有識者と一緒に考える地方創生2|産官学の連携・クラウドソーシングの普及で地域に活力を。

有識者と一緒に考える地方創生2|産官学の連携・クラウドソーシングの普及で地域に活力を。
実はたくさんの、地域におけるクラウドソーシング活用事例があるー。国家の課題である地方創生について、有識者によるディスカッションの様子をご紹介します。地域に雇用と新しい働き方を創出するために必要なことは何なのか。産官学それぞれの有識者や当事者が語る、具体的な取り組み成功例。
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【テーマ】
「産官学が連携することによって、地域に雇用と新しい働き方を創出していけるのか」
 
【パネラー】
 テレワーク協会 専務理事 井沢晃一さん
 東北芸術工科大学 デザイン工学部教授 松村茂さん
 NPO法人キッズバレイ 赤石麻美さん

 
【モデレーター】
 株式会社インテリジェンスビジネスソリューションズ
 ワークスタイル革命担当 家田佳代子さん
 
前回記事
有識者と一緒に考える地方創生1|地域と地域社会が抱える課題に解決策はあるのか。

実はたくさんある。地域におけるテレワーク・クラウドソーシングの活用事例。

 
家田:テレワークにはどのような活用事例があるのかというところで、まずは私のほうで、今の会社の事例のほうをお話させていただきます。
 
冒頭に、私の役職と言うか、担当の名前が出てきたのですが、ワークスタイル革命担当ということで、何やっているのか。昨今、ワークススタイル変革ソリューションというお話が出るようになりました。これは何をやってるかと言いますと、テレワークの仕組みを導入して、国も推奨している在宅勤務ができるようにしましょうと。3.11の震災のあと、やはり何か災害が起こったときには、自宅で仕事ができる仕組みが必要ですよねと。会社に通えなくなった場合にも、やはりテレワークの仕組みが必要じゃないかというところで、ここ1、2年でかなり企業でも導入も進んできております。
 
なぜここでわれわれが後発参入で入ったかと申しますと、団塊の世代の方々が、大量退職するというのが話題になったのですが、団塊の世代の方々が後期高齢者になる2020年以降、要介護者が増えてくるのではないかというところにきております。今、団塊ジュニア世代というのが37歳から43歳ぐらいの、一番働き盛りの人たちで、万が一、明日親が倒れてしまったら、実家に帰らなくてはいけないとか、会社は辞めなくてはいけないという、そういう人が相当数増えるであろうと言われています。
 
ここに対応するために、まずは導入のコンサルティングから始めて、テレワークのシステムを入れて、在宅勤務の仕組みを入れたあとに、なかなか労務管理がうまくいかなくて、途中で諦めてしまう企業が多いので、定着率の向上のコンサルティングまで一括してサービスをして、確実に在宅勤務できるようにしていきましょうというのが、今回始めたサービスになります。
 
私自身も、昨日まで元気だった親が突然倒れてしまって、「おまえ女なんだから仕事辞めろ」と、少し前でしたので、そういう言われ方をしました。たまたま実家が近かったので、そのまま会社に勤めることはできたのですが、例えば、九州や北海道から東京に出て来ている人は、選択肢が狭まる。クラウドソーシングということもありますが、在職しながら、在宅勤務をできる仕組みを導入してもらったり、サテライトオフィスをつくってもらったりという選択肢もあるんじゃないかということで、ソリューションを開始しました。
 
実際にお声をかけていたくのは、結構地方が多かったです。地方自治体と産業振興公社様、NPO法人様と連携してテレワークの仕組みづくりや支援、古民家再生によるコワーキングスペースの運営、IT技術者の移住相談のサービスなども検討を始めたところでございます。
 
それから、フリーランスで働く人たちもそうなんですが、テレワークで働く場合も企業が仕事を依頼するときに、セキュリティが一番心配なんだよねという声が多いんですね。会社の機密情報が漏れないか、すごく心配なんだという声を聞いておりまして。
 
これもフリーランスのエンジニアの活用支援ということで、実証実験というかたちで地方連携でセキュリティリスクの検討を始めました。検討を始めましたという事例しかないんですが、こういったこともこれから取り組んでいこうと思っております。
 
