比べて納得! 業務委託とバイトの「ココが違う」

業務委託契約は個人事業主・バイトは労働者
業務委託契約で働くフリーランスと、バイトの一番の違いは「法律上の立場」です。業務委託契約で働くフリーランスは個人事業主であり、対するバイトは雇い主に雇用されている労働者です。
「労働者=雇われて働く人」は労働基準法をはじめとする「労働三法」や、その他の法律があり、「仕事を与えてもらっている立場」である労働者(=バイト)が、「仕事を与えている」雇い主から不当な扱いや理不尽な仕打ちに遭わないようなルールを厳しく定めています。
一方で業務委託契約で働くフリーランスは個人事業主です。仕事を発注する側と受注する側の違いはあっても「雇われている」立場ではありません。
ですから労働基準法をはじめとする労働関連法の保護は受けることができません。個人事業主とクライアントの関係は、法律上の「雇用関係」ではありません。
業務委託契約は法律規定がある?
バイトのような「労働契約」は前述のように法律の明確な規定がありますが、実は業務委託契約にはこうした明確な規定がありません。現行法では法律の条文に「業務委託契約」という言葉が入っているものは存在していないということです。
実際のフリーランスにおける業務委託契約では民法の「請負契約」や「委任契約」を組み合わせたものが運用されていて、基本の内容は民法のルールに従って取り決めがなされます。
請負とは、「何かの仕事を完成させることで、報酬を得る」ことで、委任とは「誰かの代わりに、決められた範囲に限って権限を代行すること」です。
例えば「ホームページの作成」は請負ですが、「完成したホームページを管理者としてメンテナンス代行をする」のは委任です。「ブログに掲載する記事を一括して作成すること」は請負になりますが、「所定のブログアカウントへ投稿すること」は委任です。
業務委託契約は利便性が高いため、上記のように一つの作業の中に請負の要素と委任の要素が併存している場合、個々の仕事に合わせてカスタマイズされた契約が作られて運用されている実態があります。
業務委託契約ではバイトのような「指揮監督」はできない
個人事業主には、バイトを含む雇用契約のような枠組みがありません。業務委託契約ではクライアントはフリーランサーを指揮したり、管理下で働かせることはできないのが原則です。
業務委託契約では、クライアントとフリーランサーの関係はどちらも「事業主(または個人事業主)」です。支払われる報酬は経費を含んだもので、給与とは性格が違うお金になります。
報酬は、仕事をするためのコストである場所や用具、移動の費用などをすべて含んだものとして扱われます。仕事ぶりについても、場所や時間の規定がない場合は納期さえ守れば、いつどこでどのように作業するのかもフリーランサー側に一任されています。
納品する「成果物」に指示はできても「働き方」について監督する権限はありません。労働者は雇主との雇用契約に従って働くことが義務付けられています。出退勤、労働時間、最低賃金や社会保障などは雇用契約によって守られます。
雇主は仕事中の労働者の健康や安全に配慮して、ルールに従った働かせ方をしなければ罰せられる場合もあります。労働者が業務遂行に必要とする経費は雇主が原則、負担しなければなりません。
バイトと業務委託契約で変わる「契約書」
バイトと業務委託契約では、取り交わす契約書の内容も違います。バイトで取り交わすのは、「雇用契約書(=労働契約し)」で、雇う人と働く人(労働者)の関係を明記した内容になっています。
多くの場合表題は「雇用契約書」であり、雇主の責任が重い内容になっています。ここ数年「バイトに見せかけた業務委託契約」が問題視されており、バイトだと思っていたら業務委託契約になっていた、といった法律相談もあるようです。
業務委託契約では、「業務委託契約書」と銘打った契約書が用意されていることが多いですが、内容は雇用契約と比べて個々の契約によりかなりのばらつきがあります。
法律的に見ると「請負」「委任」のどちらか、あるいは両方を含んだ内容となっています。請負や委任は民法によって規定されていますが、業務の内容によってはその他の法律も関わる可能性があります。
従って業務委託契約の場合は、名称がなんであるかよりも、内容が関連する法律に抵触しているものでないか?の方が重要となります。
業務委託契約の注意点
業務委託契約を結ぶ際に注意が必要なのは「枠組みがないため、不当な契約になる恐れがある」という点です。雇用契約では労働基準法、労働契約法など雇用契約(=労働契約)に関する複数の法律があり、雇用契約で相互に確認すべき事項や「しなくてはならないこと」「してはいけないこと」の基準がある程度、明確になっています。
法律の枠組みがあることで極端な不公平が生じないような配慮がされており、違反した場合は罰則規定もあります。基本的に労働者は雇主より弱い立場であることから、労働者を守るため法律で規制を設けています。
業務委託契約では、こうした直接規制ができる枠組みはありません。そのため
・法律的には不法・違法・無効な条項が含まれる契約内容を気づかずに盛り込んでしまう
・どちらかに不当な契約内容になってしまう
といったリスクがあります。
契約は署名捺印すれば有効となってしまいますから、その前に内容が適切であるかをしっかりと確認する必要があります。必要に応じて法律の専門家に関わってもらうのも良いでしょう。