ネットショップを自作する方法を選ぶ際には、事業規模や予算、自社のプログラミングスキルなどを考慮します。自社の商材との相性を見ながらサービスを選びますが、まず何を検討すれば良いのでしょうか?
本記事はネットショップを自作したい方に向けて、検討したい5つのポイントや安価で手軽に導入できるASPサービスのメリット・デメリットを紹介します。ネットショップの開設を検討している方は参考にしてください。

目次
ネットショップを自作する4つの方法
Amazonや楽天市場に代表されるECモールに出品・出店するのではなく、自社でネットショップを自作する代表的な方法は、以下の4つがあります。
- ASP(Application Service Provider)
- オープンソース
- フルスクラッチ
- パッケージ
「予算」「デザイン」「スキル」「機能」など自社で優先する事項にあわせて、ネットショップを自作する方法を選びます。なおASPとは、インターネットを通じてアプリケーションを提供するプロバイダのことです。ここではECサイト向けのASPについて紹介しています。
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。
自作方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
ASP(Application Service Provider) | 手軽かつ低予算で自社ECサイトを構築できる | ・短時間で導入できる ・低価格 ・気軽に始められる ・アプリケーションをインストールする必要がない ・デザインのテンプレートが豊富 ・ASP事業者側がシステムの更新をしてくれる(常に最新の機能を利用可) | ・カスタマイズの幅が狭い ・独自デザインにこだわれない ・独自の割引パターンや配送料などを設定できない |
オープンソース | インターネット上でソースコードが無料公開されているソフトウェアを利用して構築する | ・ソフトウェアのライセンス不要なので無料で使用できる ・自由にデザインできる ・プラグインの導入などで機能追加がしやすい | ・自社にシステムやプログラムの技術がなければ制作会社を探す必要がある ・不具合は自社で解決するプロミングの技術力が必要 ・セキュリティ対策が弱い |
フルスクラッチ | ゼロから構築する(自社開発) | ・自社の体制に合わせたシステムを構築できる ・自由にデザインできる ・差別化した売り方など細かい要件も盛り込める ・アップデートなどに振り回されない | ・ゼロから制作会社に構築してもらうため、莫大な費用と時間を捻出する必要がある ・システムやプログラミング言語への知識・理解が必要 |
パッケージ | パッケージ販売会社からECサイト構築のベースとなるソフトウェアを購入する | ・専門的知識や高い技術力は不要 ・自由度にデザインできる ・フルスクラッチよりコストが抑えられる ・ソフトウェアの更新作業が簡単 | ・構築のベースのみなので、自身でカスタマイズする必要がある ・自社にシステムやプログラムの技術がなければ制作会社を探す必要がある ・サーバー等、インフラ面を自身で用意する必要がある |
上記それぞれにあるサービスの特徴を見ると、ASPであれば比較的安価で短期間に導入できるため気軽にスタートできることがわかります。
ネットショップ自作に踏み切る前に整理・検討したい5つのポイント
ここでは、ネットショップ自作に踏み切る前に整理・検討したい5つのポイントを以下のとおりご紹介します。
- ネットショップの事業規模
- ネットショップのターゲットや販売方法
- 自社が望むカスタマイズ性やデザイン性
- ネットショップ運営のリソース
- 利用するサービスの初期費用や料金体系
ではそれぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1. ネットショップの事業規模
自社で構築するネットショップの規模によって、ある程度自作する方法は絞られます。事業規模によって自作にかけられる予算や求められる独自性のレベルが変わるからです。独自性を高めるためには、カスタマイズの幅が必要となります。
独自性が高い | 独自性が低い | |
費用が高い | フルスクラッチ パッケージ | - |
費用が低い | オープンソース | ASP |
大量の販売チャネルを管理する場合にはパッケージ、あるいはフルスクラッチでないと対応できないでしょう。フルスクラッチは、独自性の高い構築が要求される大規模ネットショップ向けです。
比較的小~中規模のネットショップ向けなら、ASPがおすすめです。低予算で始められるほか手間もかからず、豊富なテンプレートから選んで簡単にデザインもできます。
