やITサービス業などBtoB企業を対象に、営業・マーケティング、データ活用、社員スキル育成などの支援を行っている。主に中堅~大手企業顧客を対象に無形商材の提案営業を約10年行い、100件以上受注。また、戦略コンサルタントとして、ベンチャーから大手企業まで様々なクライアントの課題解決に関わり、150件以上のプロジェクトを支援した実績を持つ。
BtoB営業の課題
それでは早速、BtoB営業の課題から考えていきましょう。BtoB営業の商談のステージを俯瞰で見ると、BtoBマーケティング自体の全体像は、以下の図のように主に“8つのステージ“に分けられます。

この8つのステージを繰り返すことで営業は行われていきますが、今回はこの中でも特に“「受注」“とその前後の“「案件化・商談化」「顧客関係維持」“に焦点を当てて解説します。
受注に繋がらない3つの主な要因
提案しても受注につながらない要因としては、主に“3つのパターン“が見られます。
それぞれについて解説します。
要因①:提案内容・提案書の問題

提案内容や提案書に問題がある場合、“情報過多でポイントが不明瞭“になっていたり、“ロジックが弱く説得力に欠け“ていたり、“決済に必要な情報が不足“していたりしているパターンが多く見られます。競合と比較した場合に、これらの問題が原因となり失注してしまうケースは少なくありません。
要因②:ターゲット設定(ターゲティング)の問題

ターゲット設定に問題がある場合でよく見られるのが、“セグメンテーションが不十分“で“自社とニーズ適合性が高いターゲットを設定できず“結果的に失注するケースです。各セグメントを正確に区別できていない、というパターンがよく散見されます。
要因③:商品・サービス自体の問題

商品やサービス自体に問題がある場合で多いのは、“ニーズ自体はあるものの、競合との明確な差別化ができていない“ために失注してしまうケースです。受注まわりのステージではなく、それ以前の「売れる商品の開発」まで立ち戻って、「商品開発方針の見直し」が必要となるパターンです。
提案書の役割と作り方
それでは次に、提案書の役割と作り方をみていきましょう。提案書は、特定の顧客課題に対して自社の商品サービスでどう解決できるかを説得・提案する役割を担います。販促資料とは異なり、“「説得力」「納得感」「課題の具体性」“が特に重視されます。
提案書を活用するメリット
BtoB営業において提案書を活用するメリットは、主に3つです。1つ目が、複雑な商材でも顧客から理解を得やすくなること。2つ目が、顧客社内での決済プロセスをサポートできる点。そして3つ目が、顧客のニーズや課題をより詳細にヒアリングできる点です。
提案書がロジカルでなければいけない理由

上の図のように、BtoB営業では、“意思決定関与者が大人数化し、多層的になる“ことが少なくありません。そのため、提案書は担当者が複数の意思決定関与者を説得するために活用できる、“ロジカルなものである必要“があります。
ロジカルな提案書の作り方
では、どのようにしてロジカルな提案書を作れば良いのでしょうか。ロジカルな提案書の好ましい構成は、以下の図のような流れのものです。

このような構成の提案書は“「なぜこの商品を購入するべきなのか」「なぜこの会社から購入するべきなのか」“を明確にし、顧客を強く説得できる内容となります。
効果的な提案型営業の手順
効果的な提案型営業の手順は、以下の4つのステップから成ります。まず、事前に情報収集や分析をした上で、ステップ1として顧客の抱える課題やニーズの仮説を構築します。ステップ2では、その仮説を元に提案書を作成します。この段階で提案書を提示し、ステップ3として顧客の実際のニーズや課題をあらためてヒアリングします。最後のステップ4では、ヒアリングをもとに提案書をブラッシュアップ。これを再度提案することで、受注へとつなげます。
提案書を作成する際の3つのポイント
それでは次に、提案書を作成するポイントをみていきましょう。受注につながる提案書を作成する際、特に意識すべきポイントが“3つ“あります。これから各ポイントを解説します。
ポイント①:仮説思考