続きまして、松村先生に事例というのをお話しいただきたいんですが。
 
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松村:今、お話があった通り、行政の方がですね、中山間地域に、テレワークの仕事を出していくという例もありますね。例えば役所の中で処理すべきようなものを、テープ起こしとか清書などを、中山間地域の方に発注する。あるいは、障がいを持っていらっしゃる方なんかに、出していくという例もあろうかと思います。介護の話はもちろん、PCP(パーソン・センタード・プランニング-person centered planning/本人を中心に据えた計画づくり-障がい者における、本人主体の個人支援計画)の話やパンデミックに対応するという話もあります。
 
最近では、今度の東京オリンピック開催期間になると、首都高速道路がオリンピックレーンができて渋滞が大きく予想される。そこで、その間は在宅で働いてもらうというようなことで検討もされているようですね。
 
テレワークというのは離れたところで、好きな場所で働くということなんですけども、基本的には可能なんです。実際に今日のランサーの方もそうですけども、実際にできることで、フリーの方はもうやっていらっしゃる。問題なのは、企業の取り組みがなかなかできないと。要するに企業の制度の問題でですね。あるいはセキュリティの問題でできないなどと言われることが多い。そういう問題を含めても、基本的にはできることでありまして、活用事例は山のようにあるかと思います。「やればできる」と言う状況にきているわけです。そういう意味で今日のランサーの方はですね、本当に先頭を走っているんじゃないかなと思います。
 
家田:では続いて赤石さんに、桐生市のキッズバレイの事例のお話をいただければと思います。
 
赤石:本当にやればできる状況というのは、そのとおりだと思っていて。
 
私たち、キッズバレイという団体は若者子育て世代のくらしと働きを支援するということで、地域のつなぎ役をしています。活動していて思うのは、やればできる状況だけれども、どうやってやり始めたらいいかわからないし、一人で一歩踏み出す勇気がなかったりとかっていうところが、地元の多くの方々の本音なのかなと思っています。
 
クラウドソーシングを使うと色んな働き方ができますよっていうことは、積極的にPRしているんですね。でもやっぱり「クラウドソーシングって、何」みたいな、横文字が並ぶとちょっと一歩引いてしまうという状況があります。
 
そこでランサーズさんと一緒にやらさせていただいているのが、地域のお母さんたちに自分の空き時間、子どもが寝た後や学校・保育に行っている間にできる仕事を紹介しています。月に2~3万円とか、無理せず多少の収入を得ていくことで、少しでも暮らしにゆとりができたりとか。仕事をすることで、「働く」を通じたコミュニティを持てたり、自分のことを話す仲間ができるきっかけづくりとなる活動を行なっています。
 
具体的には、ママライターチームというものをつくりました。自分たちで、すごいステップが低いところで言うと、地域の情報を発信していきましょうということから始めて。子どもと遊びに行った公園の情報だったり、個室があって子どもと一緒でも安心できるお店の情報をFacebookで発信することを働きかけています。
 
更に「これがお仕事になるんですよ」「こういうのをやってみませんか」というのを、ランサーズさんからいただいたお仕事を一緒にやるという流れで、お母さんたちにお仕事をやっていただいたところなんですね。
 
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やってみて感じたこととして、まずインターネットの環境が時代的には整っているとはいえ、各家庭にそういう状況になかったり、セキュリティソフトが入っていなかったり、ワード・エクセルが入っていないパソコンだったり、やはりそういうところから課題がみえてきました。
 
実務面でも、「画像を圧縮してください」と言われたときに、専門用語が出てきたりすると、自分一人で解決するのが難しい。わかる人たちが、まずそれを読み解いて、口頭で、「こういうふうにやればできるんですよ」「すごい簡単ですよ」ということを伝えていって、やればできるんだという実感とか実績を、まずは少しずつ持っていただくと。一度できるようになれば、インターネットにつながれば、色んなところに仕事がありますので、自分でアクセスしていけるようになると思います。
 
もう一点、私たちが活動としてこれから取り組むことがあるんです。コワーキングスペース、コワーキングコミュニティスペースということで、3月29日に新しいスペースをオープンします。そこはですね、子どもが来てもいいよと、キッズスペースがあるよと。お母さんたちが順番に子どもを見たりしながら、仕事をできる空間と環境づくりなんです。働いてるお母さんがひと段落したら、「じゃあちょっと交替ね」と言って今度は自分が子どもを見る役になるような。
 
コミュニティ活動もしつつ、隣ではお仕事もできる。日中はそういうカタチでつながって、一方では、世界を相手にビジネスに挑戦しようとしている起業家がいて。地域の活動の拠点としての場所を持って、そこでのサポートと、新しいコミュニティづくりをしていきたいなというふうに思っています。
 
