ECサイトを立ち上げたものの、なかなか売上が伸びずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ECサイトの売上を改善するためには、KPIを設定して効果的な施策を実行する必要があります。
一方で、ECサイトのパフォーマンスを評価するための指標は無数に存在するため、採用すべきKPIを判断するのは容易ではありません。この記事では、ECサイトにおけるKPIの選定・活用方法を解説するので、ぜひご覧ください。

目次
KPIはKGIのプロセスを評価するための指標
KPI(重要業績評価指標)とは、目標の達成に必要な施策が、適切に機能しているかどうかを評価するための指標です。一方、事業やプロジェクトにおける最終的な目標の達成度合いを評価するための指標は、KGI(重要目標達成指標)と呼ばれています。KPIはKGIのプロセスを評価するための指標です。
- KPI(重要業績評価指標) … KGIのプロセスを評価するための指標
- KGI(重要目標達成指標) … 売上や利益率などの経営ゴールを設定する指標
ECサイトを運営する際には「売上2,000万円達成」「売上20%アップ」など、KGIとして売上目標を設定するケースが多いでしょう。KGIは目標を何%達成しているのかを評価するために用いられます。
ECサイトの売上に影響を与えるパラメーターは無数にあります。売上を向上させる方法もひとつではありません。ECサイトや会社の方針によって、KPIに設定すべき項目も変化します。
ECサイト運営にKPIが不可欠な理由
ECサイトの運営にKPIが不可欠な理由を解説します。
客観的なデータにもとづく仮説検証が可能になる
ECサイトを訪れたユーザーの行動は、データとして記録・蓄積されます。離脱の多いページやページを閲覧した順序など、データにはECサイトの運営を効率化するためのヒントが隠されています。ECサイトで収集したデータを活用すれば、客観的な事実にもとづいた仮説検証が可能になります。
ECサイトの売上を増加させるためには、仮説を立てて検証するプロセスが欠かせません。しかし、的外れな仮説を立ててしまえば、目標達成までに時間がかかってしまう可能性もあります。
仮説から導き出した改善策が思うような結果を生まないこともありますが、データをもとにした仮説であれば、次の検証に活かせるので無駄になることはありません。
ECサイトの現状を社内で共有できる
KPIを設定しておけば、ECサイトの現状を正確に社内で共有できます。ECサイトを立ち上げた直後は、少人数で運営できる場合が多いでしょう。サイトが軌道に乗り、EC事業の規模が大きくなってくると、運営に携わるメンバーの数も増えていきます。
現状を正確に把握し、メンバー間で認識を共有していなければ、社員同士の連携がうまくいかなくなる原因になりかねません。
KPIを設定しておけば、目標達成を妨げている原因を明らかにできます。原因が分かれば対策を立てられるので、どのメンバーが何をすべきかも明確になるでしょう。ECサイトの運営を効率化する上で、KPIの設定は非常に重要な作業のひとつです。
ECサイトの運営で押さえておきたい7つのKPI
具体的に「どのような項目をKPIに設定すべきか」を迷う方も多いのではないでしょうか。そこで、ECサイトの運営で押さえておきたいKPIを7つ紹介します。
1.訪問者数
訪問者数は、ECサイトにアクセスしたユーザーの数を示す値です。ECサイトを訪れるユーザーが少なければ、注文数も少なくなります。EC事業を軌道に乗せるためには、一定以上の訪問者数を確保しなければなりません。
ECサイト運営において、訪問者数はうまく集客できているかどうかを評価する指標として用いられます。訪問者数が少ない場合、見込み客に対してしっかりリーチできていないと判断できます。訪問者数が思うように伸びていない場合には、集客方法の見直しを検討した方が良いでしょう。
ECサイトを訪問するユーザーは、新規顧客とリピーターの2種類に分けられます。集客方法を見直す際は、分けて考える必要があることを覚えておきましょう。
2.回遊率
回遊率は、1人のユーザーが閲覧したページ数の平均値です。回遊率が5だった場合には、ユーザーはECサイトにアクセスした後に平均で5ページずつ閲覧していることになります。回遊率ということは、ほかの商品ページをあまり見てもらえていないことを示しいています。回遊率が低くなる理由として、以下の3つが挙げられます。
- 広告の内容と商品のイメージが合っていない
- ECサイト内に効果的な内部リンクが設置できていない
- 取り扱い商品がもともと少ない
