結婚・出産は本当にキャリアの「妨げ」か? これからの女性ライターの働き方とは

結婚・出産は本当にキャリアの「妨げ」か? これからの女性ライターの働き方とは
東京・五反田のコワーキングスペースCONTENTZで4月9日、女性ライターや、ライター志望の女性を対象としたイベント『理想の職業!? 女性ライターの働き方』が開催された。女性ライターのキャリアプランとライフプランについて、属性もさまざまな4人の当事者が語り合ったトークの一部始終を紹介する。
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結婚、出産、育児や体調の変化……それでも続ける「ライター」という仕事

女性のキャリアを考える中で、キャリアプランとライフプランの兼ね合いは常に議題に上がるテーマだ。結婚、出産、育児や体調の変化……働く女性たちは、それでも仕事を続けている。もちろん、ライターという職業も例外ではない。

このイベントには、現在活躍中の女性ライター4人が登場。それぞれの視点に立って、女性ライターの働き方についてディスカッションを繰り広げた。

【登壇者プロフィール】


 
■ 氏名:小川 たまかさん

1980年生まれ、東京都品川区出身。ライター。下北沢にある編集プロダクション、プレスラボ取締役。大学院在学中にライター活動を開始。2008年から現職。主な執筆媒体はYahoo!ニュース個人、ダイヤモンドオンライン、ウートピ。Twitter ID:@ogawatam


 
■ 氏名:紫原 明子さん

エッセイスト。1982年福岡県生。14歳と10歳の子を持つシングルマザー。個人ブログ『手の中で膨らむ』が話題となり執筆活動を本格化。著書に『家族無計画』(朝日出版社)。『りこんのこども』(cakes)、『世界は一人の女を受け止められる』(SOLO)をはじめとしDress、AM、HRナビ、ポリタス等Webメディアに連載、寄稿多数。

またスマートニュース株式会社にてブロガーコミュニケーションのサポート業務にも携わる。Twitter ID:@akitect


 
■ 氏名:佐野 知美さん

1986年生まれ新潟県出身の編集・ライター。これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」編集長、オンラインサロン「編集女子が”私らしく生きるため”のライティング作戦会議」主宰。

女性向け旅ガイドブックことりっぷWEBの連載「佐野知美の世界一周さんぽ」など、フリーランスとしても活動。2016年4月から、世界一周の海外ノマドワークを実践中。
Twitter ID:@tomomi_isano


 
■ 氏名:田島 里奈さん

有限会社ノオト所属の編集者。働いていた地元のキャバクラで待機中に、mixiニュースでノオトを知ったことがきっかけで編集者に。ノオト入社と同時に上京し、その後結婚して子どもを1人出産。Twitter ID:@tajimarina0115

どんなスケジュールで仕事してるの? 先輩女性ライターのワークスタイル

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田島:本日の進行を務めさせていただきます、有限会社ノオトの田島です。トークテーマは「女性ライターの働き方」ということで、最初に自己紹介とあわせて、それぞれ1日のスケジュールを教えていただきたいと思います。まずは小川さんからお願いします。

小川:プレスラボ取締役の小川たまかです。2008年に代表の梅田と株式会社プレスラボを立ち上げ、今年で9年目になりました。変則的な生活を送っていますが、平均的なスケジュールはこんな感じです。

<小川さんの1日のスケジュール>

8時:起床・家事 
9時半:近所のジムへ(ヨガ) 
11時:帰宅して身支度、自宅で業務(原稿作成など)
13時:徒歩で出勤
14時:出社、業務(取材、原稿作成等)
21時:退社、友人と食事
23時:帰宅
26時:就寝

田島:ご自宅でお仕事されてから出勤しているんですね。ジムには毎日?

