副業解禁の波をうけ、副業実践者は今なにを思うのか? トークブースセッションレポート

トークブースセッション「5つのテーマで話せる、副業相談トークブース」
7月3日に開催された副業について考えるイベント『【#アタラシイ時間】ドーナツを食べながら「副業」について考える!?~輪になって対話しよう!~』から、トークブースセッションの内容をお届けします。
5つのテーマを設けたトークブースセッションは、3つの副業者ブースと2つの副業解禁企業ブースとなり、(1)解禁したて企業、(2)成功している解禁企業ブース、(3)副業解禁企業者、(4)副業未解禁企業者、(5)副業解禁企業経営者と5つのテーマで構成されました。
本稿では後編として、副業実践者である『(3)副業解禁企業者:ヤフー株式会社 岡 直哉 氏』『(4)コクヨ株式会社 岸 健二 氏』『(5)副業解禁企業経営者:株式会社エンファクトリー 清水 正樹 氏』の3つのブースの模様をご紹介します。
3者それぞれの、これまでの副業経験や本業との時間の使い方、影響や変化などについて参加者とのセッションがおこなわれました。
『世の中に新しい価値を生み出し文化を創る企業。未来が見える宿泊体験。暮らす・泊まる・働く・遊ぶ テクノロジーが進化し全ての境界線がなくなっていく時代 暮らすように泊まり 遊ぶように働き 働きながら旅する ここはそんな未来のライフスタイルを切り開く世代のためのホテル』をコンセプトにしたホテルや、ソーシャルアパートメント、ホテル、カフェなど様々なライフスタイル事業を手掛ける。
※前編:副業解禁企業の人事が語る、副業のリアル。トークブースセッションレポート
副業解禁企業者ブース:岡 直哉 氏(ヤフー株式会社)
ヤフー株式会社
IDサービス統括本部 マーケティング&コミュニケーション本部
コミュニケーションデザイン室 兼 ブランドマネジメント室
1989年神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業後、ヤフー株式会社に就職。現在も正社員として勤務する一方で、休日に複業としてランサーズで働いている。ランサーズを始めた理由は、デザインスキルの向上のため。ランサーズで得た報酬で、結婚式をあげられたとか。社内では「Lancers Wedding」と騒がれているとの噂も。
<自己紹介>
岡 直哉 氏(ヤフー:以下、岡):ヤフー株式会社で、デザイナーとして働いています。2013年に入社して、今年で5年目になります。会社では、全体のプロモーションやCM周りのデザイン、ディレクションなどを主に担当しています。
副業は、3年ほど前からはじめました。ランサーズでロゴのデザインやサイトデザインをおこない、いまに至るといった感じです。
副業後の変化ですが、副業で得た収入は普段使う口座とは別にして、手をつけない状態にしていました。副業でお金を貯めて結婚式を挙げたというのが、一番大きな変化かなと思っています。
参加者1:副業と本業のモチベーションの持ち方に違いはありますか。副業するモチベーションというのはいったいどういうところなんでしょうか。
岡:副業のモチベーションは、はじめたころからいまも変わらず「腕試し」です。本業を週5日やっていて、土日でしか副業はしません。最近は子どもが産まれて、育児もあるので副業の時間というのは結構限られるんですね。
そこで、スキルアップだったり会社の中だけではできないデザインをしたくてやっています。結果的にお金がついてきたらラッキーぐらいの気持ちです。
本業と副業でやっている仕事が似ているので、副業で得た経験を本業にも生かせるんです。スキルが上がれば本業での評価も上がるので、いいループのなかにいるかなと思っています。
参加者2:たとえば、業務委託契約であったり様々な働き方ができるかと思いますが、今後、こういうスタイルで働きたいというような理想はありますか。
岡:いまの働き方をキープしていきたいなと思っています。副業は、個人事業主さんや小さな飲食店さんだったりアーティストの方とやり取りをして、結構自由にできるんです。
一方で、会社だと大きな金額の案件を担当できたり、使える額が全然違いますよね。その辺の違いが楽しいので、副業という働き方は維持していきたいなと思っています。
ただ、新しく何かサービスを始めてみたいなとも思っています。なにか1個自分でサービスを作ってみるとかは、やってみたいなと。
参加者3:単純に利益だけを求めない、といった副業スタイルが、今後もっと増えてくるのかなと感じています。この先、どのような働き方が増えてくるとお考えですか。
岡:昨今フリーランスや副業といった波がすごくきていて、人数も増えていると思います。そういった働き方をする人には、もっと働きやすくなるというか、融通が利くようになってくると思うんです。
