ECサイトの開設準備を進める際に、ECサイト全体の中で自社のサイトがどのような種類に該当するのか、疑問に感じたことはないでしょうか?事業の目的やコンセプトに合致したサイトを構築するには、自社サイトの種類を理解し、適切な構築方法を選択することが大切です。
本記事では、ECへの新規参入や運用改善の検討に役立つ、ECサイトに関する基本情報、取引形態と構築方法の種類、サイト構築サービスの概要について解説します。

目次
ECサイトとは?
本項では、ECサイトの定義と特徴、ECサイトを取り巻く状況について説明します。
ECサイトの定義
ECサイトとは、インターネット上で製品やサービスを販売するためのWebサイトのことです。ECは「Electronic Commerce」の略称で、日本語では「電子商取引」と呼びます。「ネットショップ」や「オンラインショップ」とも呼ばれます。
実店舗と比較したECサイトの特徴
ECサイトには、実店舗と異なる特徴が数多くあります。主な相違点をまとめたのが、以下の表です。
項目 | 実店舗 | ECサイト |
販売エリア | 店舗にアクセス可能な地域 | 全国・全世界での販売が可能 |
購入前の商品確認 | 直接商品を確認する | 写真や説明文、動画などで確認する |
集客方法 | 店舗や看板を見かけたなどの自然集客が期待できる | 自然集客が見込めないため、集客対策が必要 |
商品の配送 | 基本的には不要 | 商品に合った配送方法が必要 |
営業時間 | 開店時のみ販売可能 | 基本的に年中無休・24時間販売可能 |
商品説明・アピール方法 | 顧客が実際に手にとって判断できる、店員から説明を聞くことも可能 | 説明文や商品画像、購入者のレビューなどから判断する |
商品への質問 | 店員に直接質問できる | 電話やメール、チャットなどで問い合わせ |
開業費用 | 外装・内装費、店舗賃貸時の初期費用などの資金が必要 | 構築方法によっては低コストでの開業が可能 |
ECサイトの変遷と現状
「ECは急速に拡大している」というイメージが定着していますが、実際にはどのような状況なのでしょうか?
2021年7月に経済産業省が発表した最新データを見てみましょう。EC市場の過去8年間の推移を示したのが、以下のグラフです。
出典:経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
2020年の日本国内の消費者向けECの市場規模は約19.3兆円で、前年の19.4兆円からほぼ横ばいになっています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、外出自粛によるEC利用が急増した結果、物販系のEC市場は急激に拡大しました。その一方で、旅行や外出に関連するニーズが縮小したため、サービス系の市場規模は大幅に減少しています。
8年間を通して見ると、ECの市場規模は8.1兆円以上拡大しています。
取引形態から見たECサイトの3つの種類
ECサイトの取引形態には、以下の3つの種類があります。
1. 企業対消費者のBtoC
BtoCとは、企業対消費者のビジネスを意味する言葉です。BtoCのECサイトとは、消費者向けに商品を販売しているサイトを指します。主要ECモールや企業の通販サイトなどがBtoCの代表例です。BtoCのECサイト市場は年々増加傾向にあります。
24時間好きな時にどこにいても商品を購入できるECサイトは、消費者にとって便利で魅力的なものです。同じ商品や類似商品を販売するECサイトが多いので、価格やサービスを比較した上で購入できます。販売する側は、集客や販売促進活動に取り組み、競合サイトとの差別化を行う必要があります。
2. 企業対企業のBtoB
BtoBは、企業対企業のビジネスです。BtoBのECサイトでは、企業が他の企業へ商品やサービスを提供します。各種コミュニケーションやマーケティング関連など、ビジネスに必要な商品やサービスがインターネット上で提供できるようになったことで、BtoBのECサイトは急増しています。
消費向けのECサイトと比べ、BtoBのサイトは商品単価の高さ、注文数の多さが特徴です。
3. 消費者対消費者のCtoC
