フリーランスが考えておくべきお金の自助努力の基本

はじめに
前回の記事ではフリーランスになった場合にサラリーマンの時とはどのような点で経済事情が変わるのかを説明し、フリーランスはサラリーマンよりも公的制度での「年金」と「万が一の際の保障」が減ることがわかりました。
今の時代、自助努力が必要なのはフリーランスに限ったことではありませんが、フリーランスはサラリーマン以上に将来(老後)の生活資金のための自助努力を考えていく必要があるでしょう。
そこで今回は、フリーランスならぜひ知っておきたい自助努力の選択肢をいくつかご紹介します。
フリーランスが活用したい退職金制度「小規模企業共済」
退職金という概念のないフリーランスは、「小規模企業共済」を利用して自分で退職金を準備することもできます。
小規模企業共済とは、個人事業の経営移譲や廃業などで必要となる生活資金を事業活動中に退職金として積み立てる共済制度です。加入できるのは法人役員、個人事業主、個人事業の共同経営者2名(配偶者や後継者夫婦など)です。
毎月の掛金は1千円~7万円まで、500円単位で自由に設定・変更ができます。掛金は、国民年金や国民健康保険料と同様に所得控除になり、受け取りは退職所得になります(退職所得は税金計算での控除が多く一般的に手取りが有利)。
フリーランスは資産運用で年金作り
日本の低金利下では、預貯金だけではお金が増えていかないということは今さら言及するまでもなく、資産運用をして老後に向けて資産形成を考えていくことが豊かな将来生活のために大事になってきます。
ここでは、国が用意している税制優遇策をご紹介します。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
まず押さえておきたいのは、通称「iDeCo」(イデコ)と言われる個人型確定拠出年金です。これは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選び、掛金と運用益との合計額を将来受け取ることができる私的年金制度です。
原則60歳にならないと受け取れませんが、個人事業主は上限月額6万8千円を掛金にでき、全額を所得控除にできます。また、運用成果は自己責任になりますが、投資運用で出た利益は非課税になります(通常は株式や投資信託の場合、利益の20%が課税されます)。
受け取り(給付)は年金か一括かを選択できますが、公的年金等控除あるいは退職所得控除の対象になります。掛金支払時・運用時・受取時と総合的に税制優遇が大きい制度です。
NISA・つみたてNISA
「NISA」又は「つみたてNISA」は、証券会社等でNISA用の口座を作りその口座で投資をして得た利益が非課税になる制度です。
NISAは年間120万円を非課税期間最長5年間までの合計額を、つみたてNISAは積み立て投資で年間上限40万円を最長20年間までの合計額を非課税で運用できます。つみたてNISAの投資対象は金融庁が定める一定の投資信託等に限定され、拠出時の非課税もありませんが、途中引き出しはいつでも可能です。自分で投資や資産運用を初めてみようという人の入り口として使うといい制度でしょう。
NISA制度は現在有効期限を定めた時限立法になっており、長期の資産形成に取り組むための利便性を高めるためにも法令の有効期限の定めがない恒久化が望まれています。
フリーランスが利用できる、年金の上乗せ制度
国民年金基金
「国民年金基金」は自営業者の年金の2階部分(サラリーマンでいうところの厚生年金)を担う制度です。掛け金の上限は月額6万8千円ですが、iDeCo加入者はiDeCoと合わせた上限額です。
iDeCoとの大きな違いは、iDeCoは確定拠出制度と言い、自分で運用リスクを負いますが、国民年金基金は確定給付制度と言い、約束された予定利率での利回りを得られます。予定利率は2014年以降では年率1.5%になっています。
付加年金
国民年金の保険料に毎月400円を足して払っておくと、年金受け取りの年額が200円×付加保険料の納付月数分だけ増える「付加年金」という制度もありますので、必要に応じて検討しましょう。
フリーランスの万一の際の保障には民間の生命保険を
万一の際の保障でも、フリーランスはサラリーマンにくらべ不利になりますので、自分の業態や働き方、家族構成や収入・資産の状況、心配事などに応じ、民間保険の加入を検討するといいでしょう。既に何らかの保険に加入している人も多いかと思いますが、フリーランスになることで就業状況も大きく変わります。必ず見直しの機会を設けましょう。
特に遺族補償については、フリーランスの家族が受け取る遺族年金の額がサラリーマンの場合と比較して数千万円の差となることもありますので、配偶者、特に小さな子どもがいる場合には、家族のその後の生活費や教育費を確保するための備えをしっかりとしておくことが大切です。
ご参考までに、ご自身(38歳)、配偶者(35歳)、子ども(3歳)のケースで言えば、遺族厚生年金の有無で、生涯もらえる遺族年金の額はご自身の年収に応じて概算で以下のような差が生じます。
年収 | 300万円 | 400万円 | 500万円 | 600万円 | 700万円 | 800万円 |
差額 | 2,500万円 | 3,100万円 | 3,700万円 | 4,300万円 | 4,800万円 | 5,400万円 |
(配偶者は90歳まで生存するものとして遺族厚生年金の支給総額を遺族保障ガイドを参考に試算)
もちろん貯蓄や資産運用によってこれらに備えることもできますが、若いうちは容易ではないですし、十分な額を用意するには相応の時間がかかるでしょう。一般的な死亡保険の場合には、加入直後から希望額を備えることができるため、大きなリスクに対して小さなコスト(保険料)で備えることができます。この点は死亡保険ならではのメリットといえます。
自分が亡くなったときのことは普段あまり考えることはないかもしれませんが、遺族年金は状況に応じて受け取れる金額が違うため、一度シミュレーションしてご自身のケースを確認しておくとよいでしょう。
なお、民間保険は、所得税の計算では生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のそれぞれで各4万円までが所得控除になります。確定申告で控除を入れるのを忘れないようにしましょう。
おわりに
フリーランスという働き方は時間や場所・契約にとらわれずに多様で柔軟に働けるなど多くのメリットがある一方で、金銭面で受けるデメリットも多々あることをご理解いただけたでしょうか。
まずはその違いを正しく把握し、必要な対策を必要なタイミングで、賢く講じることが大切です。将来のお金の心配をできる限り減らし、本業に専念できる環境を整えていきましょう!