ECサイトで安定した収益を得るには、繰り返し商品を購入する顧客の獲得が重要です。再購入を促すために、さまざまな施策が実施されていますが、リピート購入する顧客の割合が伸びないという課題を抱える事業者も少なくありません。
リピート率は、リピート顧客獲得に成功しているかどうかを判断する指標です。本記事では、リピート率の定義から計算方法、平均値・目標値、関連する用語・指標、リピート率を向上させる手法までを、わかりやすく解説します。

目次
ECサイトのリピート率とは
リピート率は、ECサイトを立ち上げてから商品やサービスを購入した全ての人のうち、一定期間に2回以上の再購入をした人の割合を示す数値です。
運営しているリピート率が低い場合は、顧客が商品を再購入しない何らかの理由があると考えられます。ECサイトで取り扱っている商品の品質やサイトの運用方法などに課題や問題がないかを検討すべきです。
リピート率の計算方法
リピート率は、下記の計算式によって算出します。
リピート率 = 一定期間のリピート顧客数 ÷ 累計顧客数 × 100
例えば、直近1ヶ月間にリピート購入した顧客数が20で累計顧客数が100の場合は、リピート率は20%となります。
リピート率の向上が利益増加につながる
新規顧客が安定した割合でリピーターになることは、ECサイトの収益率向上につながります。
新規顧客の獲得と比較すると、リピーターに対するプロモーションは低コストで実施でき、短期間で成果が出ることが期待できるからです。リピート率は商品やサービスの顧客満足度を知る指標としても有効です。
混同しやすいリピーター率との違い
リピート率と混同されやすい指標に、リピーター率があります。
指標 | 定義 |
リピート率 | ECサイトを立ち上げてから商品やサービスを購入した全ての人のうち、一定期間に2回以上の再購入をした人の割合を示す数値 |
リピーター率 | 一定期間内に購入した顧客全体のうち、リピート購入者の比率を示す数値 |
リピーター率は、下記の計算式によって算出します。
リピーター率 = 一定期間内のリピート顧客数 ÷ 同一期間内の総顧客数 × 100
例えば、直近1ヶ月間にリピート購入した顧客数が40で購入者の総数が100の場合、リピーター率は40%となります。
リピーター率が低すぎる場合は、顧客が商品・サービスを再購入をしない何らかの原因があると考えるべきです。逆にリピーター率が高すぎる場合は、新規顧客の獲得に課題があることになります。
ECサイトのリピート率の平均値と目標値
ECサイトを運用する上で、リピート率の目標設定はどのような基準で行うべきでしょうか。EC業界全体、EC業界別の平均リピート率を参考にしながら、目標とすべきリピート率についてご説明します。
EC業界全体の平均リピート率は30~40%
EC業界全体の平均リピート率は30%~40%です。ですが、平均リピート率は業界や取り扱う商品によって大きく異なることが知られています。
EC業界別平均リピート率
ECサイトの業界別平均リピート率は、次のようになっています。
業界 | 平均リピート率 |
化粧品・健康食品 | 50% |
アパレル | 35% |
PC・家電 | 25% |
旅行 | 45% |
化粧品や健康食品などの消費サイクルが短い商品、旅行など定期的に利用する顧客が多い商品では平均リピート率が高く、PC・家電やアパレルといった比較的高単価で長期利用する顧客の多い商品は平均値が低めになっています。
理想的なリピート率は業界や商品、サービスごとに異なる
ECサイトの立ち上げやリニューアル、運用方法の変更などを行う際に、まず目標として設定すべき平均リピート率は、EC業界全体と同様に30%台です。30%を上回る数値を達成すれば、順調にリピート客を獲得できていると評価できます。
中長期の目標は、上記の業界別平均リピート率を参考にして、取り扱う商品に合致した数値を設定しましょう。
ECサイトのリピート率に関連する5つの用語・指標
リピート率を定期的に計測し、ECサイトの改善に役立てる上で重要な5つの用語・指標を見ていきましょう。
1. 2回目の購入をした顧客の割合を示す「F2転換率」
F2転換率とは、初回購入者の何割が2回目の購入をしたかを示す数値です。Fは「Frequency(頻度)」のイニシャルで、2ば「2回目の購入」を意味します。例えば、100人の初回購入者のうち、20人が再購入をした場合のF2転換率は20%となります。新規購入者をF2に転換できれば、3回目以降の購入を促しやすくなります。
2. 注文ごとの間隔を指す「リードタイム」
リードタイムは、顧客の注文から次回注文までの期間を示す言葉です。リードタイムを計測すれば、適切なタイミングでリピート購入を促進するアクションを取ることができます。