CtoCは、消費者対消費者のビジネスです。代表的なCtoCのECサイトには、フリマサイトやオークションサイトがあります。CtoCのECサイトでは、消費者が不要になった物品や販売したいサービスを掲載し、それを他の消費者が購入します。新品や未使用品、中古品、各種サービスなど多様な商品が取引されています。
CtoCのサイト運営会社は、消費者間の取引を仲介する役割を担い、取引発生時に手数料を徴収します。
構築方法から見たECサイトの5つの種類
ECサイトの構築方法には、以下の5つの種類があります。
1. ECプラットフォーム
ECサイトの構築・運営に必要な受注管理やショッピングカートの機能を提供するサービスを、ECプラットフォーム(レンタルショッピングカート、ASP)と呼びます。ASP・クラウド型のECとは、レンタルサーバを用意することなく、提供されたクラウドサービス上でECサイトを構築可能なサービスです。月額費用や初期費用がかからないサービスも多く、手軽にECサイトを構築できます。
ある程度の制限はあるものの、サイトの機能やデザインを柔軟にカスタマイズできる点も、ECプラットフォームの特徴です。
ECプラットフォームの主な特徴を、以下の表にまとめました。
項目 | 概要 |
費用 | 初期費用:無料~数万円、月額費用:無料〜数万円、売上手数料:3〜5% |
構築期間 | 1日~数週間 |
メリット | 初期費用を抑えられる、短期間で構築可能 |
デメリット | カスタマイズにある程度の制限あり、自社開発のシステムとの連携が困難 |
2. ECパッケージ
ECパッケージとは、ECサイト構築に必要な機能をパッケージとして提供するサービスです。代表的なECパッケージは、通販サイトや家電量販店などで購入できます。
ECパッケージの特徴をまとめたのが、以下の表です。
項目 | 概要 |
費用 | 開発費用は数百万程度が目安、運用コストが必要 |
構築期間 | 数カ月程度が目安 |
メリット | 基本機能が用意されている、開発後のサポートあり |
デメリット | 初期費用や改修費用が高い |
3. オープンソース
オープンソースとは、プログラムのソースコードがインターネット上で公開されている、無料のソフト・パッケージを使ってECサイトの構築・運営をする方法を指します。ECパッケージと同様、カスタマイズや機能拡張がしやすい構築方法です。
オープンソースの特徴をまとめたのが、以下の表です。
項目 | 概要 |
費用 | 初期費用不要、開発費用は数百万円程度が目安、運用コストが必要 |
構築期間 | 数カ月~半年が目安 |
メリット | 初期投資を抑えられる、自由にカスタマイズできる |
デメリット | 運用コストが高い、セキュリティ対策が必要 |
4. フルスクラッチ
フルスクラッチとは、既存のソースコードを使わずゼロからECサイトを構築する方法です。自社の希望や条件に合ったECサイトを構築できます。
フルスクラッチの主な特徴を、以下の表にまとめました。
項目 | 概要 |
費用 | 莫大な開発費用が必要 |
構築期間 | 半年~数年程度が目安 |
メリット | どのような要件にも対応可能、自由なデザイン |
デメリット | 初期投資が莫大、開発期間が長い、定期的なリニューアルが必要 |
5. ECモール
ECモールは、多くのECサイトを集めた大規模通販サイトです。ショップ数や商品の種類が豊富で、アクセスするユーザーが非常に多いという特徴があります。サイトの開設や運用に必要な機能を提供しています。
ECモールの特徴をまとめたのが、以下の表です。
項目 | 概要 |
費用 | 初期費用:0〜数万円、月額費用:0〜数万円、売上手数料:売上の0〜15% |
構築期間 | 構築不要ですぐに利用できる ※1週間程度の審査が必要なケースあり |
メリット | 集客しやすい、専門知識が不要 |
デメリット | 価格競争が起こりやすい、差別化が図りにくい |
主なECサイト構築支援サービス
ECサイト構築に利用できる主要サービスの概要を、種類別に紹介します。
ECプラットフォームおすすめ5選
多くのECサイトに利用されている、代表的なECプラットフォームの概要を紹介します。
1. Shopify
Shopifyは、世界175カ国で170万のネットショップが利用する、世界最大級のECプラットフォームです。初期費用が不要で、越境ECに適した機能が豊富な点などが主な特徴です。電話とチャットでのサポートが日本語に対応していない(メールでのサポートは日本語に対応)点には注意が必要です。