小川:週2、3日です。

田島:健康的な生活ですね。では、続いて紫原明子さん、お願いします。

紫原:エッセイストの紫原明子です。離婚して、2人の子どもを育てています。並行して、週3日は記事執筆、週2日はニュースアプリを運営するスマートニュース株式会社に勤務しています。

これが私のスケジュールです。私の仕事だけでなく、子どもの予定もスケジュール管理における大事なポイントになります。というのも、例えば2人とも塾の曜日、開始・終了時間がバラバラなので。それでもなんとか3人が顔を合わせられるように、調整をしています。

<紫原さんの1日のスケジュール>

7時:起床
9時半:出社
17時:帰宅、娘を塾へ送る
18時:帰宅・夕飯作る、息子のご飯
19時:息子を塾へ送る
19時半:娘を塾にお迎え
20時:娘とご飯
22時半:息子帰宅・だらだらする/原稿仕事
25時:就寝

田島:スマートニュースでは、どのような仕事を?

紫原:業務委託の雇用形態で、いわゆるOLをしています。現在、スマートニュースにはブロガーさんの記事も掲載しているのですが、そのブロガーさんと連絡を取り合うのも私の仕事です。スマートニュースは子育てをしながら働くことに理解がある会社なので、とても働きやすいですね。

田島:ありがとうございます。次は、佐野知美さん。

佐野:『灯台もと暮らし』編集長の佐野知美です。よろしくおねがいします。『灯台もと暮らし』は、“これからの暮らしについて考える”をテーマにしたウェブメディアです。

このウェブメディアの企画・運営や、主宰しているオンラインサロンの運営が主な仕事でしょうか。また、ライターのお仕事もしています。取材で地方を飛び回ることもよくありますが、東京にいるときの1日のスケジュールは、このような感じです。

<佐野さんの1日のスケジュール>

7時:起床、家事をしながら仕事(サイト更新、SNS運営)
9時:家を出る、青山や表参道などで仕事
13時:出社、業務(コミュニケーションが必要なものを中心に)
20時:帰宅、夕食、仕事
24時:就寝

田島:出社時間はかなり遅めですね。

佐野:はい、打ち合わせの時間に合わせて、だいたい13時までに出社しています。午前中は家から出て、気分転換にカフェで作業をすることが多いです。

田島:ちなみに、年間でどれくらい地方にいるのですか?

佐野:そうですね。昨年は旅行もあわせて、100日くらいは東京にいませんでした。出張中はスケジュールがかなり変動するので、朝6時に起きて、昼食・夕食も取材をしながら食べて、1日に5〜6件の取材をすることも。

田島:ありがとうございます。会社の取締役でもある小川さん、エッセイストと会社勤務が半々の紫原さんと、会社に所属されている佐野さん。三者三様のスケジュールでしたね。

ここで、私のスケジュールも紹介しておきます。私は有限会社ノオトに属している会社員なので、1日の流れも会社での業務が中心です。

<田島さんの1日のスケジュール>

7時:起床
8時半:子どもを保育園に預ける
9時:出勤、業務時間
17時:保育園にお迎え
23時:就寝

田島:それでは、最初の質問に移りたいと思います。

妊娠は良くも悪くも「変わる」きっかけになる

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田島:これは、働く女性にとって一番の悩みかもしれません。結婚や出産などの生活が変わったことで、働き方も変化しましたか? まずは小川さん、いかがでしょう?

小川:私は結婚してそろそろ2年目になります。子どもはいないので、結婚しても生活に大きな変化はありません。強いて言うなら、土日にあまり取材を入れないようになったくらいかな。以前は平日に終わらない仕事を土曜日に回していましたが、今はなるべく仕事を入れないようにしています。

以前、定期的に共働き夫婦の女性への取材をしていたのですが、やはり結婚後よりも出産後に、生活スタイルが大きく変わったと話す方が多かったです。結婚だけだと、それほど大きな変化はないのかもしれません。

田島:小川さんの周囲に、出産を期に働き方が変わった女性はいますか?

