自社サービスや商品を新たなECビジネスモデルで展開すれば、新規顧客を獲得できるとお考えではないでしょうか。自社の商材のブランディングで差別化をはかり消費者に直接販売したいなら、DtoCがおすすめです。
本記事ではECサイトで見られるビジネスモデルやその展開手法、DtoCの概要や注目の背景、おすすめのマーケティング・販売手法をご紹介します。EC事業の担当者の方はぜひ参考にしてください。

目次
ECサイトで見られる代表的な5つのビジネスモデル
EC通販事業に進出するにあたり、ビジネスモデルの選択は重要なポイントです。ここでは基本的な5つのビジネスモデルについて見ていきましょう。
BtoB
BtoBとは、企業(Business)間での商取引のことです。企業が他の企業に対して、製品・サービスを提供します。そのため一般消費者は対象ではなく、製品・サービスの裏側でなくてはならないビジネスモデルと言えるでしょう。
メーカーが問屋・個店・百貨店など既存顧客に自社製品を卸売する形態のほか、不特定多数の企業を対象に販売する形態もあります。
BtoB取引では、取引先によって取引条件が異なることから卸価格にも違いがうまれるのが特徴です。そのため従来から担当者とのコミュニケーションが前提であることも多く、取引プロセスに合わせたECサイトの構築が必要です。
BtoC
BtoCとは、企業と一般消費者(Consumer)との間で行う商取引のことです。ECサイトに流入する個人ユーザーに商品やサービスなどを提供します。
BtoC取引は、EC通販市場の中でもよく見られる一般的なビジネスモデルです。BtoCでは「Amazon」や「楽天市場」などのECモール型と、自社で独自ドメインを取得してECサイトを展開する自社型の2種類があります。ECモール型は集客力がありますがブランディングが難しく、一方の自社型はブランディングに向いていますが集客は自社で行う必要があるのが違いです。
ECサイトを構築すれば販路を全国や海外にまで拡大できるほか、24時間365日注文受付ができるようになります。
CtoC
CtoCとは、一般消費者間の商取引のことです。主にリユースを目的とした取引ができる「メルカリ」や「ヤフオク」、主にハンドメイド作品を取引できる「ミンネ」などのプラットフォームがあります。
個人が気軽に出品し商取引に参加できるとあって、近年拡大しているビジネスモデルです。価格の設定はスタート価格より落札価格が高値になることが期待できるオークション形式、価格が変動しない定額出品、価格交渉できるものまでさまざまです。
プラットフォーム側は一般消費者から注目され、出品者や落札者などのユーザーが増えるような施策が必要です。
CtoB
CtoBとは、一般消費者と企業の商取引のことです。一般消費者が企業をターゲットに展開するビジネスモデルには、働き方改革に代表されるフリーランスの台頭が影響しています。
専門性の高いスキルやノウハウを持つ個人が、企業に対してサービス・成果物を販売し収益化を目指すビジネスモデルです。例えばストックフォトの販売、Webデザインやコンテンツの制作などが考えられます。
ストックフォトとはあらかじめ撮影された写真のことで、「ピクスタ」や「ShutterStock」などに代表されるプラットフォームを通じて、企業は本や雑誌の表紙やソーシャルメディアの広告に最適な写真を購入可能です。企業側は撮影料をカメラマンに支払うより安価に写真を入手でき、一方のカメラマンは自分の作品が埋もれずに使用される機会を得られます。
「ランサーズ」も、多様な専門性を持つフリーランスがサービス・成果物を販売できるという点で、CtoB型のプラットフォームです。
DtoC
DtoCとは「Direct to Consumer」のことで、メーカーが卸売業者など中間業者を介さずに、ECサイトを通じて直接ユーザーに販売するビジネスモデルです。手数料などを削減することで、リーズナブルな価格帯の高品質な商品を提供できます。顧客データを活用し、商品と体験が一体となった販売手法に取り組むケースが多く、化粧品・コスメブランドなどでよく見られるビジネスモデルです。
顧客とのコミュニケーションを重視しながらメーカー主体でブランディングを目指すなら、最適な手法と言えるでしょう。自社ブランドのファン・コミュニティを形成できるので、顧客ユーザーの参加を促しながら魅力的な商品開発をすることも可能です。