家田:ありがとうございます。コワーキングスペースってかなり最近、よく聞くようになりましたね。ランサーズさんも宮城県女川氏のコワーキングスペースに協力されていらっしゃる。また、西日本新聞社様と九州お仕事モールというのを提供されています。やはり新聞の媒体力って、地方ではすごく威力を発揮するのではないかと思っています。地方の方もつくっただけではなく、どんどん世の中に発信できる場が出てくると、もっと地元に帰ってみようという人が増えるのではないでしょうか。
 
インテリジェンスのほうでは、農業法人の就農支援を目的とした、Uターン・Iターンという転職フェアというのをやったりしています。16ぐらいの自治体が来まして、平均面談人数が一日61名ということで、かなり盛況な状態でした。やはり地方に移住したい、地元に帰りたい、そういった人がどんどん増えてきているんじゃないかなというふうに思っております。

新しい働き方の浸透は、地域社会にどんな貢献ができるのか。

 
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では続いて、最後のテーマに移ります。新しい働き方が広まっていくことによって、地域はどうなっていくのかというところで、これはお三方にお話をお聞かせいただければと思います。まずは井沢様からお願いいたします。
 
井沢:新しい働き方が地域に広がっていけば、非常にいいなと思いますけどね。今、地方の問題として人が減っていると。その原因は何かと言うと、職がないと。例えば、だいぶ地方からは工場なんかも出てしまいましたからね。職場が減っている。
 
今、総務省で「ふるさとテレワーク」というのを実証実験しようとしています。要は都会から地方に人を移そうと、移住させようと、そういう試みなんですね。色々な企業にいっているんですが、ひとつのやり方としては、企業の本社から仕事をちぎって地方に投げて、人も一緒についてこいという取り組みになっています。ただ、このやり方はなかなか上手くいかないんですよね。
 
それ以外に何か仕事ないのかと言うとですね、本当にないんですよね。長期的展望でやるんならまた別なんですけど。例えば、割と短いスパンで都会から地方に人を持ってこようとすると、なかなか難しくてですね、結構しんどいと。しかもかなり無理があるんですよね。

 
長期の円高不況で企業としてはいろいろ苦労をしている。例えば、地方の事務所なくしてですね、都会に合わせたりとか、そういうことやってきてるんですね。いきなりまた「方針が変わったから、地方に人やってくれ」って言われても、なかなか各企業対応できない。
 
このような背景がある中で、新しい働き方、クラウドソーシングの働き方はですね、地方に行くのに非常にいいんですよ。とくに今、都市から地方に移住したいという人たちは増えているというんですが、仕事がないというのが問題になっています。

 
クラウドソーシングみたいな働き方があると、クラウドソーシングは東京で出た仕事の8割が地方にいくというふうに聞いているんですけれども、そういうふうな仕事の出方があると地方に行く場合は非常にいいですよね。しかも、まだ都会で暮らしているときに足慣らしができます。稼ぎたい金額なり希望の半分ぐらいめどがついて、その時点で地方に行けばですね、何とかなるんじゃないかと思って出ていける。

 
完全な不安を抱えて地方に行くのとわけが違うのでですね、ぜひこのクラウドソーシングによる新しい働き方、これをもっと広めていただいてですね、地方活性化につなげていただければと思います
 
家田:ありがとうございます。それでは松村先生お願いします。
 
松村:新しい働き方が益々広がるでしょうし、広がっていくことが期待されるわけですけども、それによる地域の変化は大きく三つあるのかなと思います。
 
ひとつは、地場産業とクラウドソーシングで働く方、それからクラウドソーシングだからこそ自分の出身地に戻ったり好きな地域で働きたいという方がつながることでの化学変化です。ハワイでも働ける方、クラウドソーシングでどこでも働ける方というのは、ものすごい知を持ってらっしゃる。そういう方が地方に来ることによる化学反応は、どんな作用があるかわからないぐらいの期待があるわけですよ。地元の一次、二次、あるいは観光のような三次産業の方と自由な働き方をする人によって、地域のエコシステムというのが動き出すのではないかというのが一点ですね。

 
それからもうひとつは、日本中の自治体が、わが市町村に来てくださいというふうに一生懸命手を挙げているわけです。I・J・Uターンを推進する取り組みでね。それぞれの地域はみんな、素晴らしい自然とおいしい空気を持っているんです。同じような誘致の仕方では、違いが出てこない。アイデンティティというか、尖ったものを持っているような地域じゃないと、なかなか来てもらえないと。
 
