フリーランスが確定申告に向けて意識すべきポイント

フリーランスが確定申告に向けて意識すべきポイント
フリーランスの収入は、給与所得者とは違った特徴があります。そのため、確定申告をする時に小さなことに気を付けるだけで、節税効果が生まれることも。一方で普段の事務が不十分だと、申告シーズンに泣かされたり、思わぬ落とし穴で損をしてしまう可能性もあります。フリーランス収入の特徴をつかみ無駄を省いた税務を行うコツをご紹介します。
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フリーランスと確定申告

フリーランスとしての報酬がまとまってきたら、ぜひ気にかけていただきたいのが「税金」です。会社員に代表される給与所得者の場合、毎月の給与から、自動的に源泉徴収がされていて、「税金を納めている」という実感は薄いのではないでしょうか。

年末調整でいくらかでも返金がされると「得をした」といった感覚の方もおられるようです。実際は、「自分で納めたもの(の一部または全部)が戻ってきただけ」ですから、得も損もしていません。

所得税も、住民税(県民税、市町村民税)も、ほとんどの場合、会社が手続きを代行してくれていて、自分で払うことは稀で、それだけに「納税しなくてはならない」という事務負担や、確定申告の必要性について、認識しづらい一面はあるかと思います。

ところで、納税は「国民の義務」ですから、本業、副業の違いに無関係に、フリーランス収入が一定以上、まとまって得られるようになれば、おのずと、その収入からは所得税を納める義務が生じてきます。税金の面から見たとき、会社員やパートの税制上の収入区分は「給与」です。一方で、フリーランスで得られる収入は、「報酬」「雑収入」と呼ばれます。

「どっちも収入なんだから、大きな違いなんかないんじゃないか?」と思われそうですが、源泉徴収の税率面でみると、かなり大きな差があります。税引き前の金額が同じでも、報酬の場合の源泉所得税が10%であるのに対して、給与のほうが、源泉所得税の税率が低い場合が多いのです。

給与の源泉徴収は、経費が自動計算されて、交通費補助などの諸手当についても、課税される場合があります。若干多めに設定されているものの、納めすぎになる心配は低いですし、年末調整で再計算がされて、納めすぎた分は還付されます。社会保険などの控除も会社が行ってくれますし、自分ですることは少ないといえます。

これに対して、報酬や雑所得は、仕事に対する経費の率が一定ではありません。報酬から源泉所得税10%などが引かれている場合、経費を含んだ金額に対して課税されているわけですから、明らかに納めすぎが生じていることになります。こうしておさめられた源泉所得税は、自分で確定申告をしないと原則として還付は受けられません。

源泉徴収が行われていない場合は、自分で所得税の金額を計算して申告する必要が出てくる場合もあります。早い時期から節税を心がけていないと、後になって驚愕することになりかねません。フリーランスになったら、年末の確定申告を意識して、節税も心がけておくことも必要となってきます。

フリーランスの収入の特徴

原稿執筆などの文筆業、ソフト開発、イラストや作曲などの仕事を請け負って得る収入は、「変動所得」といいます。名前の通り、月々の収入額が一定でないため、年収についてもその年のよって変動するという特徴があります。

印税の入ってくるタイプの仕事の場合は、ヒットが出ると印税で急に年収が倍増!というケースもありえます。そうなると、今度は、所得税をいくら払ったらいいのか心配になりますし、一方で、まったく売れない、鳴かず飛ばずの状況に転落する可能性だってあります。フリーランスの収入には、こうした、一種「天国と地獄」のような、激しい上下がある可能性を常に含んでいます。

また、フリーランスの収入については、手取りのすべてが「所得」ではないということを、いつも認識しておくことも大切です。口座や手元に売り上げが入ってくると、一見、その全額が所得のように誤認してしまいますが、実際は、それは「収入=所得+経費」という状態のお金です。収入から経費を差し引いた残りが本当の「もうけ」=所得であるということを忘れていると、大変です。

経費負担が時間の経過とともに大きくなって、生活はちっとも楽にはならないのに、税金ばかりがどんどん高くなっていく、といった状況に頭を抱えることになります。

請求書と源泉徴収

給与所得の場合、毎月決まった給料日が来ると、ほとんど自動的に給与の支払いを受け取ることができます。働いている側から「給料を払ってください」とお願いするようなことは、原則ありません。労働基準法上も、給料の遅配は原則的にタブーとなっていますし、働いている以上、労働の対価として給料を受け取る権利は保護されています。

