「言葉にできない」を表現するファッションライター。

「言葉にできない」を表現するファッションライター。
ファッションアプリの編集、ブロガー、モデル事務所のマネージャー。多岐にわたった歩みを経た彼女からは、ファッションへの情熱、クライアントや読者の期待に真摯に向き合う提案力が窺えました。あるフリーランスの歩みと、労働観に迫る『たとえば、こんなフリーランス』。
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無限の読者の消費を動かす力が、ファッション記事にはある

「好きなこと」を仕事にすることは、贅沢なことなのかもしれない。

自分の「好き」を自己満足に留めず、世の中に貢献し、事業として収益を上げるということは、こうして文字に起こすような容易い道のりではないからだ。
「好きなことは趣味に留めておいたほうがいいよ」という人が多いのも、なんら不思議なことではない。

しかし、「保育園児の頃からファッションが好きだった」と語るライター・Mari氏は、その類には当てはまらないだろう。

ファッションライターである彼女が徹底しているのは、取り上げる商品をいかに売るか。そして、いかに読者をワクワクさせるかということ。

「ファッションを楽しむ人は皆『今の自分、素敵!』と思うと、みるみる表情や仕草が変わってオーラを放ち始めるんですよね」と語る彼女の目線は、確かに「好き」を楽しむ自分ではなく、記事の先の読者に向いている。

現在は海外発のECサイトへの寄稿を中心に活動している彼女。今後も「デザイナーズブランドを扱う、ハイファッション系メディアを軸に活動の幅を広げたい」と、穏やかに語りながらも、さらに「好き」を極めようとするその言葉には、凛とした力強さが宿っていた。

ファッションへの情熱を胸に、インターネットを駆使してキャリアを拡げるライター・Mari氏へのインタビューをお届けします。

言語化しにくいセンス 感性を言葉にする面白さ

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――最初はファッション系スマホアプリの運営企業で働かれていたそうですね。

高校卒業後に1年間のイギリス留学をしていました。そのあと日本に帰ってきて何を仕事にするか考えた時に、やっぱりファッションが好きだったので、まずはファッション系スマホアプリの会社でアルバイトとして働き始めました。

コーディネートのコラージュ画像を作ることを主にやっていましたが、成績がトップになったことを機にファッションマガジンの編集長をやらせてもらうことになったんです。

その頃、「ファッションは自分には理解できない」という社内の男性エンジニアと接するたびに“女の子にとってのカワイイ”を伝えるのは難しいな、と感じていたんです。それでも、言葉で伝えにくいことを文章で伝える仕事に魅力を感じて、執筆の仕事にも興味が湧いてきました。

――文章の執筆はいつからされていたんですか?

ファッションアプリのアルバイトと並行して、妹とファッションブログを始めたんです。拙い語学力ではあるものの『日本語と英語、絶対二ヶ国語で書くこと』をテーマにして、お互いのコーディネートを撮り合いながらブログを書いていました。

しばらくしたら、海外のファッションブランドから掲載の依頼が来るようになりました。「住所はどこ?ウチのブランドの服、載せてくれない?」という凄くフランクなメールが、ハリウッド女優さんが愛用しているファッションブランドから来だしたんです。「初心者ブロガーに掲載の依頼をするなんて、海外は柔軟なんだな」と思いましたが、それでも少し自信につながりました。

私が運営していた個人ブログを見て、ファッション業界の方が「これはお金になるよ」と言ってくださったことも、ライターを目指す後押しになりました。その言葉のお陰で執筆への興味がますます増していったのを覚えています。その後会社を辞めたタイミングで、とある海外ブランドのオフィシャルブロガーを1年間勤めるなど、執筆を中心に活動していました。

ですがその頃は、ちょうどファッション系ECサイトが盛り上がり始めた頃。ご縁があったモデル事務所の社長から「今はモデルもWebでの見せ方が大事になっているので、SNSやブログでの発信術をわかっている人が欲しい」とお誘いを受け、モデルのマネージャーのお仕事を3年半ほど勤めていました。

どんな仕事でも、自分からアイディアを提案する

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――ブロガーからマネージャー業への転身は大きな変化ですが、マネージャー業とライター業に共通する点はありますか?

クライアントに提案する力ですかね。

たとえばECサイトの撮影のお仕事があったとします。モデルをオーディションに行かせるのですが、やっぱりオーディションに受からないと仕事にはならない。じゃあ受かるためにどうしようか考えたときに、まず大手のECサイトさんのモデル画像をひたすら見て、“カワイイかカワイくないか”、をひたすら仕分けするところから始めました。

仕分けした“カワイイ画像”の商品を見て“売れるまでの時間”とか“実際の売れ行き”も追い、その結果をデータ化して、新人のモデルにポージングの教育をしていったんです。「あなたはこうしたほうがいい」とか指導をしながら、クライアントごとにテイストを変える提案力を養い、徐々に採用が増えていく。

オーディションに受かるために提案を試行錯誤してきたからこそ、ライターとしてもクライアントのテイストに応じてアイディアを提案することを自然と意識しているのかもしれません。

読者の“ファッションへのワクワク”に責任感を持つ、ということ

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――「認定ランサー」にも選ばれましたが、ライターとして仕事をする上での心得はありますか?

クライアントさんや、記事の向こうにいる読者のセンスにあった記事を作ることを意識しています。

例えば「このピンクは違う」とか「これはカワイくない」という、『ざっくりしていて属人的。でもユーザーの心理からしたら的を射た真実』というものが、ファッションだと顕著にあるのだと思います。

今はキュレーションメディアがたくさんありますが、中には文法的に正しくない記事もたくさんありますよね。例えば「。。。」という表記とか。画像も、鮮明ではないうっすらボケた海外の写真を使うことがあります。でもそれが、透明感があると評価されるように、良いor悪いの受け止め方はひとそれぞれ。

でもターゲット読者の女の子にはそういったテイストが喜ばれ、支持を得ている。つまり、どれだけユーザーの気持ちを汲み取れるか、そしてどれだけコンテンツに落とし込むことできるか、が人気につながるのだと思います。

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――ファッションのような、ビジュアルとセンスが質を左右する記事を書く時、何を意識していますか?

「いかにして“センス”を伝えるか」を意識しています。クライアントさんのイメージと自分のイメージが擦り合っていないかもと思った際は、頭にあるイメージをビジュアル化して提案してみるんです。コミュニケーションの取り方を工夫するだけでも、関係はずっと良好になると思います。

薬や健康関係のジャンルだと「薬事法」のように明確なルールがありますが、ファッションにはないですよね。「コーディネートを間違えたら死ぬ」とか(笑)。でも例えばライターが手を抜いて「これを着たらモテる!」という記事を書いたとする。そして読者がその記事を信じて商品を買っていたとしたら、それはとても無責任なことだと思うんです。

人のお金を動かし、記事の先に不特定多数の読者がいる以上、これからも真剣にファッションに対して取り組まなくてはと思っています。

<おわり>

【Mari】
1987年東京都生まれ。高校卒業後、渡英。帰国後、ファッションIT企業やモデル事務所のマネージャー業に携わる。ファッション好きが高じて、某ファッションブランドのブロガーコンテストに優勝。1年間オフィシャルブロガーを務める。現在は、国内外のメディアやECサイトのアドバイザー、ブログ執筆、コーディネート提案をメインに活動中。将来の目標は、自身のファッションメディアを持つこと。
Mariさんのプロフィールはこちらから
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