必要なのは職なのかもしれませんし、その他の特徴かもしれない。例えば山形の農業地域では「山形ガールズ農場」という、若い女性だけの農場があるんですね。そこに入りたい、という希望の方がやってくる。そういうふうに、地域ごとで特徴を持っている。
 
あるいはクラウドソーシングで頑張っているランサーの方、腕のあるランサーの方「一緒に仕事をしたい」「だからあの地域に行きたい」というようなこともあるかもしれません。とにかく、何かしらの地域の特徴を出さないと人を集められないという時代がきそうだなという予感はあります。

 
三つ目はですね、移動に対するコストが下がっていく。リニアが開通してですね、あるいはローコストエアラインもたくさん飛んでいて、移動するということに対して、コストも時間もかからない時代になってくると思います。より一層、自分の好きなとこで働きたいとか、暮らしたいという方が増えてくるんじゃないかと思うんです。
 
移動コストの問題が解決すれば、ハワイでも京都でもいいんですが、そういうところへ行ったり来たりする人が増えるんじゃないかと。そういう人と地域の化学反応が頻繁に起こることが期待できますよね。それを地域の人が求めてもいいかもしれません。地域のコワーキングスペースに、ランサーズを使って仕事している人に来てくださいと呼んでしまうみたいなね。もしくは、ランサーの方を偶然つかまえて、地域が何か迎合すると。そんな例が期待できるんじゃないかなと思います。
 
その一つの前兆的な例ですけどね、軽井沢の近くの佐久でですね、ワインを作りたいという人がいて、ワインを作っている人が、行ったり来たりする中に、佐久で化学反応を起こしたと。そんな例がもっと身近になってくるのではないかと思いますよ。
地元の行政側が、そういう人たちをどう使うかということで、その地域の将来や発展が決まってくる。そんな地域が出てくるんじゃないかなというのが、期待されるんじゃないかなと思います。

 
家田:ありがとうございます。最後に赤石様、お願いします。
 
赤石:新しい働き方が広がると、みんなが社長になっちゃうかなというふうに思います。桐生市は、石を投げれば社長に当るってくらい社長が多い。自営業だったり、繊維産業の工場を持っていたりとか、本当に社長が多い、フリーランスが多い、個人事業主が多い街だったんですよね。だからすごい盛り上がっていたんだと思うんです。
 
今はどちらかと言うと、大企業に入って安定してという時代が続いてきて。そこからまたフリーランスにってなったときに、やっぱりもう一度そこに戻るんじゃないかなと。みんなが社長になる。そうするとみんなが、自分の商売のこと、街のこと、隣のお店のことを意識するようになるんじゃないかな思います。
 
また、今は当時とは違って、今らしい、この地域だけに留まらない、隣の街とも、ほかの県とも、それから世界ともつながれるようになりました。インターネットという武器を持っていますので、みんなが本当にいろんなことに挑戦ができて、場所を選ばないで世界と通じられる。ローカルにいながら、グローバルな人でいられる時代になってくるんじゃないかなというふうに思っています。
 
家田:はい、ありがとうございます。時間になりましたので、まとめさせていただきます。産官学が連携して新規に雇用と新しい働き方を創出していく、というようなお話をさせていただきたいと思って始めたセッションでした。皆さんのお話を聞いて、やる気のある地方自治体は結構いらっしゃるということが分かってきたと思います。
 
学問のほうで知恵を貸していただける先生もいらっしゃいます。テレワーク協会さんのようにお手伝いをしてくれるところもあります。またNPO法人さんは、産業が地域に上手く入り込むための重要な存在であることが改めて分かりました。民間企業が国の機関と一対一でやろうとすると入札など大変なことがあるんですが、NPO法人さんを通すことによって、産業がうまく入り込んで地方に雇用を創出できるようになればいいかなというのをお話をして実感しました。
 
是非ですね、今回でていただいた赤石様には、産業つながるための横連携の橋渡しをしていただければと思います。NPO法人って調べないとなかなか分からなかったりしますので、ぜひ発信を皆さんにしていただくよう横連携をしていただければ、産業のほうがビジネスの知恵はたくさん持っていますので。一回つくっただけでは終わらない、回していく知恵というのを皆さんと一緒につくっていければと思っています。つたない司会でしたが、ありがとうございました。
 

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