山間部でみつける出会いの拠点、飛騨高山のシェアードワークプレイス|co-ba HIDA TAKAYAMA

山間部でみつける出会いの拠点、飛騨高山のシェアードワークプレイス|co-ba HIDA TAKAYAMA
歴史ある祭りや朝市など、多くの観光客でにぎわいをみせる岐阜県高山市。飛騨高山ならではのムーブメントを育み全国へ発信する基地として、2015年4月この街初のコワーキングスペース『co-ba HIDA TAKAYAMA』が誕生しました。全国のco-baネットワークのなかでも珍しい山間部の拠点。一度時間を過ごしたら、きっとまた訪れたくなる格別の場所をご紹介します。
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まだ見ぬ面白い人たちの重なる場所、つなぐような存在でありたい。

高山市街地をつらぬく宮川のほとり。鍛冶橋のたもとから路地を少し下ったところに『co-ba HIDA TAKAYAMA』はあります。好きな席を自由に選べる全席フリーアドレス制。川の流れを見下ろせるカウンター席が特に人気です。

約半年かけてセルフビルドで改装した、古い資材がふんだんに活かされた店内。年代ものの家具に引き寄せられて、アンティークショップと勘違いして訪れるお客さんも多いとか。水量ゆたかな宮川の流れる音に包まれて、時間を忘れて集中できる環境です。

ワークプレイスなのにほっとする、落ち着いているのにワクワクする。多様なキーパーソンとの交流を重ねながら、新たなムーブメントの胎動を見守る住尚三さん、浅野翼さんにお話を伺いました。

co-ba HIDA TAKAYAMA』ワークスペース情報
■場所:岐阜県高山市本町3-7
■座席:会員制シェアードワークプレイス(全席フリーアドレス制)
■料金:1日利用会員 1day 800円 / 1/2day 500円(10-13時/13-17時)
     / 月利用会員10,000円  ※イベント利用は3,000円/h(時間応相談)
■営業時間:月〜土(日祝休)1日利用会員10:00〜17:00、月利用会員9:00〜21:00
■電源:◯  ■Wi-Fi:◯
■特徴:プリンター(10円~/枚)、プロジェクター、マイク&スピーカー、キッチンスペース完備。奥の白い壁面をスクリーンとして利用可能

震災後にUターン。十数年を経てつながった縁

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- お二人は地元の高校の同級生だそうですね。

(住尚三さん 以下:住)そうなんですけど、当時はほとんど知らなくて、ちゃんと会って話をしたのは2014年6月です。僕の家業が100年続く印刷会社で、かつて工場だった場所を使って何かしたいと考えていて。手始めに、壁をペンキで塗ろう!というワークショップをやったとき、地元で設計事務所を立ち上げたばかりの浅野くんに、友人が声をかけてくれたのがきっかけでした。以前テナントで入っていた居酒屋さんの内装のまま、僕がガーっと塗ったのを見て「ちょっと助けてやってよ、浅野くん」と(笑)。

- その再会までは、それぞれどう過ごしていらっしゃいましたか。

(住)僕は高校を卒業後、東京の大学を出て就職しました。20代半ばに一年間会社を休職し、17カ国を旅して帰国。まだしばらく東京で暮らしていたんですが、東日本大震災のとき電車が止まって家へ帰れなかったことや、田舎でのびのび子育てしたかったこと、自分が長男なのでいつかは家業を、と考えていたことが重なって、30歳を機に高山へ戻りました。

会社の1階の印刷工場だったスペースが空いていて、そこを使っていろんな人やアイデアが集まる場所をつくりたいという思いが漠然とあったものの、やりかたがわからない。とりあえず動きながら考えようということで壁にペンキを塗り始めたとき、浅野くんと再会しました。

(浅野翼さん 以下:浅)名古屋の大学を出て就職した設計事務所が、円頓寺商店街(名古屋市西区)のまちづくりに深く関わっている会社で、僕もまちづくりに興味を持ちました。震災後の現状を知りたくて東北を訪れたとき、「co-ba気仙沼」を計画中の人に出会って、そのまま設計施工を担当することに。約4ヶ月滞在しながら自分たちの手で、それまで見てきた職人さんたちの見よう見まねで「co-ba気仙沼」を作りました。

知らない土地でできるかどうかも分からないなかで、実際にやってみたら人がどんどん集まりはじめて、ムーブメントが起こっていって。復興をめざして集まる人たちの面白さや魅力、前向きなエネルギーの渦巻くような求心力を、当事者として全身で感じて、つぎは大好きな地元をそういう場所にしていきたいと強く思いました。そうしたら、ペンキを塗っていた住くんに相談を受けたので「co-ba飛騨高山をつくるのはどう?」と提案したのが始まりです。

