ECサイトを運営したくても、まずは何から取り組めば良いのか分からずお困りの方も多いのではないでしょうか。
運営中のECサイトの売上が目標額に届かずに、改善すべきポイントがはっきりしないという人もいるでしょう。魅力的なECサイトの構築には、サイトの骨組みの設計を行う要件定義がかかせません。
本記事では、新しくECサイトを構築したい人やECサイトをリニューアルしたい人向けに、要件定義の概要や意識すべきポイントについて解説します。Web制作会社の選び方や具体的な注意点についても解説します。
またWebディレクター歴10年以上のノウハウがぎっしり詰まった「要件シート」も公開中です。
この要件シートに沿って動けば、Webサイト制作に関する必須事項が漏れなくカバーできるというスグレモノ。ECサイトの外注でサイト要件を伝える際などに、ぜひご活用ください。

目次
ECサイトの要件定義とは
ECサイトの要件定義とは、構築すべきECサイトの内容を制作担当者と運営側の間で明確にすることです。事前に運営者が作成した要件をもとに、Web制作会社と打ち合わせを行い、ECサイトに必要な機能やシステム、デザインについての認識を共有していきます。
ECサイトの設計図を作成する重要な業務です。
要件定義はECサイト構築の基本であり失敗が許されない
要件定義は、ECサイトを制作するための設計図ですので失敗が許されません。
要件定義の内容に間違いがあると、ECサイトに必要な機能が足りなくなったり、トップページや商品ページが見込み顧客のイメージに合わなくなったりします。場合によっては、すべての工程を最初からやり直さなくてはならなくなる可能性もあるので注意が必要です。
ECサイトの制作現場では、一旦業務が始まると最後まで要件定義をもとにプロジェクトを進めることになります。そのため、たとえ内容に問題があったとしても、スケジュールの終盤時やサイトの運用時でしか間違いに気づけないことも多いです。
サイト運用後に間違いに気づいていては改修に無駄なコストがかかりすぎるので、ECサイトの運営担当者は制作前にしっかりとサイトの目的やシステム要件などを明確にしましょう。
要件定義は最低でも3ヶ月間前には準備を始めよう
ECサイトを制作するには最低でも3ヶ月程度の時間がかかるといわれており、規模の大きいサイトになると完成するまでに半年以上かかることも珍しくありません。要件定義を始める際は、サイトの規模や目的に合わせて余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。
新規ECサイトの要件定義で意識する7つのポイント
新規ECサイトの要件定義で意識した方がよいポイントを7つご紹介します。
- サイト構築のために出せる予算
- ECサイトで販売する商品の種類
- ECサイトで商品を販売する人
- ECサイトを運営する目的やコンセプト
- ECサイトの大まかな仕様
- サイト構築に必要な機能やシステムの把握
- ECサイトを構築するためのスケジュール作成
それぞれのポイントの詳細を確認してみましょう。
1. サイト構築のために出せる予算
ECサイトの制作費は、Web制作会社に依頼するにせよ自社で対応するにせよ、会社の利益を圧迫しないように予算内に抑える必要があります。まず要件定義の段階で必要な費用を確実に確認しましょう。
ECサイトの制作費用は、サイトの目的やコンセプト、必要な機能・デザインなどによって大きく異なります。
要件定義通りに制作を進めると、開発途中で機能の追加コストや保守・点検コストなどが想定以上に必要になり、予算オーバーになることも珍しくありません。そのため、新規サイトを構築する際は、ある程度余裕のある予算組みが必要になります。
2. ECサイトで販売する商品の種類
ECサイトで販売する商品の種類によって、導入すべきシステム要件やサイトレイアウト、デザインなどが異なります。例えば家電を販売するなら、サイズや色、機能性がわかるようなサイト構成にした方がユーザビリティ(ユーザーの利便性)が高くなります。
しかし、生鮮食品を販売する場合は、サイズや機能性より食品を腐らせない配送システムの方が重要です。
3. ECサイトで商品を販売する人
ECサイトは、ターゲットユーザーのニーズに合わせて制作していくのが基本です。ターゲットユーザーの性格や趣味嗜好、年齢、性別などを把握しておきましょう。ターゲットユーザーの属性が明確になると、サイトのレイアウトやデザイン、機能性などがイメージしやすくなります。