以前はASPではカスタマイズ性が低いと言われていましたが、近年ではカスタマイズできる幅が広がっており必要な機能を自由に追加できる場合もあるのでチェックしてみてください。
2. ネットショップのターゲットや販売方法
自作するネットショップが販売する商材やターゲット層によって、適切なショッピングカートを選びましましょう。カゴ落ちを防ぎ、購入率をアップさせるためにも、自社の顧客がオンライン上で電子取引をしやすいショッピングカートを選ぶことが重要です。ショッピングカートには以下のような種類があります。
カートの種類 | 特徴 | 向いている商材 |
簡単導入ECカート | ・「初期費用」や「月額料金」不要 ・小規模ネットショップで、販促チャネルが単一化されている場合に向いている | B2C(対消費者)の商材全般 |
総合通販ECカート | ・簡単導入ECカートよりカスタマイズ幅が広い ・簡単導入ECカートより決済手数料を抑えられる場合がある ・越境ECに対応できる場合もある | |
単品リピートカート・定期購入カート | ・定期購入の販売戦略をサポートする機能がついている(定期購入サイクル設定、初回特典、定期期間割引、サンプル品の封入物機能など) ・顧客:定期的に自動注文できるので、買い忘れを防げる ・ネットショップ:売上予測がしやすくなる | 購入サイクルのある商材 (化粧品や健康食品など) 購入頻度が高い商材 |
サブスクカート (定額制サービス) | 一定期間「使用する権利」を販売し「商品の授受が不要」な商材 (レンタル、美容室のサービス) | |
B2B専門カート | ・B2Bの商習慣にマッチしている ・取引先ごとに細かく設定できる | B2B(企業間取引)の商材全般 |
3. 自社が望むカスタマイズ性やデザイン性
ネットショップを自作する際には、どの程度のカスタマイズ性やデザインを希望するのか事前に明確にすることが大切です。自社のネットショップに必要な機能は、時期や顧客属性などによって変わります。
その上で、自作する方法が越境EC、オムニチャネル化やレスポンシブデザインに対応しているのか、デザイン性の高さは自社の商材や顧客属性にマッチしているか、将来的なカスタマイズに対応できる拡張性はあるのかなど検討すると良いでしょう。
4. ネットショップ運営のリソース
ネットショップの管理画面の使いやすさを考慮して、自作する方法を選ぶ必要があります。サイト運営にどれくらいの技術力を持った人材を用意できるか検討しておくことが重要です。
システムやプログラミング言語の知識や技術力が全くない人材しか確保できない場合には、シンプルで分かりやすい管理画面を提供する構築サービスを選ぶ必要があります。
5. 利用するサービスの初期費用や料金体系
フルスクラッチ開発やパッケージ利用では構築費が高額になり、オープンソースは自社で技術力が必要です。そこで小〜中規模のネットショップにとって現実的な選択肢となるASPの料金体系は、主に以下の3つで構成されています。
- 初期費用
- 月額料金
- 決済手数料
簡単導入ECカートは「初期費用」や「月額料金」が不要ですが、「決済手数料」はかかります。決済手数料がどの程度なのか、しっかり比較するようにしましょう。
ネットショップの規模や自社の商材に応じて必要な機能を選びますが、機能を付加する費用対効果もあわせて検討することが大切です。
小~中規模のネットショップを自作する際にASPを選ぶメリット
ASPでは、開発済みのプラットフォームをレンタルすることから、ネットショップを構築するための初期投資が抑えられます。小〜中規模のネットショップ構築に向いているASPのメリットは以下のとおりです。
- プログラミングの知識が不要
- ネットショップに必要な機能がすべて揃っている
- 最新機能が使える
- システムの保守管理の心配が不要
ではそれぞれについて見ていきましょう。
1. プログラミングの知識が不要
ASPを利用するメリットは、システムやプログラミングの知識がなくてもネットショップの構築が可能なことです。一般的にプログラマーやエンジニアによるWebサイトやアプリの制作には、プログラミング言語を使用したコードを入力します。
一方ASPは、コードを入力せずに制作するノーコードツールです。そのため、マウスによるドラッグ&ドロップなどの直感的で簡単操作で商品ページを作成したりボタンを設置したりできることから、コードを入力するよりも短期間で簡単に構築できます。
2. ネットショップに必要な機能がすべて揃っている
ECサイト向けASPでは、インターネットを介してASP事業者のサーバーにアクセスし、ネットショップ構築に必要な機能のみを選んで利用できます。ECショッピングカート機能、決済方法、配送などのネットショップ運営業務で必要な機能が初期設定で備わっているのがメリットです。