アメリカなど海外に目を向けると、フリーランスの数もすごく多いですよね。日本でも増えてきています。なので、もっと、いまより働きやすく、生活しやすい世の中になるんじゃないかなと思っています。
ローンを組めなかったり、まだまだ整備されていない部分がいろいろとあると思いますが、そういうのも全部そのうちなくなるんだろうなと考えています。
チャレンジしたいものにチャレンジできるような世の中に、なってきているのかなという気がします。
参加者4:会社員とフリーランス、どちらの立場も経験されているなかで、若くしてフリーランスになることのメリット、デメリットになることはありますか。
岡:会社だけでやっている方より、実質3~4倍ぐらいの案件数をやっていることになるんですよね。その分、経験値もたまるしスキルも上がるので、のちのち経験が生きてくるんじゃないかなという気はします。なので、体力や吸収力がある若いうちに、なるべくチャレンジしてみるのがいいかなと思います。
あと、いまは副業をはじめるのにリスクがほとんどないんじゃないでしょうか。クラウドソーシングは、今日帰ってからでもできるぐらいですし、自分でお金を払うこともないので、すぐにはじめられると思います。
副業未解禁企業者ブース:岸 健二 氏(コクヨ株式会社)
コクヨ株式会社
ファニチャー事業本部 販売マーケティング部 / Sound Artist
2004年4月にコクヨ株式会社に入社。上海での営業を皮切りに、流通再編戦略立案、大手物流会社での物販事業立ち上げ支援を経て、2012年からはオフィス家具・公共家具等の製造販売及び差様々な空間構築を手掛けるファニチャー事業本部にてデータを活用した顧客マーケティングを担当している。そのかたわら、2011年ごろより音楽制作を始め、2014年より海外の仕事を受け始める。2015年からは各種イベント、テレビ番組などへの楽曲制作を開始。得意なのはフワフワとした浮遊感を持つ音楽。
<自己紹介>
岸 健二 氏(コクヨ:以下、岸):普段はコクヨで働いています。2004年に入社して、営業や企画などを経験しました。現在はファニチャー事業本部にてデータを活用した顧客マーケティングを担当しています。
私の場合、もともと副業というのを意識したわけではなくて、趣味で7年ほど前から音楽を作りはじめました。それをたまたま、音楽系のSNSでシェアしていたら、海外からこういう音楽を作ってくれないかといった依頼がくるようになりました。
一番最初は、チリにある大学のプロモーションビデオの音楽だったんです。最初はあまりお金をいただくという感覚がなかったため、「いいよ、使って」みたいな感じだったのですが「いや、ちゃんとお支払いしたい」というお話をいただいて。趣味の延長ではありましたが、お金をいただくようになると意識が変わりますね。
あとは普段、自分が作らないような音楽も作らなくてはならないので、いろいろな脳を使うんです。そういったところが本業にも生きてきて、様々なアイデアが出てくるようになったかなと思います。
参加者1:趣味でやっていたものが仕事になると、自分の好きなものだけを作っているわけにはいかないとおっしゃいましたが、いままで楽しくやっていたのに、仕事として請けるようになって、違うな、つらいなといった気持ちはなかったですか。
岸:正直、つらくなることもありました。でも、クライアントさんの要望に応えたい気持ちが勝りますね。たとえば、アイドル系の音楽も最初の頃は結構やらせていただいたんですが、オタクと呼ばれる方々の心理状況などさまざまな勉強をしました。好き嫌いではなく、良い面を見ることを自分で意識的にしていましたね。
参加者2:お勤め先で、副業に対しての意識がちょっとずつ変わってきた背景というのは、どういった要因があったんですか。
岸:私が今いるファニチャー事業本部というところは、まさに、場を通じて働き方を変えていこうという部署なんです。本来的には、働き方改革をまさに推し進めるような事業部です。
副業という働き方をみんな認識しながらも、なかなか個人に目が向かない。でも、働き方改革って実は、どれだけ従業員の生産性を上げるかとか、働きがいを与えるかとか、そういうものとセットだったりするじゃないですか。
やっと個人に目が向いてきて、従業員のエンゲージメントを高めていく、つまり従業員満足度を高めていくみたいなところが、人事部の中でも関心事項になってきたんだと思います。そういった流れの中で、副業のあり方をそろそろ見直さなくちゃいけないなという考えも生まれてきたのではないでしょうか。
参加者3:今後、より副業を解禁する会社が増えていくべきなのかどうか、どのようにお考えですか。
