企業ロゴ作成のポイントと発想法

ロゴマークやロゴタイプの作成依頼がきたとき、あなたはどのように仕事を進めていますか。プレゼンが終わった後、クライアントは満足していますか。同じ会社から、デザインの仕事の発注がありますか。もし、そういったことがないようでしたら、ワンランクアップさせたロゴ作成スキルが必要になっているのかもしれません。デザイナーとしてワンランク上にステップアップしたい、と思うあなたにおすすめの方法をご紹介します。

アイデアが出ないのはヒアリングをしっかりやっていないから

クライアントが納得できるようなプレゼンができない、いつも無理難題を言われてしまう、ということはありませんか。また、競合プレゼンになると極端に勝率が低い、ということは? その原因は、アイデア不足が一因かもしれません。では、アイデアをたくさん出すにはどうすればいいのでしょうか。

ヒアリングがロゴのアイディアを広げる

ロゴ作成の仕事が好きだとしても、デザイン案にいきづまってしまうことがよくある、という人は、まずオリエンテーションをしっかり受けるということを心がけてください。ロゴマークやロゴタイプを作成する場合、その会社のすべてを聞き出すくらいのヒアリング(取材)が必要です。

たとえば、日本語学校のブランドデザイン、ロゴマーク開発を依頼されたとします。「国際学院という名前で、日本語教育を外国人に対して行なう」、ということしか情報がない、としましょう。このような場合、モチーフはどのようなものが考えられるでしょうか。

おそらく、「国際」「学院」「日本語」「外国人」などがキーワードになるでしょう。でもそれだけでロゴ作成ができるでしょうか。いずれもよくあることばです。ちょっと想像してみてください。シンボルになるかもしれないモチーフは、ありがちなものになりそうな気がしませんか。

では、ヒアリングを少し細かく行なった場合はどうでしょう。その日本語学校の特徴が、「少人数制」「一人ひとりに対してきめ細かい指導」「個別の補修授業の実施」「生活情報の提供」「学生の悩み相談にも応じる」といったことだとします。そうすると、「人を大切にしている」「きめ細かな対応」「ひとりひとりに」……というキーワードも出てきます。

このようによりくわしくヒアリングをすることで、アイデアのもとになるキーワードやモチーフが出しやすくなるわけです。しかも、その会社らしい部分も見えてきます。それがヒントになって個性的なロゴマークのデザインにつながるかもしれません。だからこそくわしいヒアリングが必要なのです。

何をヒアリングすればいいの、という人のために、一例をあげましょう。この数年のうちに創業した会社が、新たにロゴマークを作りたいという場合を想定してみます。

ヒアリング項目の例
・創業年
・なぜ創業したのか
・企業理念
・何を販売、提供している会社なのか
・販売チャネル、販売方法、サービスの方法
・これまでの販促物、広告、ウェブサイトなどの確認
・社長へのインタビュー
・役員、従業員へのインタビュー
・主な顧客層
・これから開拓したい顧客層
・海外戦略の有無
・競合企業

インタビューや質問には、イメージに関わることも織り交ぜ、現状としてその企業がどのようなイメージを持たれているかを確認します。そして、どういう企業になりたいのか、ということも聞いておきましょう。

こうした情報は、ロゴ作成時のモチーフの設定、イメージの方向性を定める際にとても有効です。そして、こうした情報がわかっていると、さまざまなアイデアが出しやすくなるのです。

社長の考え方と従業員の考え方、感じ方、めざすイメージが少しずつ異なるという場合も、よくあることです。こうした食い違いなども把握して、先入観なく現状を把握し、できればそれをレポートにまとめます。

レポートはクライアントに提出したほうがいいでしょう。それだけで、あなたへの評価も変わってくるはずです。

もちろん、そのヒアリングの目的はロゴ開発をするための素材です。コンセプトやモチーフを見つけるための材料になるわけです。しかし、ヒアリングは重要な要素であるにも関わらず、話し手(クライアント)がいつでも正しい方向を向いているわけではない、ということも念頭におきましょう。

