業務委託契約の『相談先』はある?

業務委託契約の『相談先』はある?
自由度が高くて便利な反面、直接規制する法律を持たない業務委託契約。契約書を前に、実際の業務を確認して「おやっ?」と首をかしげた時、「どこに尋ねたらいいのだろう?」と、困ってしまう場面も起こりえます。ここでは、業務委託契約の『相談先』についてまとめてみました。
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業務委託契約の相談はどこで行える?

  • フリーランスとして活動を開始して、運よくクライアントを獲得できた!と喜んでいたら、請求書を出した後になって、アレコレと難癖をつけられた。
  • 業務委託のはずなのに、作業手順や、使う道具、仕事をする場所や、時間などに、いちいち、向こうから指示が入り、こちらの都合を言えば「契約書に反している!」と言われる。
  • 契約書の期限通りに入金がされず、問い合わせたら「請求書を出してない」と文句を言われた。
  • 交通費などの費用を、どちらが負担するかで悶着に。
  • 話が違う!と言ったら「契約書の通りです」と、言われてしまった。

こんな、話を耳にしたことはありませんか?

企業が人件費削減のために、これまで自社で行っていた作業を外注する割合は、年々増加し続けています。中には、業務委託と言いながら派遣同様の状況になっていたり、反対に、委託された側の理解不足で、報酬の支払いが大幅に遅れたりするケースも発生しています。

業務委託の場合、それ自体を直接的に規制する法律がありません。そのため、悪用された場合も被害に遭った側が、気付きづらいという難点があります。法律の専門家が見たら気付くようなことでも、素人には、わかりづらいために、長期間不利益をこうむってしまうケースが後を絶ちません。

「なんだかおかしいぞ?」と思ったとき、自分一人で抱え込まず、相談することをお勧めします。自分に落ち度がないのか?それとも、相手方に何らかの不正があるのか?早めに原因を突き止めることが、問題解決への一歩となります。

そうはいっても、「こんな場合、どこに相談したらいいか?」も、悩みどころです。業務委託契約の専門家は誰なのか?これまで関わりのなかったことだと、すぐには思い浮かばないことでしょう。

業務委託契約を多く取り扱っているのは、行政書士、司法書士などの方たちです。弁護士も同じく専門的なアドバイスをすることができます。また、企業の顧問をなさっている社会保険労務士が相談に乗ってくれるケースもあります。

自治体では、こうした法律の専門家を招いて、毎月~年3-4回程度の頻度で、「無料法律相談」を行っています。市町村の広報や、県の広報、ホームページでは、このような無料相談の案内が掲載されています。分かりづらいときは、お住まいの市役所等に直接電話で問い合わせてみるのも良いでしょう。

また、各県に1か所設置されている法テラスでの無料相談や、各大学の法科大学院も、無料相談の日を設けているところがあります。

これらのほかに、ハローワークや労働基準監督署でも労働相談という形で相談を受け付けてくれます。働き方によって、「実質的に雇用契約」「違法派遣契約に該当する」といった判断がされる場合は、こちらが窓口になる場合もあり、電話での相談も受け付けてくれます。

こうした窓口で、ある程度問題点の洗い出しを行ってから、自宅から最寄りの司法書士事務所、行政書士事務所を訪ねてみるのも良い方法です。

行政書士、司法書士の違い

行政書士、司法書士は、どちらも「書士」とつく通り、主に法律関連の書類の作成を専門としています。

各種の契約書や、陸運局など自動車の登録関連の書類作成代行、不動産や会社の登記等の業務、近年話題の消費者金融の過払い金請求も取扱業務です。自治体をはじめとして、役所に提出する書類全般を作成することができますが、司法書士と、行政書士では、業務範囲が少し違います。

司法書士は、主に裁判所関連の書類を依頼人に代行して作成することができます。また、簡易裁判所の案件は一定の条件のもと、弁護士のように代理人業務を行うことができるようになっています。