一方で、フリーランスの仕事は「請負」「委任」などの形態をとっています。この場合は成果物の納入を持って、初めて発注元は、受注者であるランサーに支払の義務が生じることになります。しかし、「納品さえすれば、払ってもらえる」というわけでもありません。もし、受け取った成果物が、発注した条件に満たないものだったときは、返品されて支払いを受けられないこともあります。

そして、一般には、成果物の納品後、受注した側が請求書を出して仕事は完了となります。報酬が払われるのはその後です。発注元から見れば、請求書が出て初めて支払いに移れるのであって、請求されないものは、支払いたくても払えない、という状況ともいえます。

請求書が遅れれば、支払も遅くなるということになり、売掛金がたまる、という状況になります。売掛金は、帳簿上は受け取ったお金と同じ扱いとなって収入にされてしまいますから、放っておけば「帳簿は黒字なのに、現金は持っていない」という状況になりかねません。これでは事業は立ち行かなくなってしまいます。請求書をきちんと出すことも、フリーランスで成功するための大切なポイントなのです。

フリーランスの必要経費

前述のように、フリーランスの収入には、その仕事を完成させるための費用が含まれています。この費用が「経費」です。

所得税法では、報酬や雑収入を受け取った場合、「その収入を得るために掛けた経費の額」は、確定申告を行うときに差し引いて申告しても良い、という決まりがあります。しかし、「その収入を得るために、実際にいくら払ったか?」は、仕事をしたご本人、つまりフリーランスの方自身にしか分かりません。

ここで、「何でもいいから、使ったことにしてしまえ!」となってしまうと、今度は水増し請求と同じ不正処理になってしまいます。

そこで、所得税法では、「払ったことの証拠となる書類(証憑書類)を、保管しておいて、税務署が「確認させてください」といったときには、きちんと見せられるよう、10年間は帳簿と一緒に保管してください」というルールも設けています。そこで、「領収証やレシートの保管」が必須となってくるのです。

では、実際には、どんなものが経費といえるのでしょうか?

簡単に以下にまとめてみます。

  • 【固定資産】:事務所の土地・建物 等
  • 【減価償却資産】:事務所の建物、自動車、10万円以上のパソコンや家具 等
  • 【地代家賃】:家賃・礼金・仲介手数料等、返還されないもの(敷金は含まず)
  • 【消耗品費】:10万円以下の物品/事務用品/家電 等
  • 【車両費】:仕事用車両の車検、タイヤ交換、メンテナンス 等
  • 【租税公課】:事務所の固定資産税など
  • 【修繕費】:事務所やパソコンの修理費用
  • 【通信費】:電話/携帯電話/インターネットプロバイダー料金/郵便料金
  • 【水道光熱費】:水道/電気/ガス/灯油/浄化槽清掃代金/汲み取り料 等
  • 【打合会議費】:打ち合わせのために使った喫茶・軽食代金
  • 【接待交際費】:取引先との飲食・季節の贈答等、仕事関連の冠婚葬祭費用
  • 【新聞図書費】:業界紙や業界専門誌の購読費用
  • 【研究費】:執筆、ソフト作成等に必要となった書籍やセミナー、通信教育費用
  • 【旅費交通費】:仕事上の外出にかかる交通費
  • 【燃料費】:仕事で使用したガソリン・軽油 等
  • 【広告宣伝費】:営業のためのダイレクトメール・名刺 等
  • 【雑費】:上記いずれの項目にも当てはまらないもの

このほか、スタッフを雇ったり、家族が専従者になったときは、「給料」「専従者給料」もかかってきます。スタッフに食事や茶菓、健康診断費用、事務所に常備薬をおけば、「福利厚生費」が発生することもあるでしょう。

仕事でしか着用しない衣類は「作業用衣料費」として、外部業者に仕事を頼んで支払いがあったときは「外注費」、新規開業の時は「開業費」など、状況に応じて発生する経費もあります。良くわからないときは、税務署に相談して、確認するとよいでしょう。

これらの支払いの証拠となるレシートや領収書は、すべて、時系列に添って整理しておき、専用に、スクラップブックやノートなどを作って、そこに張り付けて保管します。

家内労働に関する経費の特例

フリーランスのうち、文筆業、イラストレーターなど、家内労働を行う場合、経費が少額で65万円に満たないことが多いと思われます。給与所得者は65万円の控除が認められているのに、これでは不公平であろうということから、家内労働のフリーランスの場合、特例として、経費が65万円未満の時は、65万円までを経費として引いてよい、というルールがあります。