そのため自社がネットショップを開設したいタイミングで、いつでも気軽に始められます。インストールやサーバー手配など、ソフトウェアを利用する場合には考慮すべきインフラ環境の整備も不要です。利用できる機能は、価格やASP事業者のサービス内容によって異なります。
3. 最新機能が使える
ASPなら、サービスのバージョンアップをASP事業者側で行ってくれます。ネットショップの運営者が特に意識して操作しなくても自動でバージョンアップされているため、いつでも最新の機能を利用できるのがメリットです。
ソフトウェアをインストールした場合、アップデート作業や障害発生の危険性も伴います。重大事ですので業務への負荷が増えますが、ASPならASP事業者側にお任せできるのでネットショップ運営者の負担はありません。
4. システムの保守管理やセキュリティの心配が不要
システムの運用保守や機能改善はプラットフォームを運営するASP事業者側で行ってもらえます。セキュリティ対策も同様に行ってもらえるので、ネットショップ運営側の負担が軽くなるのがメリットです。
小〜中規模ネットショップはリソースが限られていることから、ASPを利用すれば運営や商品開発により注力できるのもメリットと言えるでしょう。
ただしASP事業者を選ぶ際には、過去に個人情報流出の事故が起きていないか、起きていればどのような対処が行われたかなどセキュリティ対策の状況も確認しておく必要があります。ネットショップで個人情報が流出してしまうと、評判や信頼を大きく落としてしまうからです。
小~中規模のネットショップを自作する際にASPを選ぶデメリット
ASPはフルスクラッチやパッケージを利用するより安価にネットショップを自作できる方法として人気があります。ただし他の自作方法より柔軟性に欠けるため、自社の思うとおりにはネットショップが自作できないかもしれません。
ここでは、ASPのデメリットを以下のとおりご紹介します。
- 自社の実情に合わせカスタマイズしづらい
- 自社開発のシステムとの外部連携が弱い
では、それぞれについて見ていきましょう。
1. 自社の実情に合わせカスタマイズしづらい
ASPでは、すでに構築されたプラットフォーム上で提供されるサービスを利用します。そのため全てを自由には構築できません。例えばおしゃれなデザインのテンプレートがASPには揃っていますが、テンプレートの枠を超えて独自のデザインには仕上げらないのです。
近年ではカスタマイズできる幅が広がっていますが、自社の実情に合わせることは難しいのが現状です。あくまでも、ASP事業者の提供するサービスにあわせて自作することになります。ASP事業者が設計した仕様の中でネットショップを自作する場合に、上述したメリットを享受できるというわけです。
2. 自社開発のシステムとの外部連携が弱い
ASPには、自社で開発した基幹システムなどの外部システムと連携しづらいというデメリットがあります。ネットショップのバックエンド業務には受発注業務があり、外部連携をすることで運用業務を効率化させることが可能です。しかし在庫の管理や受注から配送までの業務を自動化したくても、ASPだとうまく連携できない場合があります。
ソフトウェアやプログラムの連携をAPI(Application Programming Interface)連携と呼びますが、利用するASPにどの程度API連携が可能なのか事前にチェックしておきましょう。
ASPサービスの始め方
ASPは、資金に限りがあり短期間でネットショップを導入させたい場合に、最適な自作方法です。ASPサービスの始め方は、以下のとおり非常に簡単だといえます。
- 利用を希望するASP事業者サイトにアクセス
- アカウントを作成(メールアドレス、パスワード、ネットショップの名前やURLなどの情報を入力)
- ネットショップの自作をスタート
初期費用や月額料金が有料のASPの場合には、無料お試し期間を設けている場合もあります。無料お試し期間を活用して、操作・管理画面の使い勝手をチェックしたりネットショップのデザインイメージを固めたりすることが可能です。
商材との相性を考慮して自作しやすいサービスを選ぼう
今回はどのような点を検討してネットショップを自作するサービスを選べば良いのか、中でも小〜中規模に向いたASPのメリット・デメリットをご紹介しました。近年では安価に短期間でネットショップを自作できるASPが人気を集めています。無料お試し期間を利用するなどして自社商材に合うサービスをぜひ見つけてください。
またASPでも高度な設計が可能な場合がありますが、自社では難しいと感じたらフリーランスや制作会社に相談してみてはいかがでしょう。