広告内容と商品のイメージが一致していなければ、広告費が無駄になってしまいます。広告に記載する文章や画像を見直しましょう。
またECサイト内に効果的な内部リンクが設置できていない場合は、ユーザーの導線にあわせてページのレイアウトやレコメンド機能を見直す必要があります。取扱商品数が少ない場合はサイズや色など、商品のバリエーションの追加を検討してみましょう。
3.CVR(コンバージョン率)
CVR(コンバージョン率)は、サイト運営者が期待する行動をとったユーザーの割合を示す数値です。ECサイトの運用で使用されるCVRは、実際に商品を購入したユーザーの割合を示しています。CVRの算出方法は以下の通りです。
CVR = 購入者数 ÷ アクセス数 × 100
訪問者数を高めたとしても、CVRが低ければ期待したほど売上が伸びない可能性があります。ECサイトのCVRの目安は、2~3%前後と言われています。また高額な商品では、目安よりもCVRが低くなるケースも珍しくありません。
CVRは売上へのインパクトが大きい項目のひとつです。例えば現状のCVRが1%であれば、2%に向上させるだけでも売上は2倍になります。ECサイトにおいて重要度の高いKPIと言えるでしょう。
4.客単価
客単価とは、商品を購入したユーザーの平均購入額です。客単価の算出方法は以下の通りです。
客単価 = 売上金額 ÷ 購入者数
客単価が向上すれば、売上も増加します。ECサイトで客単価を上げる方法は、大きく以下の2つがあります。
販売形式 | 特徴 |
クロスセル | ユーザーが購入しようとしている商品とは別の商品を購入してもらう方法です。もしくは購入予定の商品にオプションなどを追加してもらう方法です。 |
アップセル | 顧客の購入予定の商品よりも、グレードが高い高額商品を購入してもらう方法です。 |
ユーザーに対してクロスセルやアップセルを促すには、レコメンド機能の活用が便利です。
5.リピート率
リピート率とは、一定期間中に商品を購入した新規ユーザーの内、リピーターになったユーザーの割合を示す数値です。リピート率の算出方法は以下の通りです。
3ヵ月のリピート率 = 3ヵ月間のリピーターの数 ÷ 累計新規購入者数 × 100
リピーター率と混同されることもありますが、リピーター率は購入者数に占めるリピーターの割合を示す値です。リピーターの集客は新規顧客の集客よりもハードルが低い上に、集客コストも抑えられます。効率的にECサイトの売上を伸ばすためには、リピート率を向上させることが重要です。
6.CPA(顧客獲得単価)
CPA(顧客獲得単価)とは、1件の注文を獲得するためにかかった広告費を示す指標です。CPAの算出方法は以下の通りです。
CPA(顧客獲得単価) = 広告費 ÷ コンバージョン数
CPAは、広告費の費用対効果をチェックする際に用いられます。CPAが低ければ、効率的に広告を運用できている状態です。CPAが商品の粗利益を上回ると赤字になってしまいます。リピート購入が期待できない商品であれば、CPAを粗利益より低く抑えなければなりません。
粗利率を何%確保したいのかによって、CPAの上限も決まります。リピート購入が期待できるのであれば、次に解説するLTVも考慮しましょう。
7.LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)とは、新規のユーザーが将来的に自社にもたらす利益の総額です。取引が終了するまでの間に、顧客が購入する商品の総額と言い換えても良いでしょう。LTVは客単価と購入回数をもとに、以下の通りに算出します。
LTV(顧客生涯価値)= 客単価 × 購入回数 × 取引期間
新規顧客の集客と比較するとリピート顧客の集客コストは抑えられるので、1回目の受注のCPAが高額だったとしても2回目以降の注文で広告費を回収できるでしょう。CPAの上限を設定する際は、LTVやリピート率も考慮することが重要です。
KPIを設定する3つのステップ
同じECサイトでも、会社によってKPIに設定すべき項目は異なります。KPIを設定する方法を3つのステップで解説しましょう。
ステップ1.KGI(重要目標達成指標)を設定する
KGIと関連性の深い項目を、KPIとして選定する必要があります。まずはゴールとなるKGIを設定しましょう。
KGIを設定する際は、必ず定量化できる指標を選びましょう。数値で確認できる指標でなければ、人によって解釈や受け取り方が変わってしまいます。認識のズレが生じる原因になるため、数値目標を設定しなければなりません。
KGIは目標の達成度を評価するための指標です。1ヵ月の売上目標が2,000万円で、現状の売上が1,500万円だったとしたら、目標に対して75%の売上を達成していると誰もが判断できます。
