記事単価を150倍にした方法 | LIG編集長 朽木誠一郎の戦略的Webライティング

Webライティングで記事単価を上げていくためのヒントを探す
LIGブログ(月間600万PVを突破)の編集長である朽木誠一郎さん。今でこそ会社に所属して編集長の重責を担っているが、学生時代はフリーライターとして活躍なさっていた。駆け出しの頃は、報酬500円(しかもアマゾンギフト券!)や2,000円の仕事も。戦略的にライティングを進めた末、記事単価300,000円のライティングを手がけられるようになったそう。
手がけるコンテンツの内容と文字数が違うため、一概に比較することは馬鹿げていると分かっている。それでも、ひとつのコンテンツで得られる報酬が『2,000円→300,000円』と150倍に。フリーライターの成功例であることは間違いない。
朽木さんの体験を聞くことで、ライターとして不自由ない生活をしていくヒントが見えてくるのではないだろうか。教えて、朽木さん。どうやったら稼げるライターになれるのでしょうか?
フリーライターデビューは、1記事500円
―今はLIGさんに入社して編集長ですけど、フリーライターになった大学生の当時を振り返っていただきながら、どうやってライティングの単価を上げていったのかを伺いたいと思ってます。
「ハウコレ」さんってサイトがあるじゃないですか。今は1,000万PVとか成長をしていますけど、当時はnanapiさんみたいなナレッジサイトで。生活に役立つ情報を提供すると、500円分のアマゾンギフト券が貰えたんです。いくつか並行していましたけど、ライターとして一番最初の報酬は「ハウコレ」の500円だったように記憶しています。
―しかもアマゾンギフト券。生活費の足しにはならないですよね。本買って喜ぶくらいで。
なので、他のサイトでも記事を書いていました。例えばコラムを書いて5,000円っていうのがあって。企業の社内報に載せるためのコラムを投稿するサイトで、採用されたら5,000円で買って貰えたんです。選ばれなければ一円にもならないですし、どこの会社の社内報に使われたかもわからないっていう。
そういう仕事をWebで探して、コツコツ投稿していました。当時、2011年くらいなんですけど、ライターになりたいと言っても、なかなか仕事は見つからない時代です。今でこそ誰でもライターになれるなんて揶揄されてますけど。
―数百円だとしても、ライティングで簡単に稼げる時代ではなかったですよね。そういう単価の低いものから、当たれば買ってもらえるような記事を、コツコツと書き続けていたと。
そうですね。コラムで言えば、10本書いて4本採用される感じ。その仕事で役に立ったと思えるのは、どうして採用されなかったのかを考えたことですね。「どうすれば載るだろう」「どうして載らなかったのか」を考えるようになるんです、やっぱり採用されないと悔しいですから。
―数打ちゃ当たるみたいなところもあるかと思うんですが、もう少し戦略的にやっていくのは大切ですよね。月に10本書いたとして、4本だから2万円。生活していくにはやっぱり厳しいですね。
もちろん生活できないっていうのもそうなんですけど、自分が憧れていたライター像とかけ離れていたので、「このままではダメだ!」て思って。『ハウコレ』に書いた記事を持ち込んで営業しました。「ライター募集」がWebで少しずつ出てきたところだったので、何社かに持って行きました。そこで採用してくれたのが大手出版社のデジタルコンテンツを制作する部署。これが初めてのライターとしての営業活動になります。
フリーライターが記事単価を上げるには、戦略が不可欠
―それも1本あたりの定額?