2. MakeShop
MakeShopには月額11,000円と55,000円の2種類のプランがあります。初期費用が発生しますが、取引手数料は無料です。
3. カラーミーショップ
カラーミーショップには、無料プラン、月額3,300円と7,945円の有料プランが用意されています。
4. BASE
BASEは、ECサイト初心者をメインターゲットとするECプラットフォームです。利用料金無料で注文ごとに決済手数料とサービス手数料が発生します。
5. STORES
STORESには、月額2,178円の有料プランと無料プランがあります。有料プランでは独自ドメインの取得、決済手段のカスタマイズなどが可能です。基本的な機能はいずれのプランでも利用できますが、決済手数料が有料プランでは3.6%、無料プランでは5%となります。
ECパッケージおすすめ3選
機能やサービスが高く評価されている、3つのECパッケージの概要を紹介します。
1. ecbeing
ecbeingは、多様な業態の企業が利用するECパッケージです。導入実績は1,400社以上に上ります。
2. EC-ORANGE
EC-ORANGEは、発表以来15年にわたってサービスを提供しているECパッケージの代表格のひとつです。自由度の高いシステムによって、ECサイトの自社開発を可能にしています。
3. Bカート
Bカートは、BtoBのために開発されたECパッケージです。BtoC向けのサービスでは対応が難しいシステム要件にも対応しています。
オープンソース おすすめ3選
利用する企業の多い、3つのオープンソースの概要を紹介します。
1. EC-CUBE
EC-CUBEは、カスタマイズの自由度が高いオープンソースです。セキュリティや集客用のサービスと提携できます。
2. Welcart
Welcartは、日本初のWordPress専用オープンソースです。WordPressサイトにWelcartプラグインを追加し、ECサイトを構築します。管理画面がWordPressと共通で、サイト運営の負担を軽減できます。
3. Adobe Commerce
Adobe Commerceは、EC用の機能を豊富に備えたオープンソースです。事業規模や業態を問わずECサイトの構築に活用できます。
ECサイトの構築・運用を外部委託する際の注意点
本項では、ECサイトの開設や運用に関して外部委託を検討すべき業務、委託先を選定する際の留意点を説明します。
ECサイトの開設でサポートが必要となる主な業務
ECサイトを構築・運用する上で、外部のプロに委託することの多い業務には、以下のものがあります。
- ショップのコンセプトや販売戦略の立案
- ECサイト構築に利用するサービスの選定
- サイト構築
- サイト運用のサポート
- SEOやSNS活用などの集客対策
こうした業務の中に、自社での解決が難しい課題がある場合は、ECサイトの構築・運用に精通したプロへの相談を検討しましょう。
構築や運用サポートの委託先を選定する際のポイント
ECサイトの構築や運用改善を社外に依頼する際は、以下の3点について慎重に確認し、自社の課題解決に適した委託先を選びましょう。
- ECサイトの構築・運用に関する専門スキルと実績を有している
- 費用や作業日程などの条件が、希望と合致している
- サイトで取り扱う商品、自社の業界に関する知識を持っている
制作会社やフリーランスを複数ピックアップし、自社の希望や条件に合ったエキスパートを選定してください。
ECサイトの種類を理解して自社のニーズに即したECを実現しましょう
本記事で取り上げた、ECサイトに関する重要点は以下の通りです。
- 販売方法や集客など、ECサイトには実店舗と異なる特徴が数多くある
- ECサイトの取引形態にはBtoC、BtoB、CtoCの3つの種類がある
- ECサイトの構築方法は、ECプラットフォームやECパッケージなど5種類に分けられる
- サイト構築に利用できるサービスには、機能や料金などに大きな相違がある
- ECサイトに関する課題は、ECサイト構築や運用に精通したプロに相談すべき
以上のような点を確認し、自社が検討しているECサイトの特徴や目的を明確にした上で、サイト開設に向けた準備を進めてください。準備段階で疑問や悩みが生じた際には、ECサイトの構築や運用に精通したランサーズのフリーランスへの相談を検討しましょう。
