知らないと損する? フリーランスが契約時に必要な「インボイス制度」を徹底解説

知らないと損する? フリーランスが契約時に必要な「インボイス制度」を徹底解説
フリーランスの働き方にも重大な影響を与えると考えられているインボイス制度は、かなり込み入った制度なのでわかりにくい情報や誤った情報が多数見られるのが現状です。今回は、インボイス制度についてわかりやすく解説した上で、フリーランスの選択肢と、契約する際の注意を税金情報サイト『マネーイズム』の編集部に解説いただきます。
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インボイス制度とは

インボイス制度は、2023年(令和5年)10月1日から始まります。しかし、議論が多く今後も中身や日程が変わるかもしれません。いずれにせよ、フリーランスの多くがかなりの影響を受けるでしょう。制度開始に備え、今一度インボイス制度の中身を理解して対応を考える必要があります。

インボイス制度は消費税を納めるための仕組みです。本記事では、税理士紹介25年の株式会社ビスカスが運営する税金情報サイト『マネーイズム』の編集部が、最初に消費税の仕組みについて解説してから、インボイス制度について解説します。

消費税の収め方 - 仕入税額控除

消費税は、買った金額に消費税率をかけた金額を最終消費者が納付する税金です。しかし、最終消費者が売り手になるかもしれないことや、作業の煩雑性を考えると、最終消費者が直接納付するやり方だとうまくいきません。

現実には、消費税は次のように納付されます。売買が行われるとき、売り手は売上の金額に、売上に消費税率をかけて算出される消費税額を加算した金額を請求します。売り手は消費税額分を預かり、期末になると、預かった消費税額の合計から、期間中仕入れたときに支払った消費税額の合計を差し引いた金額を納付します。これが「仕入税額控除」です。

商品は仕入れと販売を繰り返して消費者に届きます。仕入税額控除には、「売り手は自分で付け加えた付加価値額を買い手に知られることなく、付加価値分の消費税を請求して納付する」といった効果があります。

なお、2019年10月から開始した軽減税率に伴って「区分記載請求書等保存方式」が導入され、軽減税率対象品目と税率ごとに合計した対価の額を明記することになっています。仕入税額控除を受けるためには、この形式の請求書を保存する必要があります。

課税事業者と免税事業者

実は、すべての事業者が消費税を納めているわけではありません。前々年の課税売上が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます。これが「免税事業者」です。免税事業者以外の事業者が「課税事業者」と呼ばれます。

現状、免税事業者は消費者に対して請求した消費税を国に納めなくてもよく、免税事業者から仕入れた事業者は、自分が納める消費税を免税事業者に支払った分(免税事業者から仕入れた金額に含まれている消費税相当分)だけ控除することができます。最終消費者が負担した消費税の一部は免税事業者の所得となります。これが「益税」です。

インボイス制度による変更 ― 免税事業者から仕入れると消費税額を控除できなくなる

「区分記載請求書等保存方式」により、仕入税額控除を書類で処理する仕組みが導入されています。インボイス制度が導入されると、この仕組みがさらに強化されます。インボイス制度による最大の影響は、免税事業者から仕入れた課税事業者の消費税納付額が増加することです。

「適格請求書」が導入される

インボイス制度とは、仕入税額控除を「適格請求書」で処理する仕組みに他なりません。「適格請求書」とは、「区分記載請求書」をさらに強化した請求書です。適格請求書には、軽減税率の対象品目である旨、税率ごとに合計した対価の額、適格請求書発行事業者の登録番号、税率ごとの消費税額および適用税率を明記します。

適格請求書があれば、軽減税率と通常の税率の2つの税率が併存する状況にも簡単に対応できます。インボイス制度の開始後は、仕入税額控除を受けるために、適格請求書を保存して消費税を確かに支払ったことを証明しなければなりません。

免税事業者は適格請求書を発行できない

免税事業者は消費税を納付しないので、適格請求書を発行できません。つまり、インボイス制度の開始後は、免税事業者に発注する課税事業者は仕入税額控除を受けられなくなります。これは課税事業者の消費税納付額の増加を意味します。

