スマートフォンで手軽にインターネットショッピングができるようになり、消費者にとってネットショップは身近なものになりました。一方で新しくEコマースに参入する事業者も多く、競争は激化しています。
売上を増やすためには、売上を構成要素に分解し自社に合った施策を実行することが大切です。リピーターとファン形成も外せません。
本記事ではネットショップで売上をアップさせるために知っておきたい売上の構成要素と、各要素を成長させる基本的な10の施策、さらにリピーター・ファン形成のための3つの施策を紹介します。

目次
ネットショップの売上を構成する3要素
ネットショップで思うように売上が伸びないことに悩んでいませんか? ばくぜんと「売上を増やしたい」と考えていただけでは売上増は実現しません。売上を成り立たせている以下の3つの要素に注目しましょう。
売上 = 「アクセス数」×「購入率」×「顧客単価」の公式を理解しよう
ネットショップの売上を増やすためには、以下の3つのことが不可欠です。
- アクセス数を上げる
- 購入率を上げる
- 顧客単価を上げる
「アクセス数」「購入率」「顧客単価」の3つの要素を改善していけば、売上は増加します。それは、売上と3要素には、以下の公式があるからです。
売上 = 「アクセス数」 × 「購入率」 × 「顧客単価」
例えばあるネットショップでは購入率が2%だとします。顧客単価は1,000円、アクセス数は5,000でした。その場合、売上は以下のようになります。
売上 = 5,000(アクセス数) × 0.02(購入率) × 1,000(顧客単価) = 100,000円
仮にアクセス数が6,000に増え、購入率が3%、顧客単価は1,200円に増えたとします。すると売上は以下の通りです。
売上 = 6,000(アクセス数) × 0.03(購入率) × 1,200(顧客単価) =216,000円
それぞれの要素を少しずつ増やすだけで、売上全体を大きく増やすことができます。
「売上アップ」というあいまいな目標ではなく「アクセス数を20%増やそう」「購入率を1%増やそう」「顧客単価を20%増やそう」などの数値目標を設定することによって、取るべき施策を明確にすることが可能です。
ここから各要素について、さらに詳しく見ていきましょう。
「アクセス数」はネットショップへの訪問者数
「アクセス数」とは、ネットショップにどれだけユーザーの来訪があったかを示す指標です。
アクセス数はユーザーの来訪者数が分かるだけではありません。購入率や顧客単価を知るためにも把握しておかなければならない基本となる数字です。Google Analyticsなどの解析ツールを使えば、ネットショップへのアクセス数(Google Analyticsではセッション数)以外のことも分かります。
Google Analyticsでわかる代表的な例を紹介します。
- よく閲覧されているページや商品
- ユーザーの訪問経路
- コンバージョン率
コンバージョン率とは、購入率を始めとして、メルマガの登録などネットショップ側で設定した目標を達成したユーザーの割合です。アクセス数以外の情報を把握することで、売上アップにつながる施策が立てやすくなります。
「購入率」はネットショップで購入してくれたお客様の割合
購入率とは、全訪問客のうち購入してくれたお客様の割合です。ここでは購入数が基準になるので、1人のお客様が商品を3つ購入した場合は3とカウントします。
購入率(%) = 全購入数 ÷ アクセス数 × 100
購入率は、上記の式で求めることが可能です。
仮に1か月のアクセス数が5,000、1か月に100個の商品が売れたと仮定すると、購入率は「100 ÷ 5,000 × 100」で2%となります。
「顧客単価」とはネットショップでの顧客の平均購入金額
顧客単価とは、お客様が1人あたり、平均でどれだけ購入してくれたかという意味です。
顧客単価(円) = ある期間の総売上 ÷ 同期間の購入者数
顧客単価は上記の式で求めることができます。
仮に1か月間の売上が10万円であり、購入した顧客数が100人であったとすると、顧客単価は「100,000 ÷ 100」で1,000円となります。
売上を構成する3要素を理解したところで、次に各要素をいかに伸ばすかを見ていきましょう。
「アクセス数」を増やすための4つの施策
新しくお店を開いたら、まずはできるだけ多くの人に店の存在を知ってもらい、来店してもらう必要があります。そのために店舗側では集客のための施策を行います。チラシやクーポン券のポスティングなどが身近な例です。
ネットショップでも同様に、集客のための施策が必要です。最初に集客で押さえておくべき施策を以下の通り4つ紹介します。
- ターゲットを明確にする
- SEO(検索エンジン最適化)対策を行う
- SNSでユーザーとコミュニケーションする
- Web広告を活用する
1.ターゲットを明確にする
自社で購入する顧客はどんな人でしょうか?ネットショップのイメージや訴求内容が見込み客とずれていると、売上に結びつきません。
購入してくれる集客に最適なアプローチをするための第一歩は、ペルソナの作成です。
ペルソナとは自社のネットショップで商品を購入してくれる理想的な顧客像を言語化したものです。以下に代表される要素を考え、名前やビジュアルイメージも用意します。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 趣味