ヒアリングの際に注意したいのは、誘導尋問のようにならないこと

ヒアリングの際に注意したいのは、デザイナー側が、「こうですね」といったように、答を先回りしてしまうことは避ける、ということです。あくまでもクライアントの返答を確認する程度のあいづちでおさめることです。
デザイナー側の思い込みで、こうあればいい、こうではないか、と思い込みや先入観が強すぎるとミスリードになりがちです。また抽象的な話になりかねません。

また、ターゲットを絞りきれず、「ターゲットはすべての女性」といった理想論のようになってしまうこともあります。ペルソナの技法などを使って、客観的にとらえられるようにしましょう。「女性全般」と「30代女性」は違いますし、未婚、既婚によっても違ってきます。「60代の中流階級の女性」もまた他の年代の女性とは異なるのです。ヒアリングではそういった点にも注意して、発言内容を確認するようにしましょう。

デザインバリエーションは強制的にひねり出す

伝えたいことを形で表現する

オリエンテーションを受け、ヒアリングをして、その会社が「信頼」と「親しみやすさ」のイメージを発信したい、という要望があったとします。「信頼」は、どのような形で表現できるでしょうか。どっしりしたイメージ、厚みや太さがある、安定感がある、といったところでしょうか。形で言えば、四角、台形といったイメージです。

「親しみやすさ」を形にすると、どのような形になるでしょうか。親しみやすさは、曲線、円形といった形になりそうです。コンビニやファミリーレストラン、子供向けメーカーなどが「親しみやすさ」をコンセプトにしている可能性があります。そういう視点で見ると、ロゴは丸みのあるものが使われていることが多いはずです。

全く同じ文章でも、図形の形やフォント色での印象が変わる

シンボルモチーフをフリーハンドで描き、考える

次にモチーフをいくつか挙げます。モチーフをいくつか決めたら、その一つだけを取り出し、フリーハンドでデザインアイデアのサムネイルを描きます。

そのときのコツは、強制的に手で考えさせる、ということです。たとえば、「花」というモチーフだったら、紙や無地のノートに、「花」のイメージのスケッチを描くのです。できれば時間を計り、その時間は集中してロゴデザインの元になる形のことだけを考えるようにします。時間といっても2分から3分くらいです。そのときは頭で考えるというより、手で考えるというイメージです。

A4判ほどの紙やノートを用意し、紙面の端から思いつくたびに描いていきます。一つのアイデアは、3センチ四方以内に収めたほうがよいでしょう。大きく描くと時間がかかりますし、細部が気になってしまうためです。そして、ひたすら描き続けるのです。なるべく手を止めないようにします。強制的にアイデアを出すということが大切。5つくらい描いて、もう出ないからやめる、ということはしないでください。3分間、ひたすら、手を動かし続けます。コツは、批評や判断をしないということ。正解のない世界ですから、とにかくアイデアをひねり出すということに意識を集中させてください。集中すると右脳モードになり、時間も気にならずに手が動きます。

手書きでの例

しかし、ある程度アイデアを出してしまうとどうしても手が止まります。それは、脳が飽きてしまっているのです。左脳モードになってしまうのですね。すると、自分で作ったロゴのアイデアを批評し始めます。形ではなく、ことばが意識を支配します。「ここは、こうしたほうがいい」、「ああ、もうやめようかな」などと雑念が浮かんできます。こうなってしまうと、集中できていないことになりますから、手も止まります。そして、アイデアが出なくなってしまうのです。アイデアを出し続けるためには、アイデアを出すための刺激が必要。それは呼び水のようなもの。呼び水があれば、脳が飽きずに形を追求できます。

アイデアの呼び水で飽き始めた脳を刺激する

より多くのアイデアを出すためには、呼び水が必要です。では、呼び水とはどのようなものでしょうか。それは、形を作るための条件です。“しばり”といってもいいかもしれません。

たとえば、花をデザインする場合は、たいてい曲線で表現しますね。それを「直線」で表現するとしたら、どのようなものになるでしょうか。「直線しばり」で考える、ということです。あるいは、「円」だけで表現したら? 「反転」させたら? 「点」で構成したら? といったように、条件をつけることがアイデアを出すための呼び水になるのです。