税理士の相談することのメリット

フリーランスで事業を開始して、初年度は、収入が少なくて、白色申告個人事業主や、副業としての雑収入や報酬でも、間に合うことが多いと思われます。しかし、仕事をしていくうち、事業規模が大きくなって取引の金額や、時差が大きくなり、複雑化してくると、自分一人で経理事務を行うことも負担になります。そうなると、本格的に節税するために、65万円の青色申告特別控除が利用したい、と考えるようになってきます。

しかし、その場合、簿記は正規の複式簿記で記帳をしなくてはなりませんし、そのためには、ある程度の簿記に関するスキルや、知識、そして、事務を執るための時間が必要になってきます。平成26年1月からは、白色申告であっても、金額に無関係に記帳と帳簿保管の義務が課せられることになりますので、これまでのように「白色だから、どんぶり勘定でいいや」というわけにはいきません。今後は、こうした傾向はますます厳しくなっていくことと思われます。

記帳を行えば、儲けと経費のバランスは、よりはっきりとわかるようになってきます。本来的には、なるべくこまめに記帳する、それも、できれば複式で行うことができれば、そのほうが望ましいことは間違いありません。

そうはいっても、簿記の知識やスキルを身に着けることは、一朝一夕では難しいですね。そんなとき、税理士の相談や、記帳指導が便利です。上手に利用すれば、無料で指導を受けられて、必要なスキルを身に着けることができます。

【税務署の記帳指導】

税務署では、毎年希望者を集めて、無料の記帳指導を行っています。近年は、パソコン記帳が主流となっていて、会計ソフトを使った経理事務処理を教えてもらえます。

それでも、実際の取引の細かいところになると、初めてばかりでは、さじ加減が分からないことや、経費漏れ、落とし、勘違いなどのミスが出てきます。そんな場合、いちいち、税務署に電話をしたりするのでは大変です。間違いに気づかないで提出してしまうと、還付金がある場合は時期が遅れてしまいますし、思わぬ追徴がついてくると、悲惨なことにもなります。税務は正確であることが大切であり、もっとも節税効果が大きくなるものです。

そこで、税務署では、記帳指導の一環として、税理士を事業所へ派遣して、実際の取引について相談できるような方法も行っています。

こちらは確定申告時期の2月中旬~3月上旬の時期に、各税務署で申し込みや、希望を取るアンケートなどを行っています。電話などで問い合わせると、申込用紙の郵送などもしてくれます。実際の相談は6月以降となることが多く、正確な開始時期は、自治体で多少のずれはあるようです。

【青色申告会、商工会の記帳指導】

青色申告会や、商工会でも、記帳指導をしてくれます。こちらは年会費を払って、会に所属しなくてはなりませんが、その代り、必要に応じて自分の場合の取引について詳しい指導が受けられます。会計ソフトの購入も、割引してもらえるなどの特典を含む場合もあるため、事業規模が大きくなってくると、こちらのほうが便利でしょう。

【税理士事務所で相談】

また、多くの税理士事務所は、「無料相談」などの看板をあげていますし、自治体による「無料税理士相談」なども開催されています。こうしたものも利用して、相談をするのも良いでしょう。より詳しいサポートを受けたい場合は、有償になりますが3万円程度の報酬を払って、決算書や貸借対照表、損益計算書を見てもらうことも可能です。この場合は、決算書などに、税理士の印をついてもらえることで、

  • 税務についての信頼性が高くなる
  • 提出前に間違いを直せるので、税金を払いすぎる心配が軽減される

などのメリットがあります。

日々の記帳まで、すべて管理をお願いすると、年間で数十万円の税理士報酬を払う必要があります。副業レベルの税務では、そこまでの必要はないでしょう。

法人成りして、人を雇って事業を行うようになったら、今度は税理士がノータッチというのは難しいと考えて、最低でも、最終チェックはお金を払ってやってもらうように考えましょう。

以上、今回はフリーランスが確定申告の際に意識すべきポイントをまとめてみました。今後のご参考としていただけると幸いです。

(※主要参考元:国税庁ホームページ記載情報および各種提供資料)

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