3. 1人の顧客が1つのサイトで購入した総額「LTV」
LTVは「Life Time Value(顧客生涯価値)」の略語で、一定期間に1人の顧客が1つのサイトで購入した総額を示します。例えば、過去1年間に500円の商品を10回購入した顧客のLTVは、5,000円です。購入総額から経費などを引いた収益の総額でLTVを計算する場合もあります。
LTVを計測することで、1人のリピーターがもたらす売上や利益を長期的に推計できます。リピート購入の促進や新規顧客獲得に費やすコストを決める際に有効となる指標です。
4. 顧客との関係性を管理する「CRM」
CRMは「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の略語で、顧客との関係性やコミュニケーションについての情報を一元管理する取り組みを指す言葉です。
CRMで扱う代表的な情報は、下記の5つです。
- 顧客の連絡先
- 顧客の購入履歴
- 送受信したメールやメッセージの内容
- 在庫管理
- 品質管理
このような情報を一元管理することによって、より深く顧客を理解することが可能になります。なお、CRMの実践は販売促進だけでなく、マーケティングや経営戦略の立案などにも活かすことができます。
5. 計画・実行・評価・改善を繰り返して成功をめざす「PDCAサイクル」
PDCAサイクルとは、以下の4つの段階を繰り返し、ECサイトの改善を継続していく手法です。
順番 | 行動 | 詳細 |
1 | Plan(計画) | 目標を設定し、業務計画を策定する段階です。解決すべき課題を探って必要な情報を収集し、課題を解決するための計画を立案します。 |
2 | Do(実行) | 立案した計画を実行する段階です。課題解決に向けた計画を実行し、その活動の有効性を記録していきます。 |
3 | Check(評価) | 計画に基づいて実行した課題解決策を、計画した際の予測値と比べながら分析・評価する段階です。 |
4 | Action(改善) | 分析・評価の結果を検討した上で、業務改善を実施する段階です。Actionの完了を新しい起点とし、次の目標(Plan)設定を行うことで「PDCAサイクルを回す」と呼ばれる継続した取り組みが実現します。 |
ECサイトのリピート率向上・改善に役立つ6つの手法
リピート率を指標にしてECサイトの運用状況を評価し、改善に取り組む上で有効な6つの手法をご紹介します。
1. 顧客とのコミュニケーションを促進する「メルマガ」「サンクスメール」
顧客のリピート購入を促す有効な手法が、メールマガジンの配信です。メールマガジンを配信して商品の最新情報を提供することで、顧客がECサイトの存在を忘れないようにし、リピート購入を促進します。
また、商品配送時のサンクルメール送信も、顧客からの信頼感や好印象を得るきっかけになります。購入のお礼に加えて、サンクスメールに配送や梱包、商品への評価などの質問も行って、購入後のフォローアップに役立てましょう。
2. リピート購入を促す「ポイント」「クーポン」
リピート購入した際に得られるポイント・クーポンといった特典を設けることで、リピート購入を促すことができます。
ポイントは購入回数や購入金額に応じて発行して「貯めたポイントをプレゼントと交換」「次回購入時に金額に換算して値引き」などの特典を提供します。同様にクーポンは「次回購入時に一定額割引」「プレゼント交換」などの特典を提供します。
ポイントやクーポンの発行は、リピート購入を促進するだけでなく、競合サイトへの乗り換えリスク低減にも役立つ手法です。ポイントやクーポンに利用期限を設けることで、リードタイムの短縮効果も期待できます。
3. 情報配信、顧客との緊密なコミュニケーションに役立つ「SNS」「ブログ」
InstagramやTwitter、FacebookなどのSNS、自社ブログをECサイトと連携させることで、最新情報を提供すると同時に、顧客との双方向コミュニケーションを緊密に図ることができます。
読者が「役に立つ」「楽しい」と感じる投稿をSNSやブログサイトに定期掲載することで、リピート購入の促進だけでなく、新規顧客の獲得につなげることもできます。
4. ECサイトにアクセスした人の疑問に即応する「チャットボット」
チャットボット(chatbot)は、リアルタイムでメッセージを交換するチャット(chat)と、ロボットを意味するボット(bot)を組み合わせた用語です。ECサイトにアクセスした利用者からの問い合わせに、自動返信するツールの呼称として使われています。
チャットボットで行える主な対応は、下記の4点です。
- 決済のサポート
