世界各地のフリーランスが、なぜドイツ・ベルリンに集まるのか?

世界各地のフリーランスが、なぜドイツ・ベルリンに集まるのか?
世界各地に住むフリーランスが、“住んだからこそわかったその国の魅力”を紹介するシリーズ。 今回は、かねてからクリエイティブ系フリーランスからの人気が高いと言われているドイツ・ベルリンの様子をお届けします。「アートやクリエイティブな分野に興味があるなら、ロンドンでもパリでもなくベルリンに行くべき」という声も耳にしますが、実際の生活はいかがなものなのでしょうか。
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穏やかさと刺激が共存する風土が、多くのフリーランスを魅了する

私は現在フリーランスとしてベルリンで暮らしています。どうしてベルリンを選んだかというと、今から遡ること約5年前、奥さんと2人でベルリンへ旅をしたことがきっかけでした。ベルリンは緑が溢れ、ゆっくりと時間が流れる。穏やかな雰囲気を持つ一方、アートシーンはとても活発でミュージシャンやダンサー、フォトグラファーやイラストレーターなどさまざまなアーティストが暮らしている刺激的な町。そんなベルリンに一目惚れしました。

実際に暮らし始めたベルリンには、アーティストを含め、多くの方がフリーランスとして会社やグループに所属せず活動しています。私もその中の一人。そんなフリーランサーが多く集まるベルリンでのワークスタイルについてまとめてみました。

フリーランスでもビザが取りやすい

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海外で暮らすことを望んでいる人は多くいると思うのですが、そこに立ちはだかる壁として「ビザの取得」があると思います。その点、ドイツにおいてビザの取得は他のヨーロッパの国くらべると比較的取りやすい国だと思います。

フランスやイギリスはとてもビザの取得に対して厳しく、取れたとしても国内で働くことを禁止されたり、いろいろな制限がつくことが多いそうです。私はベルリンでビザを取得するのに、写真や文章やデザインの仕事をすることを理由に申請しましたが、日本では長年実際にそのようなフリーランスの仕事をしていたわけでなく、会社員として勤めながらあくまで趣味の範囲内でやっていたに過ぎないレベルだったのです。

それでもきちんと資料をまとめて説明すると、スムーズにビザを取得することができました。ベルリンで暮らす他の人たちの声からも、私と同じようにフリーランスビザを取得し、音楽のライブをやったり、絵を描いたり、写真の撮影やデザインの仕事をされている方が多いようです。また多くのフリーランサーは一つの仕事だけでなく、「自分に出来ることなどんなことでも仕事に結びつける」人が多いように思います。

例えば音楽を演奏する人なら、ベルリンへ音楽を目的にやってくる人に対してガイドをするとか、またデザイナーの人は美術館やショップで店員のアルバイトをしながら家やカフェで仕事をされているようです。私の場合はまだベルリンに来て間もなく、現地での仕事の依頼はほとんどないのですが、クラウドソーシングを紹介してもらい、在宅でフリーランスとして仕事をしています。

家賃・物価が他国よりお手頃

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ベルリンはドイツの首都でありながらも、他の町に比べて物価がかなり安いです。近年、徐々に地価や物価も上がってはいるのですが、それでもまだ暮らしていける範囲に留まっているくらいです。やはり海外で暮らすうえで家賃や生活費は少しでも抑さえたいもの。ベルリンの場合(ケースにもよるかもしれませんが)多くを望まなければ広い部屋であっても低い家賃で借りることができます。

またベルリンにはWG(ヴェーゲー)というルームシェアして暮らす物件が多いです。ルームシェアを選べばさらに支出を抑えられますし、ルームメイト同士でお互いの情報交換ができたり、一緒に仕事をするチャンスに繋がったりします。私は現在奥さんと2人で暮らしていますが、WGで暮らしています。一つの物件をシェアする暮らしをこれまでにしたことが無かったのですが、実際暮らしてみるとルームメイトも素敵な人で、何不自由無く、それどころかとても楽しい時間を過ごす事ができ、ルームシェアでの生活スタイルが気に入っています。

お手頃なのは家賃だけでなく、物価についても同じです。もちろん毎日外食をしていれば食費も高くなってしまいますが、スーパーで食材を買って自炊して過ごせばかなり食費も抑さえられます。また、ベルリンのスーパーは、日本だと高級品といわれる美味しいワインやチーズなどの乳製品が、とても安く買えるので食卓も華やかです。

スーパーで買物するだけでもとても良い気分転換になりますし、日本では見たこともない商品があってとても楽しいです。ベルリンでフリーランスとして働いてみようと思われる方にはぜひ自炊生活をおすすめしたいと思います。

またフリーランスとして働く上で必要なWi-Fiもかなりベルリンは進んでいます。多くのカフェではフリーWi-Fi環境なので、パソコンを持ち込んでカフェで仕事をしている、いわゆる「ノマドスタイル」で働いている人をカフェでよく見かけます。またベルリンでは一杯のコーヒーだけ頼んで長くいても全然気兼ねすることもなく、多くの人がカフェで仕事をしています。このような環境が揃っているのも、フリーランサーが多く暮らす町の所以ではないかと思います。

ベルリンでの生活で大変なことは?

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海外と日本で生活文化や習慣が違うことは、もちろん想像していたのですが、中には「想像以上」なケースも多々あります。よく「ドイツは日本と同じでしっかりしていそうだから安心」ということを言われます。実際にドイツという国に住んでみると、もちろん中にはしっかりと仕事をしている人もいますが、どちらかいうとルーズな人の方が多いと思います。

例えば役所の手続き。海外で暮らすと市役所に行って様々な手続きをしなくてはいけないのですが、上手く事が運ぶかどうかは担当者次第によなりがち。同じ書類を持って行っても、それが許可されたり、拒否されたりします。また対応についても優しい人もいければ冷たい人もいて様々。ただどちらにしても日本のようにスムーズに取得できるようなシステムではなく、時間はかかっても上手くいけばそれで良し、という雰囲気です。

カルチャーショックを受けたもう一つの例は、荷物の配送です。これも荷物を運ぶドライバーによって対応は全く変わります。例えば私たちはアパートの5階に住んでいるのですが、重たい荷物を日本から送っても、5階まで運んできてくれる人はなかなかいません。一階や他の住人に荷物を預けたり、また不在届をポストにいれるだけというケースもあります。そして不在届を受け取っても再配達してくれるわけでなく、自分で荷物が保管されている場所に引き取りに行かなくてはなりません。私たちはそうやって重い荷物を大変な思いをして家まで運びながら、日本の宅配ドライバーさんの親切さを実感したのでした。

どの国に住んでもメリット、デメリットはそれぞれあるもの。ベルリンでも大変な面が無いと言ったら嘘になりますが、多くの人はフレンドリーで、気持ちの良い町です。なにより、物価が手頃でビザが他の国より手が届きやすいというのは大きなメリット。それに大変な経験も日本ではなかなか経験できないことと考えれば、何か自分にとってのこれからの糧になるのではないかと思っています。もしも海外、とりわけヨーロッパで暮らしてみたい方、そしてフリーランスとして活動したい方には、ベルリンはオススメな町です。

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