パブでリモートワークも、ランチにビールも当たり前?イギリス・ロンドンのワークスタイルとは

パブでリモートワークも、ランチにビールも当たり前?イギリス・ロンドンのワークスタイルとは
世界各地に住むフリーランスが、“住んだからこそわかったその国の魅力”を紹介するシリーズ。 第二弾は、“Brexit”の動向が気になるイギリス・ロンドンにフォーカス。在英20年のライターが紹介する、現地の多様なワークスタイルとは?
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在英20年の筆者が教える、リアルなロンドンの生活スタイル

「石橋を叩いても渡らない。」友人からそう揶揄されるくらい小心者の筆者でしたが、就職した当時の日本はバブル期で仕事も忙しく、月間残業100時間も当たり前。このまま仕事漬けの人生で良いのだろうかと疑問に思い始めた頃にバブルが崩壊。退職金倍付で早期退職募集があり、思い余って石橋を渡るどころか川にダイブして手を挙げてしまいました。

勤続13年後に無職となった私は、キャリアアップを目指してロンドンに語学留学。ロンドンは首都ながら公園などの緑に溢れ、古い建物に囲まれているせいか、時間がゆったりと流れている気がします。そんなテンポに慣れてくると再び日本で身を削りながら働く気になれず、その後は大学生、社会人、専業主婦の母親など様々な側面からイギリスを体験しつつ、今年で在英20年になりました。

イギリスの多様なワークスタイルあれこれ

“Work from home(リモートワーク)”は当たり前

Sports Day

子供の学校の運動会では、お母さんレースとお父さんレースがあり大いに盛り上がりますが、驚くのは参加するお父さんの数が多い事。平日なのに仕事は?と聞いてみると「今日はwork from home(リモートワーク)にしたのさ」という返答。イギリスの企業にとっては、今やリモートワークはごく当たり前の事のようです。生産性は落ちないものか、とも思いますが、多くの方は「1日の時間で見ると遅くまで仕事をする事もあるが、仕事以外の都合も自分で調整ができるので制約が少なく快適」と感じているそう。

女性も仕事を続けやすい環境

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例えば、パートタイムと言うと、日本ではステイタスも賃金も低い仕事という印象がありますが、イギリスではフルタイムで働いていた人が、一時期だけ同じ職場でパートタイムとして勤務することもよくあります。筆者の大学のチューターも、娘さんの入園までパートタイムで勤務なさっていました。

また、一つの仕事を二人でシェアするジョブシェアというワークスタイルもあります。ジョブシェアをする事によって仕事量を減らしつつキャリアを積み重ねる事ができます。他にも官民での様々な施策が働くお母さんをサポートしてくれます。

例えば、オーペアと呼ばれる住み込みで家事と育児を手伝う語学留学生や、公的機関に登録されたチャイルドマインダーは、お母さんが働いている間に子供の面倒を見てくれます。お母さんの収入が一定金額未満だと、国がチャイルドマインダーの費用を負担してくれます。小学校ではアフタースクールクラブ、学校が休みの時はホリデークラブが自治体や民間で開催されます。

日本でもこのようなワークスタイルやサポートが広まると良いですね。

「終身雇用」なんてありえない!?転職も独立もキャリアアップのため

イギリスでは、転職はキャリアアップのステップとして認識されています。終身雇用という観念が薄いため、離職する事にあまり抵抗感がないようで、起業する人やコンサルタント等のフリーランスとして独立する人が多いのも特徴です。実際、カフェや図書館でノマドワーカーが長時間ラップトップに向き合うのはよく見かける光景です。

お酒は飲むけどタバコは厳しい?ロンドンの生活の中心、「パブ」

昼からお酒は当たり前?ノマドワークするなら断然カフェよりパブ。

パブ

在宅で仕事をしていると、パソコンの前に座りっぱなしで行き詰ってしまう事もありますよね。私は、気分転換を兼ねて近くにあるパブに行きます。カフェと比べて日中は静かで、長居しても誰も気に留めないパブはノマドワークに最適。コーヒーを買ってフリーWiFiにアクセスすればセカンドオフィスの出来上がりです。

ところでこのパブ、普段は近所の人が来る程度なのですが、良く晴れた日に庭にある席は満員御礼の大賑わいに。パブの前の道も、駐車した車でぎっしりになります。スーツにネクタイを締めたどう見てもビジネスマンの人達が上気した顔で楽しそうにパイントグラスを傾け、中には、午後の仕事は大丈夫なのかしら…と訝ってしまう程にご機嫌な人も。

このようにランチタイムにビールを流し込むのは「リキッドランチ(=液体ランチ)」と呼ばれるそうで、仕事に差し支えるのでは?という杞憂は不要。辞書にも記載があるくらい、よくある事なのだそうです。

それもその筈、イギリスの法律では、男性ならビール1パイント半(約710ml)までなら車を運転しても良い事になっています。日本の大瓶ビールより飲んでも運転できるんですから、大したものです。お酒に強いイギリス人だからこそあり得るリキッドランチなのでしょう。

意外と遵法意識はある?思いのほか定着した「禁煙」文化

かつてパブのドアを開くと、店の奥が霞んで見えるほど紫煙が渦巻いていました。筆者のような非喫煙者は、パブの雰囲気もビールも好きだけれどタバコの煙に辟易して足が遠のいていたものです。

それが2007年に施行された「職場の室内禁煙例」により、オフィスばかりかパブやレストランも全て禁煙となりました。日本ほど遵法意識が高くないイギリスで、「果たしてこの新法は有効なのか」と半信半疑でしたが、始まってみればパブでもレストランでも、拍子抜けするほどタバコを吸う姿は見なくなり、代りにオフィスビルやパブの外でタバコを吸う人の姿は、もはや見慣れた日常風景になりました。

喫煙客のパブ離れに対抗すべく、レストラン並みの食事を提供するガストロ・パブ、子供の遊び場を併設したファミリー・パブ、スポーツ観戦に特化させたスポーツ・パブなど様々な形態のパブが生まれ、イギリスのパブはますます楽しく賑やかになりました。

パブだけを巡っても、イギリスのリアルな生活が垣間見れて面白いかもしれません。イギリスにお越しの際は、色々なパブを訪れて、現地の方の生活を間近で見てみてはいかがでしょうか?

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