岸:ハッピーな副業だったら、どんどん広がっていったらいいなと思います。でも、結構苦しい副業をしている方もいるんです。
対価を得るところばかりに目がいってしまうと、やっぱり苦しんでしまう人もいる。それでも、それをモチベーションに頑張っている人もいるので、それ自体が単純にいい悪いじゃないとは思いますが。
個人的には、別に趣味じゃなくても、自分が得意としているものをどれだけ本当に磨き上げていくのかというところから、副業にいったほうが成功する確率も高いのかなと思います。
自分の居場所が、会社以外にもしっかりとできると本業に対しても余裕が生まれてくるので、そうするといい具合に肩の力が抜けて、本業もうまくいきだす。本当に不思議なシナジーが生まれるので、そういう方が増えていけばきっと、日本も良くなってくるんじゃないかと結構本気で思っています。
ソーシャルアパートメント住人副業ブース:清水 正樹 氏(株式会社エンファクトリー)
株式会社エンファクトリー
執行役員副社長
1986年千葉県生まれ。大学卒業後、株式会社オールアバウトに入社、メディア運営・EC事業の立ち上げなどに携わる。2011年、同社から分社新設した“専業禁止”を謳う株式会社エンファクトリーへ入社、同社で副業第一号社員として合同会社flascoを設立。現在は、株式会社エンファクトリー執行役員副社長、株式会社ロベリア取締役、合同会社flasco代表社員、そして株式会社飼育係代表取締役社長としてパラレルな活動を行っている。
<自己紹介>
清水 正樹 氏(エンファクトリー:以下、清水):清水と申します。本業は株式会社エンファクトリーという会社で働いています。本業が実は、もうひとつあって、エンファクトリーが出資をしている、全国に100店舗ほどあるシニア向けの洋服のお店にも少し携わらせていただいています。
副業では、自分で立ち上げて代表をやっている会社がふたつあります。ひとつは、ITの会社です。ネットショップで何か商品を買うときに、ラッピングをするようにメッセージカードを簡単に作れますよ、付けられますよというサービスです。もうひとつが、渋谷にあるハリネズミとふれあえるカフェをやっています。
副業をすることで、自分の本業じゃない事業や世界に携わることができます。ある種、転職しなくても、常に新しいことができたり、新しいつながりができたりというのが挙げられます。
副業することで得られる新しい発見だったり、人とのつながり、何らか失敗も含めて良い思い出になっていますね。
参加者1:副業と本業とが、どちらもポジティブに影響し合うのが一番良いと感じています。ご自身の本業と副業で、どちらも良い刺激を与え合っているという実感はございますか。
清水:たとえばなんですが、本業はオンラインの事業がメインなんです。たとえば副業で店舗などをやると、オンラインのマーケティングみたいなものを生かしながら店舗をやって、うまく集客ができたりします。
店舗をやることによって、冷房が壊れちゃったらどうしようとかいろいろトラブルもあるんですけど、そういうところでまた本業で店舗運営をうまく回せるツールを作れるなみたいな感じでアイデアが浮かんだり。
事業テーマやポジションが変わったりすることによって、新しく発見が生まれてお互い良い効果が出てくることは往々にしてあるかなと思います。
参加者2:多くの事業に携わっていらっしゃいますが、どうやって時間を使っているんですか。
清水:週4でエンファクトリーに行って、自分の会社を週1くらい、夜のちょっとした時間や週末を利用してそのほかの事業にあたっています。
副業自体ってスキルの切り売りじゃないですが、要はどこからか仕事をもらって何かを納品をするようなタイプと、投資をして事業を作り、その事業をうまく回して成長をさせるみたいな軸があると思います。
最初のころは、コンサルをやって時間を切り売りして単価を上げていくやり方をしていたんですが、徐々にその資金をもとに自分の事業を作って回り始めたらほかの方に任せるなどですね。
最初の立ち上げだけ時間がかかるんですが、あとはそんなに時間をかけなくても回っていくようなものを中心にしてバランスをとっている感じです。
参加者3:事業を立ち上げる際は複数人でやったのか、それともご自身だけではじめたのでしょうか。
清水:基本的に僕ひとりでやったのはコンサルぐらいで、サービスを作ったり店舗を作ったりというのは、複数人でやっています。シェアハウスにずっと住んでいて、そこで飲んだ勢いで、これ面白そうだねといってはじめた事業が三つぐらいあります。
気の知れた仲間同士で集まり、事業を作って、かつ常にそこにみんないるので毎日でも打ち合わせできてしまうという意味であれば、メリットはあったかなと思います。
(おわり)