スマホ時代にデジタルカメラの差別化を図る、1,303のアイデアから選りすぐられた50の付加価値

スマホ時代にデジタルカメラの差別化を図る、1,303のアイデアから選りすぐられた50の付加価値
誰もがその名を知るパナソニック株式会社。2013年にオープンイノベーションの取り組みとしてランサーズを活用し、デジタルカメラの外装デザインコンペを実施しました。当時最多のデザイン提案数を集めたコンペはどのような経緯で生まれたのでしょうか。

1,303通りの付加価値を集めた大企業のオープンイノベーション

パナソニック株式会社がランサーズで実施した、デジタルカメラ:ルミックス(LUMIX DMC-XS1)の外装デザインコンペ。ランサーズ史上最多(当時)となる1,303件ものデザイン提案を集め、話題のプロジェクトになりました。

スマートフォンへのカメラ搭載もスタンダードになりつつあった2013年、デジタルカメラ市場においてパナソニックがクラウドソーシングを活用した取り組みには、どのような意図があったのでしょうか。

今ほどにクラウドソーシングという言葉を耳にすることがなかったタイミングで、ランサーズとのオープンイノベーションに至った経緯や、当時もっとも多くの提案を集めたプロジェクトの裏側について、パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部の木綿秀行さんにお話を伺いました。

付加価値はデザイン、選んだのはクラウドソーシング

ーーどのような経緯でランサーズをご利用いただいたのでしょうか

2013年当時、カメラ付きのスマートフォンが普及しつつあり、カメラに対する消費者の心理も変化していました。シンプルに撮影を行うだけのデジタルカメラでは、他の製品との差別化が難しく、お客様に選んでいただくためには付加価値を付ける必要があったんです。

そんな中、パナソニックのデジタルカメラ事業の新しい取り組みのひとつとして、デザインで付加価値を付けることを考えました。多種多様なデザインを一台から製造し、お客様へお届けするという仕組みを工場で作ったんです。

多種多様なデザインを一台一台製造できる仕組みはできた、その後は肝心のデザインをどうするかというところで、クラウドソーシングを提供するランサーズさんに声をかけました。

当時クラウドソーシングというサービスは、あまり有名ではなかったように記憶しています。私はたまたま、知人の紹介で知ることになったのですが。そのときの印象は、ロゴコンペが盛んに行なわれていて、平面のデザインもいくつかあるというものでした。

デザイン会社さんにお願いすれば、クオリティの心配はせず制作ができることはわかっていましたが、クラウドソーシングを利用して、多種多様なデザインを集めることができるというのに興味がありました。

史上最多提案となったデザインコンペ案件


ーー実際にランサーズを利用した結果はいかがでしたか?

ある程度コストを抑えた状態で多様なデザインを調達できる場として公募することに。プロジェクトの内容としては、コンペでデザインを集めた中から50種類を選び商品化すると決めていました。

ランサーズさんは300提案集まるとおっしゃったんですが、200提案も来たら御の字、40提案しかこなかったらどうしよう……という気持ちで。

ところが蓋を開けてみると、驚きの1,303もの提案数で、どうやって50案に選定するかという嬉しい悩みに変わったんです。

提案いただいたデザイナーさんの中には、長年ルミックスをご利用いただいている方や商品企画に携われたことを喜んでいただける方、タダでもいいから使ってほしいと言っていただける方もいました。多くの方に楽しんで参加いただけたことがとても嬉しかったです。

公募中にはパナソニックストアへのアクセスも倍増し、外装デザインのコンペが話題になっているなという実感もありましたね。

集まった中には、当時のトレンドだった「きもかわいい」デザインなどもあり、集まった案を通じて流行を感じ取ることもできました。

他にも、例えばデジタルカメラ表面のレンズ部分は、デザインだけを考えた際には邪魔になりかねない部分。そういった一見ネガティブなポイントでも、レンズ部分を玉ころがしの玉に見立て活かすポジティブな発想などには驚きました。デザインの世界では良くあることなのかもしれませんが、商品企画側としては驚いた記憶があります。

まさに当初考えていた、多種多様なデザインを集め、50種類の外装デザインを施すことができました。これほど個性豊かなデザインを揃えるのは、社内やデザイン会社さんではできなかったことだと思います。

オープンイノベーションのインパクトを実感


ーー実現にあたり苦労した点などはありますか?

先述した通り、2013年当時は今ほどクラウドソーシングの認知が広がってはいない中だったので、関連部署に理解を得るという点では簡単なことではないと考えていました。

社内に話をする際には、クラウドソーシング市場は今とても伸びていて、多様なデザインのニーズにも対応できる仕組みだということを中心に話しました。

パナソニックには理解力のある人が多いのですが、当時クラウドソーシングを詳細までは理解していなかったかもしれません。しかし、クラウドソーシングという「新しい流れ」なんだという大枠は理解してもらえたと思っています。

詳細を理解してもらうのには時間がかかると思った一方、社内のいろいろな人たちとの信頼関係を築いておくことで、たとえ深いところまで理解が及んでいなくても「お前が言うなら、やってみよう」という空気が作れました。そのため、比較的スムーズにプロジェクトを前進させることができました。

もう数年も前のことなのに、いまだにメディアの方々が話を聞きに来てくれます。パナソニックのオープンイノベーションの取り組みとして、クラウドソーシングで新しいアイデアを集め、制作したことのインパクトは大きかったのだと思います。

テクノロジーの進化により、2Dデザインに限らず3Dデザインを個人が請け負うことも増えてきています。今後はクラウドソーシングを活用したアイデアの募集や、特定のプロダクトに対す意見の募集などおこなうのも面白いかなと思っています。

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