- 商品の在庫に関する質問への対応
- 商品の色やサイズ機能などに関する質問への対応
- 配送日や送料に対する質問への対応
5. 満足度や要望などを直接顧客に尋ねる「Webアンケート」
気軽に回答できるWebアンケートを実施し、顧客のニーズや購入した商品への評価を尋ねることで、リピート率を高めるための参考データ収集できます。
顧客の意見や評価を直接聞くWebアンケートは、ECサイトの改善に直結する情報を得る機会になります。インターネット上には回答フォームの作成から収集、分析までを簡単に行うことができるWebアンケートサービスが数多く存在します。使い勝手や重視する点などを考慮し、最適なWebアンケートを利用しましょう。
6. 年齢層の高い顧客に有効「DM」「フライヤー」
DM(ダイレクトメール)やフライヤーなどの紙媒体は、ECサイトの商品情報などを郵送で顧客に届けるツールとして利用されています。リピート購入促進を目的にする場合は、商品に同梱する方法が一般的です。
顧客にDMやフライヤーを届ける最大のメリットは、顧客の目に入りやすいことです。電話やFAXといったWeb以外の注文方法を紹介する方法として活用しやすく、年齢層の高い顧客に対しては特に有効な手法です。
リピート率を伸ばす施策は、ECサイト構築・運用のエキスパートにご相談を
自社内で解消が難しい課題や問題点が生じた場合には、ECサイトの構築・運用のエキスパートが在籍している企業やフリーランサーへの相談を検討してみましょう。
それぞれの主な特徴を確認しましょう。
1. ECコンサルティング会社
ECコンサルティング会社は、ECサイトの売上や収益の向上、運営改善のためのアドバイスや業務サポートを行うECに特化した企業です。
EC事業の立案から各種リサーチ、ECサイト運営まで、広範な業務をサポートしてくれます。多数存在するECコンサルティング会社を選ぶ際には、サービス内容や得意分野、実績、費用などを比較検討しましょう。
2. Web制作会社
Webサイトの制作を行う会社は、日本全国で1万社前後と言われています。ECコンサルティング会社以上に、ニーズや条件に合った会社を選ぶことが重要になります。ECサイトの構築・運用に豊富な実績があり、業界や商品に関する知識を備えた会社に相談しましょう。
3. ECサイトの構築・運用に精通したフリーランス
企業に属さず、フリーランスとして活動するWebエンジニアやWebデザイナーをはじめとするクリエイターは年々増加しています。ECサイトやネットショップの構築・運用を得意とするフリーランスの中から、職務経歴やポートフォリオなどを確認し、ニーズに最適なプロに相談や依頼を行いましょう。
フリーランスとして活動するWebエンジニアやWebデザイナーに、ECサイトに関する課題を相談する主なメリットは下記の3点です。
1. 高度な専門スキル・知識
ECサイトの構築や運用を行うエンジニア、デザイナー、ライターといったフリーランスは、得意とする業務や担当クライアントの業界をプロフィールページなどに記載しています。活動実績や有しているスキル、経歴などを比較検討した上で、解決したい課題に最適なエキスパートを選ぶことができます。
2. スピーディーな対応
費用や依頼内容などの条件、受注後のスケジューリングなどは、全てフリーランス自身が発注者と相談して決定します。複数の担当者がいる企業の対応とは違って、課題の相談~発注~対応完了までがスピーディーに進みますので、効率よく課題を解決することができます。
3. コストパフォーマンスの高さ
必要な解決策を提供してくれるエキスパートに直接発注するので、中間業者を挟むことがなく、高いコストパフォーマンスが期待できます。
リピート率はECサイト運用の大切な指標
本記事では、ECサイトのリピート率に関して5つの重要点を中心に取り上げました。
- リピート率とは、顧客総数のうち一定期間にリピート購入をした顧客の比率
- リピート率の平均はEC業界全体で30~40%程度で、業界別に見ると平均値・目標値に差がある
- リピート率と関連する5つの用語・指標「F2転換率」「リードタイム」「LTV」「CRM」「PDCAサイクル」
- リピート率向上に役立つ6つの手法「メルマガ・サンクスメール」「ポイント・クーポン」「SNS・ブログ」「チャットボット」「Webアンケート」「DM・フライヤー」
- リピート率を伸ばすためのサポート役として「ECコンサルティング会社」「Web制作会社」「フリーランス」の選択肢がある
リピート率向上に成功すれば、ECサイトの収益向上を実現することができます。ECサイトの運用状況を的確に把握し、売上や収益を向上させるために、この記事を参考にしていただければ幸いです。