1つ目のポイントは、“仮説思考“です。提案型営業のステップでも触れた、仮説を立てて提案を考えていく、という手法になります。十分なヒアリングが難しい段階でも、顧客の業界や業態、会社規模やターゲット市場の動向などを研究し、顧客企業の課題やニーズについての仮説を立てていきます。そして、この“仮説に基づいた提案を考える“ということが何よりも重要になってきます。
ポイント②:ロジカルライティング

2つ目のポイントは、“ロジカルライティング“です。「自社商品やサービスを購入するべき」などといった主張に対して、それを根拠や事実で補足する“ピラミッド構造“を意識する手法です。特に、事実や事例をベースとした補足で根拠を強化することによって、よりロジカルな主張を構築できます。
ポイント③:トータルソリューション

3つ目のポイントは、“トータルソリューション“です。顧客の課題やニーズに対し、単一の商品やサービスではなくて、“複数の施策を組み合わせて最適な解決策を提供“し、“顧客価値を最大化する“提案手法です。1つの課題解決ではなく、トータルサポートを提案することで、競合との大きな差別化を図れます。
顧客ニーズ起点の営業戦略設計
次に、具体的な営業戦略設計について触れていきます。BtoB企業の基本的なニーズとして、“売上の向上、コスト削減、法規制への適合や企業の持続的成長を目的とした経済合理性“などが挙げられます。顧客の本質的なニーズを把握することで、顧客満足度の高い解決策の提案が可能となり、競合に対しても優位性を確立できます。ひいては、“顧客から「選ばれる」提案”へとつながります。
下の図は、最新のパソコンを導入したいという事例の図です。

顧客の希望の中でも、目的に対する手段(ウォンツ)ではなく、より上位に位置する本質的なニーズをとらえることが重要です。この本質的なニーズを把握するために、“営業戦略を構築するための3ステップ“をご紹介します。
STEP1:成功・失注理由の分析

最初のステップは、「なぜ買った」「なぜ買わなかった」を明らかにすることです。これまでの“成功事例と失敗事例“を振り返り、その理由や背景を共有して“仮説“を立てます。その上で顧客へのヒアリングを通じて、顧客はどのようなニーズや購買決定要因を持っているのかを明らかにしていきます。
STEP2:基本戦略の構築

次のステップでは、「誰がどうなったら買うか」を明らかにしていきます。ニーズ適合度が高い、重点的に攻略すべきターゲットを見つけ、自社製品の“独自性や優位性をどのように訴求するのか“を決定していきます。具体的には、市場をセグメンテーション(細分化)した上でターゲットを絞り込み、最終的に自社のポジショニングを把握します。そこから“競合に対する優位性“を見出していくことが重要です。
STEP3:勝ちパターン構築

最後のステップは、「どのようにすれば買ってもらえるか」を具体的にすることです。基本戦略実現のための具体的施策を実行し、さらに有効なアプローチ方法、訴求方法を確立していきます。
戦略と提案改善の事例
それでは最後に、戦略と提案改善の事例をご紹介します。この事例は、新商品のターゲット設定、訴求内容の見直し、改善した提案書の活用により、成約率アップに成功したという事例です。
顧客の抱えていた課題
本事例の顧客は、企業向けに産業用消耗品などを製造販売する企業です。ニーズ調査を入念に行ったにも関わらず、開発した新商品がなぜか売れない。売れない理由も営業から上がってこず分からない、という課題を抱えていました。
課題解決のために行った施策
この企業様の場合、営業担当と失注要因の分析を行った結果、セグメンテーションが不十分で“ターゲット設定を誤っていた“ことが分かりました。また、度重なる失注により営業部内での“販売意欲が低下していた“ことも、要因の一つであることが判明しました。そこで、当該商品の“ターゲット設定を見直し“、注力ターゲットに対し、“導入メリットの訴求内容を改善した提案書“を作成しました。この提案書で成約実績を重ねた後、“全社での展開“へとつなげました。また、注力ターゲット以外へのアプローチ方法は、訪問提案以外のより効率的な方法へと変更しました。
課題解決のために行った施策の結果
この施策の結果、営業全体に勝ちパターンが浸透し、商談の成約率が“30%向上“。売上も“前年比140%“を達成しました。
本事例の成功ポイント