サイトのデザインや商品紹介の内容がニーズに合っていないと、サイトの直帰率や離脱率が高くなります。
4. ECサイトを運営する目的やコンセプト
要件定義は、ECサイトの目的やコンセプトを達成するための設計図です。中長期的な目標値や改善したい課題などを設定すると、必要な機能やシステム、サイトレイアウトなどが定まりやすくなります。
また、ECサイトの売上を上げるには、競合サイトよりも優れた点をアピールしなければなりません。要件定義の段階で、自社ECサイトが顧客に与えられる価値や自社にしかないコンセプト、強みなどを明確化しましょう。
5. ECサイトの大まかな仕様
ターゲットユーザーの属性や商品の種類、サイトのイメージなどをもとに、デザインやページレイアウトなどを決めます。
ユーザーがECサイトに訪問してから購入するまでの流れ(購入導線)を具体的にイメージしたり、既に実績がある競合サイトを参考にしたりするなどして、どのような機能やシステムが必要なのか検討してください。大まかでもいいのでサイト全体のイメージを固めることが大切です。
6. サイト構築に必要な機能やシステムの把握
サイトの要件を達成するのに最適な決済システムや配送方法、eコマースプラットフォームなどを選びましょう。サイトの目的やコンセプト、仕様に応じて、必要な機能やシステムをすべて列挙してください。
外注する場合は、Web制作会社との打ち合わせで詳細を決める形で問題ありません。思いつくだけの必要な機能やシステムを明記したら、「カートに入れてから購入するまでをスムーズにしたい」などの要望を記載しておけばよいでしょう。
7. ECサイトを構築するためのスケジュール作成
サイト要件やシステム要件を達成するために、具体的なスケジュールを策定します。サイト自体の制作はもちろんのこと、プロモーション戦略やサーバーの強化といったサイト完成後の運用計画も踏まえたうえで、必要な予算や人材、チーム体制を決めましょう。
スケジュールは、「デザイン制作に時間がかかってオープン日を大幅に延期せざるをえない」といった予期せぬトラブルにも柔軟に対応できるように、余裕を持たせることが大切です。1工程ごとに中間目標を設定するなどして、すべてのプロジェクトを納期内に終えられるよう調整しましょう。
既存ECサイトの要件定義で意識するポイント
すでにECサイトを構築している場合は、基本的な要件定義が既にあるのでサイトの現状を把握することから始めます。
アクセス解析ツールやサイト管理ツールなどを活用して、ECサイトの目的を達成するために足りない機能や問題点を分析しましょう。たとえばGoogle Analyticsのアトリビューション分析では、CVに貢献したページと貢献していないページを総合的に評価できます。
問題点を分析する際は、サイトの運営担当者だけでなく、問い合わせ担当者や商品登録担当者といったすべての利害関係者に相談しましょう。いろいろな人のアドバイスを参考にすることで、自分だけで考えるよりも広い視点でサイトを分析できます。
改善策を実施するにはある程度のコストがかかりますので、それぞれの施策に優先順位をつけることも重要です。サイトの問題点と改善策を明確にしたら、要件定義を見直して必要な機能やシステムを導入しましょう。
自社に合うWeb制作会社の選び方
自社に専門知識を持つ人材が不足しているために、ECサイト制作をWeb制作会社に依頼するケースは少なくありません。そこでECサイトの構築を外注する際のWeb制作会社選びのポイントをご紹介します。
- 依頼の可否を決める評価基準を明確にする
- プロジェクトマネージャーとの相性を確認みる
- Web制作会社としての実績を確認する
それぞれの選定基準の詳細を確認してみましょう。
1. 依頼の可否を決める評価基準を明確にする
自社独自の評価軸がないと、相性の悪いWeb制作会社と契約して費用が割高になる可能性があります。費用や対応納期、拡張性など評価基準を明確にして、自社と相性のよいWeb制作会社を選びましょう。
Web制作会社は、企業によって基本サービスやカスタマイズの範囲、セキュリティ性能などが異なります。開発人員の数やカスタマーサポートの内容なども異なるので、費用や特徴がわかるように一覧表を作成して比較検討するのもおすすめです。
2. プロジェクトマネージャーとの相性を確認する