- 収入
- 家族構成
- 居住地
- 趣味
- 休日の過ごし方
- 好きなメディア
- 悩み
- チャレンジしていること
- 検索しそうなワード
- ネットショップにアクセスする経路
ペルソナを設定することで、ターゲットとなる顧客が明確になります。その顧客のペルソナに合わせて、ネットショップの品ぞろえやレイアウト、ブログなどを決めましょう。
2.SEO(検索エンジン最適化)対策を行う
ユーザーの多くはGoogle検索を通じてネットショップを見つけます。検索画面の上位に表示されるための対策がSEOです。
ネットショップでできるSEO対策として、以下の2つがあります。
- 見込み客が検索しそうなワードをキーワードとして設定する
- ユーザーの役に立つ情報や、商品開発の裏話など、興味を引くコンテンツを提供する
見込み客が検索しそうなワードをキーワードとして設定する
ユーザーの役に立つ情報や、商品開発の裏話など、興味を引くコンテンツを提供する
Googleの検索エンジンは、「ユーザーにとって良質で有益なコンテンツ」を上位表示します。そのため、登録したキーワードとWebサイトの内容が一致しているか、またユーザーの役に立つ情報が掲載されているかを判断基準としています。
SEO対策は、結果が出るまでに2〜3か月かかり、即効性がある対策ではありませんが、魅力的なコンテンツのあるWebサイトは、ユーザーがまた訪問したくなります。キーワードを意識し、地道に良質なコンテンツを増やしましょう。
3.SNSでユーザーとコミュニケーションする
InstagramやFacebook、Twitter、LINE、TikTokなど、SNSはユーザー層や利用目的が分かれているため、ターゲットに合わせた接点づくりができます。
- 視覚的要素の強い商品を販売している⇒Instagram
- 30~50代のビジネスパーソンがメインターゲット⇒Facebook
- 短期間で多くの人に知ってほしい⇒Twitter
- 購入してくれたユーザーと継続的にコミュニケーションしたい⇒LINE
- 10代がメインターゲット⇒TikTok
いずれも即効性のあるものではありませんが、自社なりの工夫をしながら継続的に運用することで、ファン層の形成が可能です。
4.Web広告を活用する
広告費はかかりますが、即効性がある集客の施策です。さまざまな種類があるため、あらかじめ予算を決めて、自社の商品や見込み客に合わせた広告を利用しましょう。
Web広告には以下のような種類があります。
広告の種類 | 特徴 |
検索連動広告 (リスティング広告) | 検索画面の上部、または下部の目立つ場所に【広告】の表示付きで検索一覧に表示される |
ショッピング広告 | 検索画面の最上部に画像付き、価格や商品情報も合わせて表示される |
ディスプレイ広告 | ポータルサイトやWebページの広告枠に表示される |
SNS広告 | SNSに表示される |
動画広告 | 動画の前後や動画ページに表示される |
新聞やTVCMなどのマス広告に比べて少額で始められるWeb広告ですが、効果を上げるためにはある程度の投資は必要です。「このくらいまでなら広告にかけることができる」という費用を定め、実際に広告でどれだけ顧客が獲得できたか、効果を測定しながら運用しましょう。
「購入率」を上げる3つの施策
ネットショップに安定した訪問者が得られるようになったら、次は購入率を上げる施策を検討しましょう。ここでは始めやすい3つの施策を紹介します。
- カゴ落ち対策を行う
- ネットショップのユーザビリティを改善する
- レビューを充実させる
1.「カゴ落ち」対策を行う
ネットショップで商品をカートに入れ、購入直前まで進んだのに、最終的な決済が行われなかった状態を「カゴ落ち」と呼びます。商品をカートに入れるほど購入意欲の高い見込み客が、なぜ購入しなかったのか、その理由を突き止め、改善しなければなりません。
カゴ落ちには主に2つの原因があると考えられます。
カゴ落ちの原因 | 状況 |
決済手続きが煩雑 | 決済フォームの入力項目が多い、わかりにくい、エラー表示が出るとすべて再入力が必要などの理由から、見込み客が途中で離脱する |
送料が高い | 商品の金額に加えて送料もかかることに負担を感じた見込み客が離脱する |
入力フォームをテストしながら改善し、送料を見直すことでカゴ落ち率を減らしましょう。
2.ネットショップのユーザビリティを改善する
ネットショップを訪れたユーザーは、知りたい情報をすぐに入手できているでしょうか?「商品を比較しながら選びたい」「同一価格帯の他の商品を探したい」など、ユーザーの知りたい情報は多岐にわたります。
ユーザーが情報を入手しやすいように、ネットショップ内の商品検索機能を充実させてください。そのためには以下の2つの方法が効果的です。
ユーザビリティの改善策 | 施策詳細 |
サイト内検索をわかりやすく設置する | Webページを開いたら、すぐ目につく位置に、検索ボックスの形で設置する |
キーワードサジェスト機能を付加する | ユーザーがあいまいなキーワードでも検索できる |
3.レビューを充実させる
購入者のレビューは、中立的な意見として購入を検討しているユーザーの参考になります。好意的なレビューは迷っている見込み客の購入を後押しするだけではありません。仮にクレームがあったとしても、ネットショップ側が丁寧な説明や対処をすることで、見込み客の安心にもつながります。
