個人事業主と法人、得するのはどっち?

個人事業主と法人、得するのはどっち?
個人事業主が法人化を考えるとき、節税に有利かどうかで検討する方が多いのではないでしょうか。しかし、税金面などのコストの計算は複雑なため判断に迷います。法人化すべきかどうかを検討するためのシンプルな判断材料を紹介します。
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個人事業主か法人か、その決め手となるのは

この記事をご覧になっている個人事業主の方は法人化にすべきか悩んでいるのではないのでしょうか。法人化を検討する理由は様々でしょうが、共通する部分があるとすれば、個人事業主のとき以上に、手元に残るお金を増やしたいということではないでしょうか。

手元に残るお金をより多くするには、2つの方法があります。

1、収入を増加させる
2、コストを削減させる

一般的には節税の切り口で検討する個人事業主は多いですが、コスト面だけで法人化したほうが有利というほど単純な話ではありません。法人化すれば個人事業主より書類の提出や整備などが複雑になります。管理コストを無視して、節税効果のみで法人化すると、かえって個人事業主のときより手元に残るお金が減少する恐れもあります。

個人事業主より収入が増加する見込みの有無で法人化すべきかどうかを判断したほうが賢明です。言い換えれば、「法人化=信用度アップ」で収入が増加するならば法人化を検討してみてはいかがでしょうか。

法人化する際の適切なタイミングは?

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個人事業主が「法人化=信用度アップ」により、収入の増加が見込める時点が適切なタイミングです。具体的には2つの切り口から検討する必要があります。

1.B to B(企業間取引)を有利にする

企業から仕事を受注するメリットは「取引金額=収入金額」の規模が大きいことに尽きます。資金運用の規模で企業と個人消費者を比較すると、B to Bの魅力が分かります。

(1)個人消費者
月に運用できるお金は多くても数十万円単位。会社から支給される月給の範囲内に限定されるからです。したがって、1人当たりの単価を高く設定することができません。

(2)企業の場合
運用できるお金の金額は数百万円以上が当たり前です。したがって、1社あたりの単価を高く設定することができます。

特に大企業から仕事を受注するとき、個人事業主より法人のほうが有利です。仕事を依頼する側はその分野の素人の場合もあり、商品やサービスの内容で発注先のクオリティの違いを区別することが困難な可能性もあります。そのため、個人名や屋号より「●●株式会社」という外見で発注すべきかどうかを判断せざるを得ない場合もあります。

2.資金調達を有利にする

資金調達とは銀行融資のことを指します。事業拡大には資金調達が必要になることが多々あります。例えば、飲食店の2号店を出店することで年間1千万円の利益が見込める場合、貯蓄するまで待つことはできません。別の会社が出店したら、その時点で「年間1千万円の利益を獲得する」というビジネスチャンスを逃すからです。

銀行が個人事業主より法人を信用する理由は主に2つあります。

(1)書類がキチンと作成されていることが前提にあるため
法人は帳簿などの書類の作成義務が個人事業主よりも厳格に要求されています。決算書一つとっても、法人の場合は現金預金の口座別残高まで表示しなければなりません。個人事業主より法人のほうが経営管理はしっかりしている印象が銀行は強く抱いています。

(2)代表者を連帯保証人にすることができるため
銀行が融資する際、法人の場合であれば連帯保証人に代表者個人を据えることができます。しかし、個人事業主への融資は相手が代表者個人です。連帯保証人を求められたときは別の人に頼まなければなりません。

このように信用度の点では個人事業主より法人に軍配が上がります。「B to B」の取引や「資金調達」を有利にしたいなら法人化する絶好のタイミングです。

法人化する場合のメリット・デメリット

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法人化すると個人事業主に比べコスト面でメリット・デメリットがあります。具体的な説明に入る前に個人事業主と法人の税目の違いを確認しましょう。

・個人事業主:所得税(税率は5%~45%の7段階による累進課税)
・法人:法人税(税率は原則23.2%)
※住民税・事業税・消費税は個人事業主と法人ともに共通する税目です。

法人化するならメリットをできるだけ享受して、デメリットを最小限にするように能動的に考えましょう。

1.メリット

法人化の大きなメリットは所得金額(事業の儲け)を法人と代表者名義に分散できる点です。それによって、個人事業主よりも累進課税による所得税率が抑えられます。会社の所得金額を代表者名義する方法を2つ紹介します。

(1)役員報酬
会社から代表者に対する給料です。単に個人事業主よりも所得金額を抑えるだけではありません。現金支出の伴わない役員報酬の金額に応じて、代表者の所得金額から控除できます。控除できる最低金額は65万円です。この最低金額は個人事業主の所得金額から差し引く青色申告特別控除の最高金額65万円と同額であり、法人のほうが所得控除で有利です。

(2)社宅の活用
物件の賃借契約は会社名義にして、代表者に賃貸する方法です。この方法により、会社が社宅家賃の負担をすれば法人の所得金額は圧縮できます。しかも、家賃補助が半額までなら代表者も非課税です。事実上、代表者は収入を得ているのに所得税は非課税であり、会社だけが一方的に経費に落とせる節税方法です。

2.デメリット

地方税や社会保険などのコストは増加します。主なものを4つ紹介します。

(1)赤字でも課税される
住民税のうち均等割という税金は所得金額の有無にかかわらず、最低でも年7万円課税されます。

(2)事業税の課税が強化される
個人事業主のように年290万円の所得控除が適用されません。

(3)社会保険に強制加入させられる
代表者個人だけはなく、雇用した従業員の健康保険や厚生年金などの社会保険の半分を会社が負担しなければなりません。会社が負担する社会保険料は給料の約15%です。

(4)税理士報酬の支払い
法人の確定申告は個人事業主よりも複雑です。書式はもちろん、税務署だけなく都道府県や市区町村にも提出しなければなりません。そのため、自社で作成するのは難しく、一般的には税理士に依頼するケースが多いです。

まとめ

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法人化で収入の増加が見込めるなら、あとはコストを減らすように手を打つだけです。そのために会社の所得金額を代表者個人と分散するのはもちろん、コスト面でのデメリットを解消する必要があります。

1.事業税の課税強化を防止する
会社の所得金額を代表者名義することで、事業税の課税される金額が圧縮できます。

2.社会保険料の負担を増加させない
むやみに雇用契約をせず、アウトソーシングを活用することも検討しましょう。

それでも個人事業主が法人化する以上、均等割と税理士報酬の負担は避けられません。しかし、Web制作費用や広告宣伝費と同じように収入を増やして回収すべきコストとも言えます。会社の経営者になる以上は税金面などのコスト面だけではなく、収入の増加を含めてお金を増やす視点から法人化を検討すべきではないでしょうか。

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