一粒で二度おいしい。ワークラウンジと知的活動が楽しめるシェアスペース【BUKATSUDO】
人気観光スポットの足元に広がる新しい空間
観光地として人気の横浜・みなとみらい地区。日本に現存する商船用石造りドックとしては最も古く、国重要文化財に指定されている「ドッグヤードガーデン」の地階にあるのが、「BUKATSUDO」です。
コワーキングスペースとレンタルスペースからなる広々とした空間は上質で、喧噪から離れて実りの多い時間が過ごせそうです。
それにしても高層ビルが立ち並ぶ場所に、なぜコワーキングスペースだったのでしょうか。同所のコミュニケーションマネージャー、川島 史さんにお話を伺いました。
『BUKATSUDO』ワークスペース情報 |
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■ 場所:横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号 ランドマークプラザ 地下1階 (みなとみらい線「みなとみらい」駅徒歩3分、JR市営地下鉄「桜木町」駅徒歩5分) ■ 料金 ・月額利用会員: 入会金:10,000円(税別)/利用料:月額 9,000円〜15,000円(税別) ※事務所登記・郵便物の受取サービスは行っておりません。 ・ドロップイン(一時利用)利用会員: カード発行料:300円(税別)/利用料:500円/時(3時間以上定額2,000円) ■ 利用時間:平日7:00-23:00・休日10:00-22:00 ※プランによって利用可能時間が変わります。 ■ 席数:コワーキングスペース60席、レンタルルーム(「BUSHITSU」:15部屋、会議室 (ROOM/BOOTH 約16㎡/約15㎡)・ホール(約120㎡)・スタジオ(45㎡)・ キッチン付きスペース)、コーヒースタンド ■ 電源:◯■Wi-Fi:◯ ■ 設備の特徴: ワークラウンジのみならず、大人の知的活動が楽しめるシェアスペースを完備。 |
「新しい公民館」のような場所を目指して
- ここは横浜の人気スポットですが、なぜこの場所にコワーキングスペースだったんでしょうか?
みなとみらいは9万8千人もの就業者がいる場所である一方、通勤ラッシュの人の流れを見ると、働くための場になっており、仕事帰りにふらりと集まる場所がないように感じられます。
ですから「BUKATSUDO」の運営は、場所貸しというよりも今まで繋がれなかった人たちが繋がれるような、「新たなコミュニティーをつくる」という部分に比重を置いています。
近隣で働く就業者の方も、近隣にお住まいの主婦の方も、アーティストの方も、学生時代の部活のように、色々な肩書の方が同じ趣味をもつ仲間として活動を始めてもらい、私たちはその活動の後押しをしていく、という感じを考えております。
- 横浜市芸術文化振興財団が支援する事業だそうですね。
ここは三菱地所さんの持ち物件なのですが、歴史的価値があるため保存対象になっている反面、アクセスが悪いんですね。だから事業者の誘致もしづらい環境です。
私たちはこの秘密基地っぽい雰囲気を逆手にとって、会員制の施設にすることで、多少アクセスが不便でも、自分だけの居場所として感じてもらえるのではないかと思い、BUKATSUDOを企画するに至りました。
ドックヤードガーデン活用事業は、横浜市芸術文化振興財団・横浜市・三菱地所・三菱地所プロパティマネジメントが取り組んでいる公民連携プロジェクトで、公募団体の中から弊社(株式会社リビタ)が選ばれました。
- リビタさんはこれまでにどんな事業をしてこられたのですか?
不動産のリノベーションです。住宅やマンションを造り替えたり、社員寮や団地をシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」に変えたりしています。震災以降、シェアやコミュニティーに関心が高まった影響でシェアハウス事業が好調なのですが、シェアスペース事業は言ってみればそこからの派生です。
原宿に1階がカフェやラジオ局、上階がオフィスやシェアアパートメントになっている「THE SHARE(ザ・シェア)」というリビタが手がけた複合施設がありまして、クリエイターが大勢住んでいるんです。
カメラマンの方が他の住人にカメラの使い方を教えて欲しいと言われ、カメラ教室を開いたり、お料理が得意な方が料理教室を開いたり、趣味を起点にしたコミュニティーが出来てきました。
シェアプレイスの住居の部分を切り離して、共用の部分だけを取り出したのが「BUKATSUDO」です。私たちが目指しているのは新しい公民館のような場所です。
ブランドづくりのために尖ったコンテンツを発信
- とは言え、ここは公民館のように万人が来るにはオシャレすぎる気もします。
すべての人に来て欲しいと思いつつ、30〜40代の高感度の人に向けて、はじめはかなり尖ったコンテンツを発信していました。東京からみなとみらいまで、わざわざ足を運んでもらえるだけの力のある企画を用意していました。
最初の頃は大阪や名古屋からわざわざ講座を受けにいらっしゃる方もいました。現在は地元横浜の人にも来て頂きたいので、コンテンツの幅を少しずつ広げていっています。
- 関係者の中に内沼(晋太郎)さんの名前がありますね。
内沼さんはブックコーディネーターで下北沢の「B&B」という毎日イベントを行っている書店のオーナーです。
- コンテンツを発信するノウハウがあると考えての起用ですか?