「顧客単価」を上げる3つの施策
購入意欲の高いお客様に対しては、購入品と一緒に使える商品を紹介したり、複数購入・定期購入による割引などのインセンティブ(誘因)を提供したりしましょう。顧客単価を上げるための3つの施策を紹介します。
- クロスセル・アップセルを活用する
- 高額購入による特典をつける
- 売上アップにつながるサポートを用意している
1.クロスセル・アップセルを活用する
クロスセルとは他の商品を追加購入してもらうことです。アップセルとは上級モデルなどのより高額な商品を購入してもらうことです。クロスセルやアップセルは、顧客の購入金額を引き上げるための重要な施策です。
購入金額を引き上げる施策 | 施策詳細 |
クロスセル | パッケージサービスを提供する、関連商品を紹介する |
アップセル | 上級モデルを紹介し、メリットを説明する |
クロスセルでもアップセルでも、お客様に提供する価値を高めることに焦点を当て、押しつけがましい印象にならないように提案します。
2.高額購入による特典をつける
見込み客が「お得感」を感じられるような施策を検討しましょう。
購入額が一定以上になれば、プレゼントや割引、送料無料にするなどの特典をつけて、購入意欲を刺激します。また、少額の商品も合わせて紹介することで、その金額に到達するように「ついで買い」を提案します。
3.複数購入・定期購入による特典をつける
見込み客が購入数を増やすことによって、プレゼントや割引や送料無料などの特典を用意します。また、定期購入することで、毎回の手続きの負担を軽減できるシステムがあることを紹介します。
3つの要素を高めるためにはリピーターやファンの形成がカギ
リピーターやファンを増やす施策は、集客よりお金がかからず、効果も得られやすい手法です。初回購入で良好な顧客体験ができたお客様は、2度3度と購入を重ねるリピーターやファンになってくれます。
定期的にネットショップを訪れてくれるのは、リピーターやファンです。購入に対する心理的なハードルが低く、初回購入客よりも多く購入してくれて、信頼感から高額商品の購入につながりやすくなります。売上増のカギを握るリピーターやファン形成の3つの施策を紹介します。
- レコメンデーション機能を活用する
- 特典付きの「会員」サービスへの入会を呼びかける
- メルマガやSNSのコミュニケーションで自社のファンを作る
1. レコメンデーション機能を活用する
レコメンドツールを利用すると、購入履歴や閲覧履歴をもとに「あなたへのおすすめ」を表示してくれます。顧客に合わせた提案を行うことで、顧客は「このネットショップは自分を大切にしてくれている」という満足感を抱きやすくなります。
また、レコメンデーションツールには、顧客に合わせたパーソナライズ機能だけではありません。人気商品をランキング形式で紹介する機能も備わっているため、ツールの利用を検討してください。
2. 特典付きの「会員」サービスへの入会を呼びかける
会員限定のサービスを提供し、ユーザーに会員登録を呼びかけます。会員登録してくれたユーザーには、メルマガを送付し、会員限定セールの案内を行います。
また、購入履歴に応じて会員にランクを設定し、ランク別のサービスを提供します。ランク別のサービスによって上級会員は「特別扱いをしてもらえる」という優越感を抱くことができます。
3. メルマガやSNSのコミュニケーションで自社のファンを作る
自社のファンになってもらうと、SNS上で他のユーザーに向けた口コミを拡散してもらえることがあります。ファン形成のためには、コミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションを取る上で重要なのは、顧客に合わせることです。顧客が最も利用しやすいコミュニケーション手段は何でしょうか?
例えば、メルマガはメールアドレスを登録してくれたユーザー全員に送付できる便利なツールです。しかしユーザーによっては、開封しないまま放置する恐れもあります。
顧客のメイン層がLINEをよく利用する方たちであれば、メルマガよりLINEを活用しましょう。お友達登録をしてもらい、定期的な情報配信を行います。メルマガより確実に読んでもらえるでしょう。
またファンになってもらうためには、商品紹介だけでなく役立つコンテンツやユーザー参加型の企画を用意することが大切です。ユーザー視点に立って、魅力的なネットショップを構築しましょう。
施策実行・効果検証・改善を続けよう
売上アップのためには、「売上」に直結する3つの要素に改善策を実施することが重要です。
本記事では「顧客数を増やすための施策」「購入率を上げるための施策」「顧客単価を上げるための施策」として基本的な施策を紹介しました。
さらに、3つの要素の効果を底上げするリピーターやファン形成につながる施策も3つ紹介しました。
まずはできるところから始めてください。また、実施する際にはかならず数値目標を設定しましょう。一定期間が終了したら、その数値目標が達成できたかどうかを検証し、できなければ改善策を検討してください。
ネットショップの成長には、息の長い取り組みが必要不可欠です。お金や人手をかけず、小さく始めながら改善を繰り返し、ネットショップを大きく成長させてください。