仕入税額控除に関する経過措置

これは大きな制度変更なので、経過措置期間が設けられています。経過措置の期間中、発注者は、適格請求書がなくても、仕入れの段階で一定率の消費税を支払ったものとして控除を受けられます。

インボイス制度のフリーランスへの影響

現在、フリーランスの多くは免税事業者なので、インボイス制度が直接関わることとなります。

課税事業者に仕事を取られる

免税事業者は適格請求書を発行できないので、免税事業者から仕入れた事業者は仕入税額控除を受けられません。たとえば、原価率50%で仕入れた場合、納付するべき消費税は倍になります。こうした納付額の増加を防ぐべく、課税事業者に発注する流れが強まるでしょう。

報酬額が下がる

インボイス制度の開始後に、免税事業者がこれまで通りに請求すると、発注者はこれまで仕入れたときに支払ったとして控除される消費税分を、自分で負担しなければならなくなります。

消費税分を仕入先に転嫁することは、消費税転嫁対策特別措置法で禁止されていますが、受注できなくなることを恐れて免税事業者が自ら減額を申し出たり、発注者がなんらかの「合理的な理由」を設けて報酬額の引き下げを提案したりするかもしれません。

クラウドソーシングの仕組みが変わる

クラウドソーシングを通じて仕事をするフリーランスを考えてみましょう。クラウドソーシング業者は、自分が受注してフリーランスに仕事を発注するというシステムに移行することで、インボイスに伴う不利益を緩和しようとする可能性があります。

これにより手続きが簡単となり透明性が高まりますが、クラウドソーシング業者とフリーランスの間に問題は残ります。具体的には、責任が増大するクラウドソーシング業者は、フリーランスの選別を強め、消費税負担を減らすために報酬額を削減しようとするでしょう。

インボイス制度が導入されたときのフリーランスの選択

免税事業者であり続ける

替えの利かないフリーランスであれば、インボイス制度導入後も免税事業者であり続けて問題ないでしょう。しかし、適格請求書の発行にそれほどの負担を感じないのであれば、免税事業者であり続けるメリットはあまりないといえます。

売上はそのままで課税事業者になる

自ら課税事業者となり適格請求書を発行すれば、他の課税事業者に対する受注競争上の不利はありません。前々年度の売上が1,000万円以下の事業者に対しても、課税事業者になるための手続きがあります。この場合、適格請求書で消費税を請求し、その金額を自分で納めることになります。

売上を増加させて課税事業者になる

前々年度の売上が1,000万円を超えれば必ず課税事業者になります。課税されること自体は好ましくないかもしれませんが、稼ぎが増えたのですから、全体としてみれば、これが最も望ましい対応方法だといえるでしょう。

フリーランスが課税事業者になることを選択した場合にするべき手続きと契約時の注意

適格請求書を発行するためにフリーランスが課税事業者になることを選択した場合、課税事業者になるための書類と、適格請求書を発行するための書類を提出する必要があります。また、日々の請求は適格請求書で行い、トラブルを避けるために契約書に消費税の扱いを明記することが重要です。

「消費税課税事業者選択届出書」または「消費税課税事業者届出書」を提出する

免税事業者が課税事業者となることを選択した場合、税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。この書類は、適用を受けようとする課税期間初日の前日までに提出する必要があります。制度運用開始日である2023年10月1日に間に合わせるためには、2023年3月31日までに提出しなければなりません。

前々年度の売上が1,000万円を超えると課税事業者になる義務が生じます。この場合は、「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。

適格請求書発行事業者として登録する

適格請求書を発行するためには、課税事業者になるとともに、「適格請求書発行事業者」の登録を受ける必要があります。このための申請書は、2021年10月1日から提出できます。

適格請求書を発行する

納品後に請求する際、「適格請求書」を発行して発注者が仕入税額控除を受けられるようにします。

契約書に消費税の扱いを明記する

フリーランスにも「契約書」が必要です。あとでトラブルになることを避けるために、消費税の支払いについても契約書に明記しましょう。

まとめ

インボイス制度の導入は、免税事業者だったフリーランスにとっては逆風になります。反対意見も強く、期日までに仕組みが変わる可能性もありますが、早めに備えておくに越したことはありません。インボイス制度についてよく勉強して、制度開始後に慌てずにすむようにしましょう。

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