そうです。今でよく言う1本2,000円。採用してもらったのが恋愛コラムサイトで、そこに月30本を目安に書いてました。30本っていうのも、基本的に書いた分だけ買い取ってもらう感じなので、自分で「30本書けます」って言い切る。
―いきなり言い切っちゃうんですね。まだ駆け出しで実績もない中なのに。
当時はそこまで意識できていたわけではありませんが、業界全体を見通して、何を求められているのかを把握することが大事だと思います。当時は、掲載本数を増やしてナンボっていう時代だったんです。今もそうですけど、それこそクラウドソーシング使って大量の記事を作成する。メディアをスケールさせるのであれば「何でもいいからコンテンツを放り込め」という時代でした。
―そこも戦略なわけですね。大量の記事を求められているだろうから、まずは「いっぱい書けますよ」って売り込む。一応、『ハウコレ』で書いてたからポートフォリオはあったわけで。
そうですね。駆け出しのライターさんになにかアドバイスをさせていただけるとしたら、すごく当たり前で地道なことかもしれないけど、相手のニーズを理解して、そこを売り込んでいくのはひとつじゃないでしょうか。
僕の場合だと、本数本数って言われてたから「いっぱい書けます」「月に30本出します」と宣言する。まだ名前も売れてなくて、ある程度は技術に自負があるけど実績がないので「書きます」「いっぱい書けます」っていうのが一番だと思います。「それなりに質の高いものをいっぱい書けます」と言い切ってお仕事をいただく。もちろん、言ったら言っただけやりきらないとすぐにクビになってしまいますが。
―それによって実績がつくられていく、と。
10本くらい貯まったらポートフォリオにして、1段2段上のところに持っていくんです。そこでまた仕事させてもらって、更に上のところに持ち込む。「とにかくいっぱい書けます」だけだったウリが、「それなりに上手にたくさん書けます」「けっこう上手く、しかもたくさん書けます」に変わっていきました。
記事単価を上げたければ、アーティスト気分を脱しよ
―2,000円が5,000円になっても、やっぱり労働集約モデル。「100本書けます」は無理がありますよね。じゃあ、記事単価を引き上げないといけない。
そうです。ひとつは記事単価を上げていく、実績を持ち込んで。僕の場合はちょっとえげつないですが、実績を競合のメディアに持ち込んで、単価の交渉をすることもありました。少しずつでもステップアップしながら、単価を上げていく工夫は必要だと思います。
単価を劇的に上げたいのであれば、大きなステップとなるのは広告案件を書けるかどうかじゃないでしょうか。1本2,000円を抜けられない人って、自分の書きたいことを書く、アーティスト性を求めてるような気がします。それって、率直に言ってしまうと勘違いでしょう。何のためにお金を貰っているのか、どうしてお金を払ってもらえるのかを考えることが大事だと思います。
メディアだったりクライアントの課題解決をするために、広告費なり販促費の予算が下りてきて、一部がライターに流れてきている。つまり記事の目的を深いところで理解しなくちゃいけない。仕事やお金の仕組みが理解できないと稼げないと僕は思うんです。
―それはやっぱり、LIGブログの編集長として、発注側になったことでより強く感じていらっしゃるんじゃないですか?
そうです、そうです。メディアにはメディアの目的があって運営してますので。お金の流れ、もっと言えば経済を理解して、広告を上手く書けることが稼げるライターの生命線になっています。そこが分かってないと、どうしても一段上がれない。好きなことを好きなように書きたいならブログでやればいい。ライティングの仕事で好きなことだけ書こうとしちゃう人もいらっしゃるんですけど、厳しい言い方をすると、それをやっている間は単価が上がらないのではないでしょうか。
「いやいや宣伝なんかしたくないよ」って言うんだったら、「わかりました。じゃあブログでやりましょう」って言っちゃいます。あんまり優しくないんですけど……。プロのライターであるなら、そこは履き違えたらいけないんじゃないかと。
1記事30万円のフリーライターになれた理由
―広告案件なり、メディアのゴールを見据えた記事作成は、フリーライターの頃からやってたんですか?
配信を前提としたニュースサイトだと、サイト自体がバズるっていうのはあんまなくて、Yahooニュースに載ることがKPI。ヤフトピに何回載ったかでライターのランキングがつく。毎月ランキングが発表されて、下のほうになると外される環境でやっていたこともあります。
―怖いですね。数字を発表されて、ダメならクビ。
当時は学生だったんで、「ダメだったら就職しよう」みたいに逃げ道を用意していたところはあるんですが(笑)。今思うと、すごくシビアで勉強になりました。あのとき『KPI』とか言われて意味がわからなかったけど、すごく大事なことだったなって。今では自分が編集部の中で「KPIが…KPIを…」とか言うようになってしまって(笑)。
―(笑)。でもそれを理解して記事を書けるようになったから、単価が上がった。ぶっちゃけ、いくら位までいったんですか?
一番実入りが良かったのは30万円。記事というか、LPのテキストライティングです。覚えてるものだと、ある飲料メーカーのLP作成でした。
編プロさんなんかにも営業しに行って、自分に興味を持ってもらって「面白いね、じゃあ、LP全部任せるよ」って。そういう仕事をちょくちょくいただけるようになると、稼げるライターになれますよね。
僕はけっこういろいろな編集部に出入りするほうでした。ひとつの編集部だけで続けるって人もいて、それはそれでもちろんいいのですが、僕はいろいろな編集さんとお仕事をしてスキルを上げるスタイルだったように思います。30万円のLPも、もともとはそういう繋がりから紹介してもらいました。
とにかく初めは実績をつくる。実績ができたら、それを持ち込む。最初は実績のレベルを上げるために、手当たり次第に持ち込んでも良いかもしれませんね。少し自信がついてきたら、もう少し戦略的に、相手の意向に添うようなポートフォリオを持って行くとか。
編集者としてライターさんに記事を書いてもらう立場で考えたら、量を書けて、質も良くて、広告を分かっている人にお願いしたいです。つまり「自分の言いたいことだけ書きます」じゃなくて、記事がお金に変わる仕組みを理解している人。
それができれば、1記事2,000円のレベルを抜け出せると思います。
―30万円までは難しいかもしれませんが、いわゆる1記事2,000円を脱するためのヒントが、お話の中にたくさん詰まっていましたね。ありがとうございました。