実際のECサイト制作はプロジェクトマネージャーが担当しますので、自社担当者とプロジェクトマネージャーとの相性が悪いと要件定義もうまくまとまりません。Web制作会社は、自社の要望や疑問に対して親身に対応してくれるプロジェクトマネージャーがいるところを選びましょう。
3. Web制作会社としての実績を確認にする
Web制作会社としての実績が豊富なところは、ECサイトの制作技術も高い傾向にあります。特に競合他社のサイト制作経験が豊富なWeb制作会社は、プロジェクトを無理なく進めるためのノウハウや、プロジェクトマネージャーや開発スタッフなどの優秀な人材が豊富な傾向があります。事業者側が希望する要件定義にも柔軟に対応してくれる可能性が高いでしょう。
Web制作会社としての実績が少ないところでも、優秀な人材が集まっていたりサービス内容が自社に合っていたりするかもしれません。サービスの内容や費用、問い合わせへの対応などを踏まえて選ぶことが大切です。
ECサイトの要件定義の作成時の3つの注意点
ECサイトの要件定義を作成する際に注意すべきポイントを解説します。
- 長期的な視点を持って要件定義を行う
- 実際の業務をイメージしながら要件定義を行う
- 要件定義で決まったことは社内外で共有する
- サイト制作の途中で少しでも違和感を感じたら要件定義を見直す
- どうしても要件定義がうまくいかない場合はプロジェクトをやり直す
1. 長期的な視点を持って要件定義を行う
要件定義は、長期的な視点を持って慎重に行いましょう。
短期的な売上や利益に固執すると、初期費用などのコスト面を意識しすぎて、本当に必要な機能やシステム要件を見逃してしまいます。「3年後に売上を50%アップさせるために、1年目はShopifyを導入してコンテンツマーケティングに集中する」といったような中長期的な視点をもつことが大切です。
2. 実際の業務をイメージしながら要件定義を行う
要件定義は「商品の受注→商品の確保→出荷→発送→問い合わせ対応」といった実際の業務を意識することで、ECサイトに必要な機能やシステムが理解しやすくなります。
また、Web制作会社に依頼をする場合には、Web制作会社にも自社の業務を知ってもらうことが重要です。業務内容をもとに要件定義を作成することで、自社の要望が正確に伝わるようになり認識のギャップも起こりづらくなります。
3. 要件定義で決まったことは社内外で共有する
要件定義で決まったことは、部門のメンバーやWeb制作会社の担当者など社内外の利害関係者と共有しましょう。関係者全員が同じイメージを共有することで、チームワークがよくなりサイト制作もスムーズに進みます。
要件定義の内容は、書面やデジタルデータに残して後から確認できるようにしましょう。口頭だけで説明すると異なる解釈をする人がでてきて、ECサイト制作に支障きたす可能性があります。
4. サイト制作の途中で少しでも違和感を感じたら要件定義を見直す
サイト制作の途中で目的やコンセプトなどに合っていないと感じたら、すぐに要件定義を見直しましょう。要件定義を間違えたままサイトを制作すると、完成後に大幅な修正が必要となります。場合によっては要件定義を最初からやり直す必要も出てきますので注意が必要です。
要件定義の間違いは、制作終盤になってからでないと見つけられないケースが少なくありません。制作途中で少しでも違和感を感じた場合は、問題がないか慎重に確認することをおすすめします。
5. どうしても要件定義がうまくいかない場合はプロジェクトをやり直す
どうしても要件定義がうまくいかない場合は、プロジェクトをいったん白紙にもどすのも一つの手です。
実際にサイト制作を始めてから間違いに気づくよりも、要件定義の段階でプロジェクトを廃止する方がコストを最小限に抑えられます。既にWeb制作会社と契約している場合は、違約金などもしっかり考慮して撤退の要否を判断しましょう。
要件定義を成功させて魅力的なECサイトを運営しよう
要件定義は、ECサイトの成功を握る重要なファクターです。サイト制作における土台となりますので、間違いを極力なくし、必要な機能やシステムを明記する必要があります。
初めてだとわからないことも多くありますので、ECサイト構築を外注するならWeb制作会社のプロジェクトマネージャーと相談しながら進めることをおすすめします。
またWebディレクター歴10年以上のノウハウがぎっしり詰まった「要件シート」も公開中です。
この要件シートに沿って動けば、Webサイト制作に関する必須事項が漏れなくカバーできるというスグレモノ。ECサイトの外注でサイト要件を伝える際などに、ぜひご活用ください。
