フリーランスなら知っておきたい業務委託と消費税のしくみ

フリーランスなら知っておきたい業務委託と消費税のしくみ
業務委託契約と消費税の関係? 言葉を見ただけでも複雑そうでできれば避けたいキーワード……。しかし知らないばかりに外注を受注したランサー側とって不利益が生じる場合も。正当な業務委託契約を結ぶために知っておきたい消費税のしくみとは?
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業務委託契約が発注企業にとって有益になる消費税のカラクリ

外注先に発注する「業務委託費」は課税対象、正規雇用者に支払う「給与」は非課税。このキーワードでまず思いつくイメージは? 通常の人であれば「業務委託をすると余計に税金を支払わないといけないんだな。

それなら給与が非課税の正規雇用者を増やすべきだな」と考えるでしょう。しかし、この消費税の仕組みには企業(発注者)にとっては節税に、業務委託先にとっては負担が増えてしまうかもしれないという知られざるカラクリが存在するのです。

ですが、このしくみが存在するからこそ、仕事を外注に委託する企業が2014年の増税時に急増、フリーランスが急増した背景ともなりました。少し複雑ですがその理由を掘り下げて解説したいと思います。

業務委託費 = 経費計上として処理する節税対策

一般的に、会計処理上かかった費用を「経費」として計上すると、売上より預かった消費税から経費分の消費税を控除できます。

消費税8%の現在、売上高3,000万円の企業が預かった消費税は240万円ですが、仕入れ価格1,000万円 (消費税:80万円)、諸経費500万円(消費税:40万円)、業務委託費500万円(消費税:40万円)かかった場合、経費分の消費税160万円を納税額から控除することができます。

このため、240万円から160万円を差し引いた最終納税価格は80万円になります。一方、業務委託ではなく正規雇用者へ支払う「給与」として500万円を支払った場合、この給与は非課税となる為、控除できる消費税は仕入れ価格と諸経費分のみ。

最終納税価格は120万円となります。業務委託をした場合、給与扱いと比べ帳簿上のキャッシュが40万円浮くという現象が発生します。これが企業が行う節税のカラクリ。

悲しい現実……消費税の実質負担者は外注先に?

先ほど記載した数字の中の業務委託費500万円は40万円分の消費税をちゃんと別で計上している事が前提での話です。いわゆる業務委託費が税別の場合。

フリーランスに多い請負契約は要注意。話が大きく異なります。ある一定の予算を基にして業務委託契約を結ぶ場合。クライアントが500万円の予算を付けたとします。

この場合「業務委託費は税込み」とされるケースが多いからです。この場合、実際の業務委託費は463万円で消費税が37万円という内訳になります。

発注側であるクライアントは37万円の控除を得られる一方、受注者側は37万円を売上の500万円に掛かる消費税として課税処理しなければなりません。発注者側の立場が強いのは悲しくも世の常という所でしょうか。なんとも切ない現実です。

消費税増税時に起こるタブルパンチとその対処法

さらに2017年に予定されている消費税10%への再増税時にはフリーランスのみなさんは厳重な警戒が必要です。それは、クライアントから増税前と同じ税込金額500万円で同じ内容の仕事を依頼をされてしまった場合です。

増税後は実際の業務委託費は455万円と減少すると共に、消費税は45万円に跳ね上がるというダブルの負担がのしかかる事態に。そんな委託契約をしれっと提示してくるクライアントは委託契約後しれっと増税前よりも多い45万円の控除を得られるというカラクリも。

何やら負担を全てを業務委託先に押し付けている感が否めずザワザワしてきました。実際に2014年の増税時に起きたこのカラクリが派遣契約社員や非正規雇用が急増した原因となり、不公平感は社会に大きなストレスを作り出しました。

その為、国が「消費税転嫁対策特別措置法」という法律を設定。「増税後には業務委託費にも増税分の費用を上乗せする。」という外注先の冷遇を防止する救済的な法律です。

最近ではこういった法律を無視して不公平を押し付ける企業は「ブラック企業」として社会から非難を浴びる的になる世の中ともなってきていますね。

フリーランスは社会的弱者?

現在のワークライフの多様化が生み出すフリーランスの増加は、発注側の企業から見れば、多様な業務をその道のプロに個別に依頼でき、さらに節税対策になるという一石二鳥の理想的なビジネスモデルのように見えます。

しかし、単に企業の節税対策としていいように使われるだけでは「フリーランスは不安定な社会的弱者」という位置付けに留まってしまう可能性も否めません。

クライアントが求めている依頼をプロとしてフェアな条件の元受注し、お互いにとって「WinWin」の関係を築く事こそ今後のフリーランスが社会的地位を確立するポイントとなるでしょう。

消費税増税時に増える事が予測される「業務の外注化」はフリーランスにとって新しい仕事の開拓のチャンスでもあります。

前回の増税時に経験した社会的ストレスは現在では広く認知され、社会は「フェアな条件」を主張できるフィールドとなってきています。少し複雑ですが、消費税のしくみはクライアントとのフェアな関係を築く上でも正しく理解しておきたい制度ですね。

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