ステップ2.KGI達成に必要な要素を分解
KGIを設定したら、目標達成に必要な要素を分解しましょう。ECサイトの売上の算出方法は以下の通りです。
ECサイトの売上 = 訪問者数 × CVR × 客単価
つまり、訪問者数・CVR・客単価の3つの項目で売上が決まります。それぞれの項目の数値を決定づける変数に分解すると、売上に影響を与える要素が見えてきます。
- 訪問者数:新規ユーザー数、リピーター数
- CVR:購入ボタンのクリック率、カゴ落ち率
- 客単価:商品単価、購入点数
紹介した要素はあくまで一例です。自社の実情にあわせて売上に影響を与えるが大きいと考えられる要素を洗い出すことが大切です。
ステップ3.分解した要素の中からKPIを3つ設定
分解した要素の中からKPIを3つ選びましょう。ECサイトを立ち上げたばかりで、訪問者数が少ないのであれば、広告のクリック率やメールマガジンの反応率などがKPIの候補になります。
CVRが1%を下回っているのであれば、購入ボタンのクリック率やカゴ落ち率などをKPIに設定するとよいでしょう。自社のECサイトの現状にあわせて優先順位の高い項目を選ぶことが重要です。
ただしKPIの数が多過ぎると効果測定が困難になります。KPIを増やしすぎると十分な分析や検証ができずに、重大な変化を見落としてしまう恐れがあるのです。売上が増えたとしても、理由を明確に説明できなければ運営に活かすことはできません。
広告の運用や購入手続きの改善などの作業量が増えてしまうので、KPIは3つ前後に留めておきましょう。
ECサイト運営ではKPIを設定した後が重要
KPIの選定も重要な作業ですが、設定した後の運営も同じぐらい重要です。KPIをECサイトの運営にどのように活かせばよいのかを解説します。
データ分析で仮説を立てる
KPIの数値をチェックして、仮説を立てましょう。仮説をもとに、どのような施策を実行すべきか考えることが重要です。客単価が低いのであれば、レコメンドに表示する商品がユーザーのニーズにマッチしていない可能性が考えられます。CVRが低いのであれば、購入ボタンの表示位置が適切ではない可能性があります。
ECサイトの立ち上げ直後から、売上目標が達成できるケースは稀です。ECサイトの運営では、データ分析をもとに仮説を立てて改善を繰り返す必要があります。回遊率やリピート率などのデータをチェックして、KPIが伸びない理由を考えてみましょう。
仮説と検証を繰り返す
仮説を立てた後は、レコメンドのレイアウトやメールマガジンの内容の見直しなどの施策を実行に移して、効果を検証します。1週間や1ヵ月など、期間ごとのKPIの変化をモニタリングしましょう。訪問者数を増やすために広告の内容を見直したのであれば、広告のクリック率の変化は重要な確認項目です。
KPIの改善は試行錯誤の連続です。施策を打っても、期待したほど効果がなかったということも珍しくありません。仮説が間違っている場合があるかもしれません。仮説の検証にコストがかかる施策は、小規模で実施して費用対効果を確認してから本格的な予算を投入することがおすすめです。
KGIへのインパクトが大きいKPIから改善する
KPIの改善に取り組む際は、KGIへのインパクトが大きいKPIから取り組むと良いでしょう。KGIに与える影響が大きいKPIの改善に人員や予算を割いた方が、効率的にKGIの達成を目指せます。そのため、人員や予算など、少ないソースで結果を出すためはKPIに優先順位をつけることが重要です。
優先順位を考える際には、KPIや関連する指標がお互いに与える影響を理解しておかなければなりません。KPIツリーマップを作成すると、指標同士の相関関係を整理・可視化できます。KPIの改善に取り組む際は、ツリーマップもあわせて作成すると良いでしょう。
KPIを設定してECサイトの売上アップを目指そう!
KPIの設定方法やECサイト運営に欠かせない指標について解説しました。ECサイトの売上を効率的に改善するためにはKPIを設定し、検証を繰り返す必要があります。まずは、自社のECサイトの課題を洗い出し、どの部分を改善すべきかを明確にしましょう。
「ECサイトの運営に十分な人員を割けない」「社内にECサイト運営の経験を持つ人材が在籍していない」という場合もあるでしょう。ランサーズには、ShopifyやMakeShopでのECサイトの構築や運用をサポートできる人材が多数登録されています。ECサイトの運用でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