EC通販業界で注目のビジネスモデル展開手法
ここでは上述のビジネスモデルを展開するにあたり、EC通販業界で注目されている手法をご紹介します。
オムニチャネル
オムニチャネルとは、企業とユーザーの接点となるすべてのチャネル(販売経路)を統合・連携させることで、どの販路からでもユーザーがスムーズに購入できるようにする手法です。実店舗・ECサイト・SNS・アプリなどを統合・連携することでオンライン・オフラインのデメリットをなくし、ユーザーのメリットを最大化させます。
実店舗を持つ事業者であれば在庫情報・顧客情報を一元管理することで、ユーザーにとっては、欲しい商品を好きな時に好きな場所で受け取れるような、シームレスな顧客体験を得られるのがメリットです。例えば買い物に出かけた店舗で在庫がなければ、ユーザーはECサイトから購入し店舗で受け取れるので、さまざまなユーザーニーズを満たせます。
越境EC
越境ECとは、ECサイトを多言語化させて自社商材を海外販売する手法です。世界へと販路を拡大できるため、利益の増大はもちろん国内消費が落ち込んだ場合のリスクヘッジも可能となります。
ターゲットとする国ごとに訴求や商習慣が異なることから、文化や国民性のほか、決済方法や配送方法をよく研究することが大切です。さらに規制・関税・為替変動なども考慮する必要があることから、ターゲット国の実情に詳しい専門性の高い人材からアドバイスを得ることも検討しましょう。
EC市場で注目をあびるDtoCビジネスモデル
EC市場の拡大とともに注目をあびているのが、DtoCビジネスモデルです。ここではDtoCと混同しやすいワードを整理していきましょう。
DtoCとECの違いをおさらい
ECとはインターネットを介して商品やサービスを提供する電子商取引(Electronic commerce)のことで、通販の販売チャネルの1つです。DtoCとはメーカーが一般消費者に直販することなので、その販売チャネルにはEC通販も含まれます。
DtoCでは、ECモールを介さずに自社ECサイトでブランディングしていくことが基本です。そのため、より情緒的な価値をユーザーが体験できる施策を展開する必要があります。
DtoCとBtoCの違いをおさらい
DtoCとBtoCは、いずれも企業が一般消費者に向けた販売を行う点では同じです。例えば商材が化粧品・コスメの場合、ドラッグストアECサイトで販売するのがBtoC、一方DtoCでは、メーカーが商品の開発・製造・販売までを一貫して手がけることから、メーカー自体が販売窓口となります。
そのためBtoCのECサイトを見るとチラシのようなセールスを重視したデザインですが、DtoCのECサイトはブランドコンセプトの発信を重視したデザインです。
DtoCビジネスモデルがEC市場で注目される3つの理由
DtoCビジネスモデルが、EC市場の拡大とともに注目された背景には主に3つの理由があります。ここではそれぞれの理由について見ていきましょう。
ミレニアル世代以降の消費行動や傾向
ミレニアル世代とZ世代の買い物はECサイトの利用がメインで、顧客体験やイノベーションなど独自性の高い商品を選ぶ傾向が顕著です。
デジタルの台頭と共に成長してきたミレニアル世代は情報リテラシーに優れてITとの親和性が高く、続くデジタルネイティブ世代とも呼ばれるZ世代はデジタルが「普通のこと」である時代に生まれてきた世代を指します。
ミレニアル世代以降の消費行動や傾向が、DtoCビジネスモデルと非常に親和性が高いことを知っておきましょう。
DtoCビジネスモデル躍進の鍵となるSNSの普及
近年ではスマホが普及したことから誰もがインターネットを利用するようになり、Twitter・Facebook・Instagram・YouTubeなどのSNSが、時には テレビよりも影響力を持つケースが増えてきました。D2Cビジネスモデルでは、他社との差別化を図るためブランドのメッセージやストーリーといった価値観を発信することが大切です。