デザインバリエーションを増やすには、一つの形にこだわっていてはいけません。次から次へと新しい刺激を脳に与えて、オートマチックライティングのように、よどみなく描いていく方法が有効です。

その具体的な方法は、下記の単語を呼び水にして、3分間考え、描き続けるというものです。そうすると、驚くほど大量にアイデアが作れることになります。

直線 面にする 分断する 丸型にする
三角を使う 点を加える 点だけで構成 立体にする
切ってずらす 曲げる パースをつける 回転させる
重ねる 隠す 手描きのように 反転
模様 太くする 細くする

時間を計って、「直線」なら直線にこだわって、ロゴのサムネイル描き続けます。
こうすると、飛躍的にアイデアが増えることになります。アイデアを広げたあとに、コンセプトやビジョンに合ったものを選択していくのです。

さらにもう一つの手法をご紹介しましょう。アイデアを出すための手法の一つに「オズボーンのチェックリスト」というものがあります。これは、アイデアをさらに飛躍させるための“呼び水”。「花」のモチーフアイデアを出すことを前提にしたらどうなるのか、ということをご紹介しましょう。

●代用できないか……花びらの部分を何かの形から代用、あるいは似たもので構成できないか
●逆さまにしたら……図柄の反転してみる、上下さかさまにする
●組み合わせたら……葉と花びらとおしべを一体化したら、○と△を組み合わせて、花びらからもう一つの花がでていたら
●大きくしたら……アンバランスなほど、一部分を大きくしたら
●小さくしたら……極小の花びらで花を形作ったら、花びらだけを小さくして、葉を大きくしたら
●減らしたら……線を減らして単純化したら、色を減らして単純化したら

こうした呼び水があると、デザインのバリエーションが出しやすくなります。また、自分が作ったアイデアをさらに組み合わせることで、また新しいアイデアが浮かんでくるのです。

ロゴ作成の仕事は宝の山


ロゴを作成してほしい、という依頼があなたのもとに届いたとき、その後のあなたの仕事の幅が大きく広がっていく可能性があります。

完成したロゴは、どんなところで使用されるのかを想像してみてください。名刺をはじめ、包装紙、袋類、帳票類、車両、看板、店舗、ユニフォーム、IDカード、カタログ、ポスター、広告、そしてロゴマーク告知広告などなど。そのほか、ロゴマーク自体のシグネチュアシステムマニュアル、使用マニュアル、社員向けブランドマニュアルなども。

すべてが必要というわけではありませんが、ロゴの展開、アプリケーション設計は、デザイナーの仕事になるわけです。つまり、一つのロゴが次の仕事を生み出すわけですね。一つのロゴ作成依頼があれば、それは金の鉱脈を見つけたようなもの。仕事がたくさん生まれる前兆でもあるのです。大切に取り組んでくださいね。

まとめ

いかがでしたか。ロゴデザインのクオリティをワンランクアップさせたい、と思ったら、質より量を追求していくということを心がけるということがおわかりいただけたでしょうか。すぐれたデザインは、量を追求したもののみに訪れます。質は、量から生まれるのです。だからこそ量を生み出すためのコツや手法もご紹介しました。

アイデアの呼び水を使って、効率的に、そして精度の高いデザインを追求してください。そうやって取り組んでいるうちに、あなたのデザインクオリティは、いつの間にかワンランクアップしているはずです。

クリエイティブ系ライター: agnix-k

フリーランスのコピーライター。
中小企業から上場企業の商品広告(新聞、雑誌、ポスター、チラシなど)、企業広告をはじめ、インナー向けの販売マニュアル、プロモーション映像、商品ネーミング、企業名ネーミング、社名ロゴマークディレクション、サービスマークディレクション、販促企画などに従事。
都内のデザイン専門学校で約8年間、グラフィックデザイン科の講師も務める。
コピーライターでありながら、デザインの基礎を講義。受講生の間では実戦的な授業と評価され、担当したクラスは平均90%の就職率を誇る。
「日経BP社年間企業広告最高賞」、「消費者のためになる広告賞」などの受賞歴も持つ。

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