ロゴやWebサイト、チラシなどを作成する際にこだわり抜きたい色づかい。カラーコーディネーターが考える、色彩心理の常識と固定観念の打ち破り方についてご紹介します。赤は元気な印象……、食品に青はふさわしくない……、金色を使えば高級感が出る……。どこかで見聞きしたイメージだけではなく、正しい色づかいについて考えてみましょう。

カラーコーディネーターが考える色彩心理
色彩心理は本当に使える情報なのか? 私はカラーコーディネーターとして販売促進に関わっていますが、そもそも私が色に関する勉強を始めたきっかけはその点に多いに疑問をもったからです。
色には人の心と身体に影響を与える力があると言われており、そのことを色彩心理といいます。最近はその手の書籍が沢山出版され、一般の方でも一部の色彩心理のことはご存じであることが多いです。しかしながら、それが絶対的に正しいという訳ではありません。
例えば飲食に関しての色。代表的なおすすめ色は赤。反対に使わない方がよいとされる代表色は青。赤は交感神経を刺激する作用があることから食欲増進効果が期待できるため、つい追加注文をさせてしまうとも言われています。対して青は副交感神経を刺激するために食欲減退を促し、冷静さを取り戻すために購買意欲も減退。追加注文も期待できないとも言われています。
確かにそういう効果はあると思います。「大売出し」のときなどは店内を赤や黄の暖色系で活気と勢いを感じさせる雰囲気にされていて購買を促すのに適している色だと思います。しかしこれは絶対的ではないのです。それはなぜかということをこれからお話しします。
青は本当に飲食に使えない色?
例えば日清フーズのスパゲティソース「青の洞窟」シリーズのパッケージ。このシリーズは青が使用されています。水色ではなく濃くて青味の強い青、所謂ロイヤルブルー系です。しかしこのパッケージで購入をやめてしまおう、と思った方はあまりいないのではないでしょうか。
もし購入をやめたのなら、その理由は価格が他社より少し高めだというところだと思います。ここがこの商品の特徴の1つでもあるのです。確かに美味しいですが少しお値段は高めです。「美味しさと高級感」をパッケージで感じさせなければならない商品です。濃い青と合わせて使われている文字の色はゴールドです。この組み合わせ、どこかでみたことはありませんか?
例えばビール。サントリーのプレミアムモルツ(コクと旨みと香り、ミューズは矢沢永吉さん&竹内結子さん)、アサヒのプライムリッチ(最高級のコクが売り、ミューズは松下奈緒さん)など。ちなみにエビスビール(コクと旨み、ミューズは滝川クリステルさん)は完全ゴールドです。
高級路線が売りの商品はパッケージでも必ず高級感を出さなくてはいけません。そうでないと消費者を納得させることはできませんから。
当然ながらミューズも一定以上の人気と実績がある人物を採用し、決して安っぽいイメージにつながらないようにしています。特にビールの場合は「冷たさ」があるので余計に濃い青を使用しやすいということはあります。
ちなみに帝国ホテル東京やホテルグランヴィア系列の一部ホテルも濃い青とゴールド配色のロゴですが、ホテルのロゴをみているとゴールドの使用率が高いです。
是が非でも色彩心理を優先させて「この色はこの業界のサービスに向かないから」と色を省いてしまうのはもったいないこと。販売促進上、何を優先させるのか。それを軸として使用配色を決める必要があります。
実店舗での色づかいを考える
私は店舗リノベーションにも携わっていますが、最近は色彩心理をそのまま受け取って店舗のイメージカラーやクロスや建材選びにおいて最初から特定の色を忌み嫌う施主と出会うことが増えてきました。
赤やオレンジが飲食にマッチするのはよくわかりますが、そうしていると世界中の飲食店が同じような店舗カラーになってしまいます。もちろん店舗カラーやパッケージの話だけでなく、チラシやホームページの色使いも同様です。
ちなみに先ほどの青とゴールドの話ですが、この2色さえ使用すれば高級感はでるか、というと実はそう上手くいく話ではありません。字体の選択や余白の分量、デザイン性など決して色だけの仕事ではないからです。
パッケージでは見栄えがして、しかも一瞬で商品の特性がわかるようにしなければいけませんし、店舗はどんな雰囲気で何を期待できるのかが一瞬でわかるほうが入店しやすいもの。机上の空論ではなく、本当に使える専門的な知識はちょっと書籍を読んだくらいで手に入らないというところでしょう。
先入観を捨てた色選びが大事
色彩心理の定石は嘘ではありませんが、死守すべきものではありません。理解した上で一旦そこから離れてみると、意外なデザインやイメージの発見があります。カラーコーディネートを決めるということは、単なる「色決め」ではなく商品や企業のイメージを決定付けるものです。色彩心理を知ったうえで何を軸としたイメージにするのかを先入観なく考えていただきたいと思います。
もしそれが難しそうならプロに依頼してみてください。当然ながらプロに任せると自分で行うよりも費用がかかります。しかし自分で決定したことが間違っている場合、その損失を金額に換算すると相当な額になっていることでしょう。たかが色、されど色。色を変えるだけで同業他社と差をつけられる面白い自社イメージと出会うことになるかもしれませんよ。