双方向のコミュニケーションが可能になるSNSの普及によって、メーカーは従来より一般消費者との接点をもちやすく信頼関係の構築がしやすくなりました。ブランドへの共感と理解を促すほか、従来のプロダクトアウトと異なり、SNSのコミュニケーションを通じて顧客が求める商品や体験を明らかにすることで商品開発に活かせるようになったのです。また莫大な広告費を使わなくても、SNSから自社ECサイトへ容易にユーザーを誘導できます。
DtoCビジネスモデルとSNSは非常に相性が良く、SNSの活用次第では自社ECサイトの飛躍的な売上向上も見込めるでしょう。
独自商品を開発しやすいサプライチェーンの進化
デジタル化でオンデマンド製造が可能になり、独自商品を開発しやすい環境が整いつつあります。ライフスタイルの多様化に伴い一般消費者の需要はますます個別化が進んでいるため、サプライチェーンも進化を遂げているのです。
製造業界も時代の流れにあわせて、小ロット多品種生産に対応するようになりました。製造業界の仕組みが大きく変わってきていることから、DtoCビジネスモデルも展開しやすくなっているのです。
DtoCで注目されるマーケティング・販売手法
DtoCビジネスモデルを展開するためには、他社との差別化が大きなテーマになります。ここではDtoCで注目されるマーケティング・販売手法を見ていきましょう。
ツーステップマーケティング
DtoCビジネスモデルにおいては、ブランドコンセプトを伝えるだけでは売上に繋がらず、実際にはSEO広告・アフィリエイト広告や運用型広告・LP作成などの手法を駆使します。DtoCビジネスモデルを展開する上で注意したいのは、ワンステップマーケティングがNGになりつつあることです。
最近では、新規顧客へいきなり商品を販売する手法は、規制の対象になりつつあります。フェイク広告の規制強化や薬機法違反の場合には課徴金制度が導入されるなどの動きが背景にあるからです。そこで無料モニターなどで見込客を集めてから商品を販売する、ツーステップマーケティングが注目されています。
マーケティング手法のトレンドは変化が速いため、専門家のアドバイスを仰ぐことも大切です。DtoCビジネスモデルを展開する際には、コンサルタントに依頼する前にマーケティング領域で知見のあるフリーランスのアドバイスを仰ぐようにしましょう。
パーソナライゼーション
ECサイトにおいてもパーソナライゼーションが注目をあびています。パーソナライザションとは、購入意欲がわくコンテンツや商品をECサイトに流入したユーザーそれぞれの興味にあわせて提供することです。
ユーザーの趣味・嗜好やライフスタイルにあった商品を、ECサイト側が提案する手法で「あなたにぴったり」を訴求します。最終的に選ぶのはユーザーですが「ECサイト側から最適な商品を選んでもらえる」ので悩む時間が減り、購入しやすくなるのがポイントです。
動画コマース・ライブコマース
アパレル・化粧品・家電など「使ってみないとイメージがわかない」商材を取り扱う事業者の方は、動画コマース・ライブコマースにも注目してみてください。
動画コマースとは、ECサイト上に掲載された動画コンテンツ上で商品情報だけでなく、買い物もできる仕組みのことです。一方のライブコマースとは、ライブ動画を配信しながら販売を行うテレビショッピングのような仕組みのことで、視聴者をあらかじめSNSを通じて集客する必要があります。
静止画やテキストのみよりも、多くの情報を瞬時に届けられる動画コンテンツは今後ますます増えていくでしょう。なおライブコマースの認知度は若年層で特に高く、D2Cビジネスモデルを牽引するミレニアム世代にはあまり浸透していません。
商材やターゲットユーザーによって、うまく機能する手法は異なります。動画コマース・ライブコマースも、知見のあるフリーランスのアドバイスを仰いでから導入をするのがおすすめです。
DtoCは専門性の高い人材の支援を受けながら進めよう
市場拡大を期待できるEC通販事業では、さまざまなビジネスモデルから自社の商材に最適なものを選ぶことが重要です。サプライチェーンの進化やSNSの普及を好機にとらえ、D2CビジネスモデルをEC市場で展開する事業者も増えています。
D2Cビジネスモデルはさまざまなノウハウが要求されるため、立ち上げ当初は知見のあるフリーランスのアドバイスを仰ぐのがおすすめです。フリーランスとの協働によって、自社ECサイトの進むべき方向性が早い段階で見えてくるでしょう。
