専業主婦のSOHO ~収入と税金の関係~
専業主婦のフリーランス参入
これまで専業主婦だった奥様が、在宅ワークでSOHOデビュー。順調なスタートを切って、次第に調子が上がってくると、「もっと、収入を伸ばしたい!」と思うもの。
でも、「自分で自由にできるお小遣い」のつもりが、気を付けないと、「思いもよらない所得税が!」「働くほど、税金が!」となってしまう可能性があるのをご存知でしょうか?
また、副業やほかの給料がない状態でのフリーランスには、税制上、経費の特例もあります。こちらは利用しないともったいない制度です。
専業主婦から新たにフリーランスに参入した場合の「収入と税金の関係」を以下にまとめていきます。
専業主婦がフリーランス収入を得た時の留意点
いま、在宅ワークが主婦に人気
「子供が小さいから仕事には出られないけど、自宅でこれまでのスキルを活かしたい。」「パートは無理だけど、お小遣い程度の在宅ワークならしたい。」
そんな主婦の皆さんにとって、パソコンやケータイで始められるちょっとした在宅ワークや、フリーランスの仕事は魅力が大きく「プチ稼ぎ」なんて呼ばれていて人気が高いようです。
また、結婚前に続けていた仕事のスキルを生かし、クラウドソーシングでフリーランスデビューをされる方もたくさんいらっしゃいます。家に居ながら、空いた時間を使って仕事ができる在宅フリーランスは、専業主婦に向いた働き方だといえます。
主婦がフリーランス収入を得たら
SOHOが快調で、どんどん売上が伸びていくことは、喜ばしいことですが、税金上は喜んでばかりもいられません。特に、これまで専業主婦だった場合、一般的な副業と違う事情があるからです。
そのため、一定以上の条件にあてはまっていないと「稼ぐほどに損!」という状況になりかねません。さらに、怖いことに、ご主人の手当が減額され、税金まで上がってしまう可能性もあるのです。
これを避けるためには、必要に応じて確定申告をして、払い過ぎを防ぎ、利益と税金のバランスを上手にとる必要が出てきます。
「SOHOひと筋!」なら、ぜひ利用したい「経費の特例」とは?
パートや正社員との掛け持ちでなく、フリーランス1本で年収を受けていた場合、フリーランスの業種によっては、税制上の「経費の特例」が受けられます。無職の主婦から在宅ワーカー1本になったフリーランスの場合、利用しないともったいない制度です。
これは、SOHOに代表される在宅ワーク(屋内作業)や、水道、電気の検針、集金、保険外交員など特定の仕事について適用されるもので、年間の経費総額が65万円に満たないときは、65万円までを経費相当額として差し引くことが認められるというもの。
つまり、フリーランス1本で仕事をしていた場合、年収が65万円未満だったら、「経費倒れで所得はゼロ」ということになります。
この特例は、副業の場合や、他から給料をもらっている(給与所得がある)人、所得の区分が、雑所得と報酬の両方ある人の場合は、条件が複雑になります。管轄の税務署に問い合わせてみましょう。
SOHOでも確定申告が必要になる場合
主婦の在宅ワークも、税制上は「報酬」または「雑収入」です。業務請負として源泉しない支払や、給与扱いで月間88,000円以下だから、と源泉しない依頼主ならば良いですが、外注扱いで報酬としてきちんと10%の源泉徴収をされている場合だと収入額に関係なく、確定申告しないでいると還付が受けられません。
また、源泉徴収をされていない場合でも、収入から経費を引いた残り(所得)が38万円を超えたら、原則として、経費を計上して確定申告をする必要が出てきます。
逆を言えば、所得38万円未満で、さらに、源泉徴収がされていなければ、申告をする必要はない、ということです。
収入が38万円未満の場合、税制上は所得ゼロと同じ扱いになります。一定以下の金額であれば、確定申告の基礎控除のほか、ご主人の配偶者特別控除も利用できます。
「配偶者控除って何?主人の給料は関係ないんじゃないの?」という方のために、次に、配偶者控除について詳しく解説しましょう。
配偶者控除とSOHO収入
専業主婦は税制上優遇されている?
専業主婦は、税制上は「無職」です。ですから、ご主人に扶養されている立場ということで、ご主人の収入からの控除が受けられます。
この控除には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2つがあります。一定の条件に適合していれば、両方を利用できるので、最大で76万円の控除が受けられます。具体的には、「奥様の収入がいくらであるか?」で利用できるかどうかが決まってきます。
配偶者控除や配偶者特別控除のメリットは?
奥様がフリーランスで収入があっても、ご主人が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられると、「所得税以外の税金の金額が下がる」ことになります。
会社員のご主人の場合、その分、所得が小さくなり、所得税・住民税が下がります。お子さんの保育料なども下がる結果につながります。
国民健康保険であれば、こちらも、当然下がります。税負担の面で見れば、特に負担なく、節税効果が得られるということになります。奥様の収入だけを見た場合は、上限がかかる状況になりますから、これはデメリットといえるかもしれません。
稼ぎ方によってはかえって損!
税金は、「絶対払わないといけないコスト」です。滞納には高額の延滞金が加算されますし、近年は、悪質な滞納が増えていることから、国や自治体も、差し押さえなどの処分に躊躇がなくなってきています。
おまけに、「所得が一定の範囲」で、「いくら課税されるか」の基準が決められています。住民税や国保税は、世帯単位でかかるものです。
そのため、「ご主人の扶養に入っていて、SOHO収入はあるけれど、税金はかからず、扶養には入れる」という所得金額範囲から、段階的に「配偶者控除が外れる」「配偶者特別控除が外れる」「住民税だけかかる」「所得税がかかる」「健康保険・年金に加入しなくてはならない」と、所得額に応じて、払うべき税金も増えていきます。
この「一定の範囲」というのが、かなり厄介で、ほんの、数千円でも、オーバーすれば課税対象になってしまうし、下回れば、非課税ということになり、随分と節税効果が変わってきます。
また、ご主人の会社によっては、配偶者手当などを給付している場合があり、奥様の増収によって、これが除外されてしまう場合もあります。必ずしも、「妻の増収=世帯収入の増加」にはつながらない面があるということです。
フリーランスになって間もないころは、稼ぎが増えることは喜ばしいことです。しかし、あまりに快調に飛ばしすぎると、翌年、思わぬ税負担を背負い込むことになります。
フリーランスの収入は安定していませんから、納税は多いのに、減収になった、という状況になると悲惨です。
安定的に仕事をもらえて、コンスタントに収入が得られるようになるまでは、自分で税金を払わなくて済む範囲に収まっている方が、節税面では楽だといえるでしょう。
※その他参考元:国税庁ホームページ記載情報および各種提供資料を参照のこと