他人ごとから自分ごとへ。「自分の場所」にしてもらうための仕掛け。

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- 開業資金はクラウドファンディングで集められたそうですね。

(浅)co-baをやろうと決めてから約3ヶ月後にオープニングイベントを開催して、それと同時にクラウドファンディングの募集が始まりました。地元ではまだ知られていなかった「コワーキングスペース」についての説明や、僕らがやりたいと考えていることを多くの人に伝えて理解してもらうために、クラウドファンディングはとても良いツールでした。二人の共通認識のすり合わせにも有効だったと思います。

(住)プロジェクト紹介ページの文章を自分たちで考えるなかで、めざす目標やストーリーを共有できたこと、なおかつFAAVOのサイトに載ることで広く宣伝できたのがありがたかったですね。目標額を達成できたのももちろんですが、それを見て、僕らの思いに共感してくれる人たちがたくさん集まってくれたのが何よりでした。

(住)例えば、ウェブサイトの写真は地元のプロカメラマンがご厚意で撮ってくださったし、ほとんどの家具類がいただきもの。ガラス窓も手元に集まったものを見ながらデザインを考えて、ドアは建具屋をやっている同級生が格安で提供してくれました。30歳をすぎると友人たちもそれぞれの業界で経験を積んでいて、いろんな職種のスペシャリストがいて仕事として助けてくれる。co-baを通じて同級生たちとなぜか会う機会が増えました。本当に皆さんのお陰で成り立っています。

- 施工は約半年かけて、セルフビルドで。

(浅)以前入っていた居酒屋さんの内装を解体するところから始まって、壁板も柱も使える資材はできるだけ再利用しました。あちこち塗装がまばらなのは、昔のままだからです。再利用を考えて、作られた順番を想像しながらその逆をやって壊していくのは頭も体力も使いますが、それを楽しめる仲間が集まってくれました。

基本的な設計は僕でも、細かいところは担当の人に決めてもらったので、窓辺のカウンターの端材を組みながら「ちょっと違うな」と一日中悩んでいる人がいたり(笑)。関わってくれたたくさんの人が、他人ごとでなく自分ごととして、自分たちの場所として感じられるように、オープン前からそれを形で表現したかったという思いがあります。

そうやってでき上がるものは一見ゴチャゴチャしても、なぜか統一感が生まれるというか、みんなが安心できる雰囲気がある。古い街で新しいものを興すにも、あるものをうまく活かして、価値を見出していくのがこれからの時代なのだと思います。

地元コミュニティを横断する、フラットでオープンな交流拠点に

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- 仕掛けといえば、ここで企画されるイベントも幅広いですね。セミナーだけでなく音楽ライブや菜園づくり、木工イベントなど多彩です。

(浅)まずはここを知ってもらって「なんだか面白そう」と興味を持ってもらいたいので、なるべくオープンな雰囲気で発信するようにしています。いろんな人がここで出会って、別のところでも仕事や交流が生まれたり、あちこちにムーブメントの種が派生していくキッカケの場になれたらいいなと。

(住)田舎のコミュニティはキュッと仲良くなる反面、他のコミュニティの人と関わりづらくなってしまうところがあるので、なるべくフラットで内輪感のない、誰でも来てもらいやすい雰囲気を心がけています。もちろん仲の良い人同士もいますがそこだけで固まってもらいたくないので、あえてジャンルを固定せずにいろいろなことをやっています。

高山市の合併10周年記念映画『きみとみる風景』をここで上映したときは、近所の母親世代の方がたくさん集まってくれました。友達が友達を連れてきたり、上の年代の方ともつながりが増えて年齢層が広がりつつあります。「まちづくり」とまで大げさではないですけど、僕らが住みたい街、楽しめる環境に自分たちでしていけたらいいですね。

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(浅)面白い人たちの重なる場所、つなぐような存在でありたい。ほかのコミュニティとつながることの可能性や面白さを、まだそれに気づいていない僕らより若い世代の人たちに提示できる場でありたいですね。co-baは全国ネットワークなので、東京や他の地域からもいろんな人が来てくれます。もっと地元の人たちと交流する機会が増えたら、この街にとってもきっといい影響があると思うし、まだ見ぬ面白い人たちに出会えることが今から楽しみです。

(住)最終的に目指しているのは、この場所から起業家や仕事が生まれて、例えば商店街の空き店舗などに入って、末長くビジネスとして成り立ってくれたら嬉しいですね。飛騨高山で何かやろうと思ったときは、ぜひここを拠点にして、試してみてください。

(おわり)

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