内沼さんにはクリエイティブ・ディレクターとして参加してもらっています。講座の企画だけでなく、企画の段階では空間や仕組みづくりのディレクションにも関わっていただきました。
-「BUKATSUDO」の利用者ですが、どの辺りから来る人がボリューム層といえますか?
利用者は横浜にお住まいの方が多いです。と言っても区はバラバラです。ネットや口コミで知っていただいているようです。週末になると、気分を変えるために東京から来る方もいますよ。
- それ、分かります。環境を変えないと飽きてくるんですよね。気分転換のためにコワーキングスペースを使うのもありだと思います。ところで利用者の職種に傾向はありますか?
SEの方やデザイナーさん、スタートアップの方が多いのも特徴で、1人~2、3人で来られる利用者が大半です。みなとみらいの就業者で自習室として使う方もいます。
一人一人の空間がひろく取れるので好評を頂いています。月額メンバーはレンタルスペースを2割引で使えるので、ワークショップの主催者が会員になるケースもありますし、その逆のケース(会員がイベントを開く)もあります。
- シェアスペースとコワーキングスペースのどちらに力を入れていますか?
とくに強弱はつけていません。ターゲットも違いますし。シェアスペースのイベントには、会員でなくても参加できます。会場としての利用も、一人以上会員がいれば可能です。
- 近隣の会社員の方が「BUKATSUDO」の朝食会に参加しているそうですが?
プレオープン当初(プレオープンは2014年の6月、本オープンは同年10月)、朝8時〜9時まで参加者みんなでつくってみんなで食べるという形でやっていましたが、現在は別の方の主宰で40分完結型ランチタイムのお料理教室をやっています。
「みなとみらいごはん部」という名前で、先生がいて教えて下さいます。時間が短いので調理はほぼほぼ済んでいて、“作り方を確認して食べる”という形ですね。
1食分持ち帰れるので、そのままそれを夜ごはんにできます。参加者はみなとみらいで働くもしくは近隣にお住まいの女性が中心ですが、「初めて『BUKATSUDO』に来ました」という方が多くて、今までの講座とはちがう拡がりを感じています。なかには少し離れた職場に勤務しているのに、わざわざ来てくれる方もいるんですよ。
- 利用者が集中するのはいつですか?
土日は忙しくなります。
仕事上のコラボよりも、むしろ趣味を通じたつながりを仕掛けたい
- コワーキングスペースというと利用者間のコラボがつきものですが、「BUKATSUDO」では協業は盛んですか?
コラボはあまり多くないですね。それは「BUKATSUDO」のコンセプトが創業支援の場ではないことと関係しています。コラボが起こるような仕組みづくりにはそれほど力を入れてはいません。むしろ趣味を通じたつながりに力を入れています。オープンから1年半経って部活も増えてきました。
毎週水曜日には「BUKATSUDO水曜酒場」という会をやっていまして、「ノー残業day」の水曜日に様々な部活を多くの方に体験していただく機会を設けています(※ お酒の会ではないそうです)。この会を通じて新しく部活に参加する方もいらっしゃいますね。
- まさに「新たなコミュニティーをつくる」という当初の目的通りですね。
コミュニティーができないと場として長続きしないんです。ふらりと行くと、いつもの仲間がいる。そんな場にできたらと思っています。
- 今後の抱負がありましたら、お願いします。
近隣の就業者や近隣住民の方にもっと来て頂きたいですね。立ち上げ当初はターゲットを狭めてブランドづくりをしていたのですが、徐々に広げて「新しい公民館」を形にしていきたいですね。
ここで活動している方が増えていますが、願わくばここを拠点にしつつも、もっと街に飛び出して、街を良くする活動が生れるといいなと思います。私たちはそれを応援していきたいと思っております。
(おわり)