行政書士は、裁判所に提出する書類は作成できません。裁判所を除いた官公庁に提出する書類全般の作成を行うことが業務となります。しかし、本人が直接行う、簡易裁判所での訴状等の作成を支援することは、個別の対応として行っておられる行政書士の方もいらっしゃいます。

業務委託契約書の作成は、双方ともに取扱業務です。業務委託契約を専門分野や、得意分野にしている方に相談がしたいということであれば、各都道府県にある司法書士会、行政書士会に問い合わせて、最寄りの方を教えてもらうという方法もあります。

弁護士は、法律の専門職であり、裁判所での代理人業務が行えるという点が、前述の書士の方たちとは違っています。深刻な相談の場合は、司法書士事務所等から紹介されて、弁護士に依頼することを勧められる場合もあります。行政書士/司法書士と比較したとき、裁判等の実行力がある相談を行うことができますが、その分、依頼を行ったときの費用負担面では高額になる傾向はあります。犯罪性があるような深刻なケースであれば、弁護士相談のほうが適しているかもしれません。

ネット相談の利用のメリット、デメリット、注意点

「業務との兼ね合いで、相談先に出向くゆとりがない」「対面は苦手だけど、文章なら説明できる」ということなら、ネット上の法律相談サイトや、法律コミュニティー、労働問題コミュニティーも、問題点の整理をするのには有効です。SNS等にも、たくさんの法律相談サイトがありますし、参加されている方の中には、弁護士の専門家も含まれていることが多いです。

また、個人で開業されている司法書士、行政書士の中には、無料の相談掲示板をご自身のサイトに開設されている方もいらっしゃいます。

「一般的な相談サイトで相談すれば良いのではないか?」と言われそうですが、こうした一般的QAサイトでは、法律面に絞った回答が得られません。発言責任が問われないことで、中にはポイント稼ぎや面白半分で気軽にコメントする人がいるかもしれず、この場での情報に大きく依存することにはリスクといえます。つまり、深刻な法律上の相談をするのには不向きであると考えます。

ネット上の法律相談のメリットは、参加者が多いので、比較的短時間で問題点の洗い出し、整理がしやすいという点が挙げられます。第三者の目で見てどうなのか?という、違った視点からのアドバイスや、法律家、法学部生、法科大学院性といった、ある程度の知識のある人からの客観的な指摘や、実務的なアドバイスがもらえるということは、良い点です。また、多くの場合は無料ですし、交通費や時間的な負担も少ないといえます。

一方で、ネット上の回答をもって「内容についてどう判断し、どのような行動をとるか?」そのものは、相談する側の自己責任ということになります。また、回答してくれたからと言って継続的に具体的支援をしてくれるというわけではないですから、現実的なアクションを起こす必要があるときは、最寄りの専門家に再度依頼するなどの手だてが必要になります。

相談と依頼の違い

無料相談や、ネット相談を経て、「最寄りの司法書士、行政書士、あるいは弁護士などに相談をしたほうがいい。」というアドバイスを受けても、「相談はしてもらいたいけれど、相談したら、絶対依頼しなければならなくなるのでは?」とか「初回の相談は、いくらかかるの?」といった心配をされる方を、よく見かけます。

司法書士、行政書士の場合、相談だけでしたら基本的に無料です。弁護士の場合も、初回の30分は無料で相談できる、となっている場合が多く見られます。(法テラスを経由した場合、少し異なる場合もあります)

また、いずれの場合も「相談したら、依頼しなくてはならない」といったペナルティーなどはありません。相談してみた結果、ちょっと難しそうだ、というときはお断りしても問題ないのです。

相談をしてみてから、「依頼します」という申し入れをしない限りは、正式な依頼にはなりませんので、まずは相談をしてみることをお勧めします。相談の結果、状況によっては、公的な機関や弁護士のほうが良いなど、案件の内容で実際の依頼先が変わることもありえます。依頼前には、予算やおおよその費用などの話も相談のついでに行えるため、十分な説明をしてもらいながら依頼できると良いでしょう。

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