業務委託契約で働く上での社会保険について

すべて会社任せ状態からの脱却。社会保険は自分で手続きしましょう!
フリーランスで働く場合、ほとんどの人が企業や組織と業務委託契約を締結し、収入を得ていると思います。最近独立したばかりの人は、会社員時代と異なり社会保険についての知識がなく戸惑うことも多いのではないでしょうか。
会社員として勤務していれば、社会保険に関する面倒な手続きはすべて会社が行ない負担額も給与から天引きで処理してくれていたでしょう。ところがフリーランスとして業務委託契約中心に働くようになると、すべてを自分で手続きしなければなりません。
そこで、フリーランスになりたての人でもわかりやすく理解できるよう、業務委託契約で働く上での社会保険の概要や手続きについて解説します。
そもそも社会保険とは何を指すのでしょうか
社会保険については様々な定義がありますが、ここでは一般企業の会社員を基準として、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4つの保険制度を中心に取り上げたいと思います。
各保険の役割ですが、大まかに言うと健康保険は病気やけがで通院したり入院したりした際に適用される保険、厚生年金保険は将来受け取る年金を国が預かる保険、雇用保険は万一の失業時に適用される保険、労災保険は就業中のケガに対する保険です。これらの保険ですが、会社員ではなく業務委託で収入を得ている個人事業主の場合は適用されません。
そうなると、個人事業主は未保険状態なのでしょうか? 答えは半分イエス半分ノーです。健康保険と厚生年金保険については個人でも国がこれらの代わりとなる保険制度を運用していますのでそれに加入することになりますが、残りは自己負担することとなります。
また、健康保険は「国民健康保険」、厚生年金保険は「国民年金」(+国民年金基金)という名称になります。
業務委託契約は法律上では労働者として扱われません
従業員として働く場合は適用されている各種社会保険ですが、業務委託で働くフリーランスには適用されません。これは、別テーマ「業務委託とアルバイト、異なる3つのポイント」でも述べた通り、雇用契約の有無が影響しています。
仮に同じような業務を担当していたとしても、契約の違いが大きく影響してくるのです。従業員の場合は必ず会社が社会保険へ加入させることを必須としており、保険料も会社と従業員で折半あるいは労災のように会社全額負担となるのです。
これが個人で業務委託契約となっている場合は国民健康保険及び国民年金への自己負担での加入が必須となり、雇用保険については全くの対象外、労災保険については加入無しもしくは特別加入制度による任意加入及び保険料自己負担となります。
これは、開業届の有無にかかわらず個人で業務を受託し、収入を得ている限り個人で責任を負う個人事業主であり、個人が責任を負うという意味で当然ともいえます。
社会保険の手続きはすべて自分で行なう必要があります
では、次に国民健康保険と国民年金の手続きについて説明します。フリーランスとして独立、あるいは業務委託契約で働くようになったら速やかに住所を管轄する市役所(区役所)の窓口へ行き、手続きを済ませてください。
役所が勝手に手続きをしてくれることはありませんし、加入を促す電話がかかってくることもありません。ただ、だからと言って放置しておくと自分が損するだけです。保険証が無いと病院代は全額自己負担ですし、将来受け取れる年金額も減っていきます。
また国民健康保険の保険料を滞納し続けると自宅訪問対象となったり最悪の場合、財産の差し押さえにもつながります。収入が思うように上がらず支払いが苦しい場合には、まずは役所に足を運び相談してください。状況によっては減免措置が適用される場合があります。このように、すべて自分で足を運んで手続きをするのが、業務委託で働く場合の社会保険の基本となります。
業務委託契約で働くなら社会保険制度を深く理解しておきましょう
ここで例に挙げたのは、フリーランスとして業務委託契約で働く個人を対象としたものです。フリーランスとして独立した方はもちろんですが、規模が大きくなり会社組織にする場合、あるいは個人事業主としてアルバイト従業員を雇用する場合等にも、こういった社会保険に関する知識は必要となります。
私の場合、会社員としてある程度安定した収入を得ていた後にフリーランスとして独立し、前年の収入から激減した経験があります。こういった社会保険や税金は原則として前年の収入に基づいて算出されることが多いため、何度役所の窓口に通ったかわかりません。お恥ずかしい限りですが、減免措置を受けた経験もあります。
独立して業務委託で働くならば、複雑で難解なこれら社会保険に関する知識を、少しでも身につけて自分に有利になるよう活用してほしいと思います。