犬が好き! から始まった、ペットと関わりつづける仕事。
一兆円産業と言われたペットビジネスと共に
就職氷河期と言われた時代に、大卒で就職した先は地方のホームセンターのペットショップでした。
店頭で子犬の販売をし、世話や掃除をする日々です。早朝から仕事を始め、土日や連休も働き、ほぼ休みのない環境でした。
ペットショップを就職先に選んだのは「犬が好き」という理由だけ。就職の直後にペット業界に爆発的なブームが起き、その波に乗り店長、トリマー、オーナー、そして当時日本最大規模のペットショップチェーン本部運営へとステップアップをしていったのです。
その後、国内だけでなく、外国へもビジネスの幅が広がりつつあった時期に、プライベートでも結婚、出産、育児という大きな転機を迎えました。
ペットビジネスの全てを経験したからこそ、見つけられた新しい働き方が今の私のスタイルです。今、私は社名や肩書の無い「自分の名前」が書かれた名刺で仕事をしています。
拡大するマーケットと知らなかった現実
ペットショップに就職した当初は、犬の種類もわからず、資格も経験もまるでなかった私。支えていたのは「犬が好き」という想いと、新しい家族が増えた喜びにあふれるお客様の姿でした。
その後、仕事の傍ら休日は専門学校に通いトリマー、トレーナー資格を取得。海外のペットビジネスを知る為に英語を学び、現地へ足を運びました。
同時期にTV CMの影響でチワワ、ダックス、コーギーといった犬種が爆発的に売れる、いわゆる「ペットブーム」が巻き起こりました。当時は、子犬が数十万~数百万円といった高額で当たり前のように売買されていました。
ペットブームの最中に、さらなるスキルアップを目指し当時日本最大規模を誇っていた企業への転職をしたのは29歳の時です。
転職のタイムリミットと呼ばれる年齢での新たなスタートでした。転職先では、これまでのペット業界での経験を活かし、新業態のペットショップを立ち上げ、成田空港施設内に国内最大最高級のペットホテルを開業し目まぐるしい日々を送りました。
自身の携わったビジネスが次々とテレビや新聞、雑誌に取り上げられ、ペットのいる生活の全てが明るく、希望に満ちたものだと考えていました。
しかし、ペットブームが盛り上がる一方で、非常に厳しく、残酷な現実を知る事にもなりました。次第に飽和状態に近づくペット市場に、無計画に繁殖された犬猫が溢れかえり、売れ行きは低下し始め、飼育放棄も相次ぎました。
そして迎えた結婚、出産、育児という大きな転機。サービス業と家事、育児との両立はそれまで私が乗り越えてきた、どんな大きなビジネス上の課題よりも難題でした。
第一線への復帰意欲と小さな子供との狭間で
育休後に職場復帰を果たしたものの、サービス業の世界は想像以上に家庭との両立が厳しいものでした。
土日、大型連休、クリスマス、年末年始はペットビジネスの「繁忙期」です。斬新な企画を打ち出し、売り上げを上げる事、育休取得前のポジションに復帰する事を焦り、家庭、育児へのストレスは増えるばかり。
結果的には復帰後2年程で、私はその華々しいビジネスの世界から離れる事になりました。もちろん、前向きな決断ではありません。そうせざるを得ないという結論に至ったからです。
自身で下した結論とはいえ、それまでのキャリアや熱意、仕事で得られた満足感から、「いつかはもう一度」と考え、就職活動をし、先の見えない中、模索する日々が続きました。
同時期に、これまでの経験がかわれ動物愛護団体と共に保健所からレスキューされた犬達の新しい飼い主を探すボランティア活動を始めました。
この活動で私は、これまでこだわりを持っていた犬の血統や顔立ち、価格がペットを選ぶ上で、大きな意味を持たない事に気がつく事が出来ました。
そして、一旦は飼育放棄された犬を引き取ってくれる家族も、これまでの私がペットショップで目にしてきた家族と同じように犬を迎える事を大いに喜んでくれました。
このことが私の新しいスタートラインになりました。
ペットを買う、飼う生活から、ペットと「暮らす」生活へ
今、私の傍には保護団体から引き取った2匹のゴールデンレトリバーとチワワが居ます。3匹とも、私の新しいビジネスのよきパートナー達です。
私は、これまでの経験を活かし、家庭との両立が出来る「フリーランス」という働き方で新たなスタートを切りました。
原稿執筆業でペットに関する様々な情報発信や、ペットショップ開業のコンサルティング、動物保護団体の広報活動、しつけ教室の開催、トリミングなども引き受けています。
一度は自身のキャリアから遠ざかり、異業種での就職も考えましたが、フリーランスという形でもう一度、ペットビジネスに携わり、今、新しい目標を見つける事も出来ました。