この事例における成功のポイントは、“大きく2つ”あります。1つ目は、緻密なセグメンテーションによって、コスト削減ニーズが強く、かつ高性能求めるセグメントを重点ターゲットに設定できた点です。2つ目は、導入のメリットと独自性を明確にした提案書を活用し、勝ちパターンを確立できた、という点です。
Q&A
Q1:プレゼン前の情報収集について、クライアントのニーズの把握の仕方を知りたいです
A:仮説思考がポイントです。ヒアリング前であっても、顧客の業界や業態、会社規模、ターゲット市場の動向などを、社内外の関係者にヒアリングしたり、インターネットや新聞で調べたりして、ニーズの仮説を立てることが重要です。その後、実際に提案をしながら仮説を検証し、さらにブラッシュアップした提案を繰り返していくと効率的です。
Q2:小人数の組織のため、労力をかけずに業種に見合った成果を上げる集客方法を知りたいです
A:方法は3つ考えられます。1つ目は、完全プル型の営業に切り替える方法。2つ目は、費用がかかりますが営業代行に依頼し、リソースを確保する方法。3つ目は、お客様と接触の機会が多い商社や士業の方といった、販売チャネルを持つ方法です。ワーカーのマッチングプラットフォームも、ひとつのチャネルとして有効です。
Q3:既存クライアントからの案件発注が減少し続けており、新規顧客獲得が緊急の課題となっています。社内に営業部隊がいないので、どのように新規顧客を獲得していくべきでしょうか?
A:まずは発注減少の理由を明らかにする必要がありますが、新規顧客を獲得するにも、営業部隊がいないとリソースが限られます。そのため、どこにニーズがありどこで競争優位性があるか、自社が顧客獲得できそうかを分析し、ターゲットを絞って営業を実施すると良いでしょう。
Q4:提案書のボリューム感はどれくらいがいいのでしょうか?
A:提案する施策内容にも寄りますが、10枚から20枚程度が良いでしょう。提案書は提案先で独り歩きしていくようなものなので、どこがポイントかぼやけないよう、長くなりすぎないようにまとめるべきです。どうしても伝えたい情報が入りきらない場合は、補足用の別紙として添付する方法もあります。
Q5:インフルエンサーの活用で最初からターゲットを絞るのか、一般に広く知られた上でターゲットを絞る、どちらがいいのでしょうか?
A:ターゲットを絞らないことでコストがかさむようであれば、事前に絞っておくべきでしょう。ただ、最初に想定している以上に候補者が増える可能性があるのであれば、最初から絞る必要はありません。
Q6:提案書はアポメールに添付するのですか?それともアポ後に相談の時に出すのですか?
A:さまざまなパターンがありますが、基本的には商談時に提案書を持参するのが良いでしょう。そこでさらに深い課題を聞き、深い仮説を立てていくような形に持っていけると、より効果的です。
Q7:これまで取り組んだことのないような斬新なアイデアをプレゼンする場合に気をつけた方がいいことは何でしょう?
A:相手が納得するまで、根拠や理由、事例などをしっかりと提供することで、より説得力のあるプレゼンになります。
Q8:プレゼンの際は提案書に記載の内容をあまり読み上げずオリジナルの言葉があった方が良いでしょうか?
A:ある程度は提案書通りのシナリオがあると思いますが、プレゼン時間に応じ話の長さを調整したり、相手が関心を示したトピックスについては、提案書にない情報も補足したりするなど、聞き手の反応を見てより納得してもらえるような話し方を意識すると良いでしょう。
まとめ
成約率をアップさせるには、提案が受注につながらない要因を明らかにすることが重要です。その要因が、提案内容、提案書の問題、ターゲット設定の問題、あるいは商品サービス自体の問題のどれに当てはまるのかを見極め、適切な対策を実行することで成約率向上を目指しましょう。
情報収集や仮説構築のための壁打ち、資料作成といった業務には、専門のプロフェッショナルへの依頼が有効な場合があります。プロのフリーランスとのマッチングサービスは、新たな販売チャネルとしても有用なため、ぜひこうしたサービスを通してフリーランスへの相談も検討してみてはいかがでしょうか。「もっと具体的に聞きたい」「自社に合わせて導入したい」と思われた方は、お気軽に小嶋さんへお問い合わせください。