小川:今度、弊社で初めて産休・育休をとった女性が帰ってきます。うちの会社は出勤時間を決めていないので、午前中から出勤する人は少ないんですよね。彼女は午前中から出社して、早めに退社する予定なので、会社にとって大きな変化になると思います。

田島:子どもができてはじめて知ったことですが、保育園って何時に預けてもいいわけじゃないんですよね。「お子さんの生活リズムが狂ってしまうので、毎日決まった時間までに預けてください」と怒られました。

うちの子どもが行っている保育園は、9時からお散歩が始まるので、遅くとも9時には預ける決まりになっています。子どものために午前中から出社するのも、出産後に起きる生活の変化の1つと言えそうです。紫原さんもお子さんがいらっしゃいますが、働き方についてはいかがですか?

紫原:私は実は、18歳で結婚してから30歳までずっと専業主婦をしていて。子どもができた頃は働いていなかったんです。でも、子どもが小学校に入った頃になると、夫が社会的に機能しなくなってしまって(笑)。「夫の収入がなくなるかもしれない」という危機感から働き始めました。だから、働き方が変わったというより、急に働かなければいけない状況になったという経緯です。

田島:必要に迫られた、ということですね。

紫原:そうなんです。ご縁があって、最初は広報のお仕事を始めました。このとき既に30歳で、「ここで仕事を覚えなければ、年齢的にもう後がない」という思いで必死に働いていましたね。そしたら、2回も救急車で運ばれちゃって(笑)。

田島:お仕事が忙し過ぎたんでしょうか……?

紫原:仕事も忙しかったのですが、子どものために頑張りすぎたというのもあります。お母さんが平日にフルタイムで働きだせば、最初のうち、子どもは寂しいですよね。

穴埋めをしようと、土日に子どもをいろんなところに連れて行っていました。そしたら、ほとんど休みがなくなって、倒れてしまったんです。1年後には、仕事と家庭の両立のために、会社を辞めてフリーランスで執筆を始めました。

田島:ちなみに、離婚をされたのはどのタイミングですか。

紫原:離婚は1社目の会社を辞めた後ですね。そうしたら、コラムニストとしての仕事が増えました。「女手ひとつで子ども育ててます」って言うようになってから、バンバン仕事が来て。やはり、キャラ付けが大事なんだな、と感じました(笑)。

田島:それは何とも、複雑な心境ですね……。他に何か変化はありましたか?

紫原:働きだすと、たまに、周囲のお母さん方からの風当たりの強さを感じることがありました。エッセイストという職業柄、理解が得られず「お母さんが趣味で働いていて、子どもがかわいそう」と言われたこともあります。

でも、子どもに寂しい思いをさせていることは、自分が一番わかっているんです。でも働きだすと、仕事もどんどん楽しくなる。仕事を楽しんでいる自分を責めたこともあります。仕事のペースが掴めるようになるまで、多くの葛藤がありました。

田島:今はどのように育児と仕事のバランスをとっているんですか?

紫原:自分のキャパシティーの 6割か7割までしか仕事を詰めないようにしています。子どもを育てている限り、不測の事態が起きるんですよ。子どもが病気になったり、子どもが学校で突然「明日牛乳パックを持ってきてください」と言われたり(笑)。母親は、そのための余力を残しておかなければいけない、とわかったので、余裕を持つようにしていますね。

田島:とても共感しました。牛乳パックのために、スーパーに走るとか。母親あるある、ですね(笑)。ありがとうございます。佐野さんはいかがでしょうか?

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佐野:私の場合、結婚で変化があった、というより、結婚を期に変化を起こしたというか。結婚をした時にライターの仕事を始めたんです。

田島:それまでは、何をなさっていたんですか?

佐野:大学卒業後は、金融系の会社で働いていました。「物書きになりたい」という夢があったんですが、物書きになるには出版社に就職するしかないと思っていて。新卒のときに出版社に落ちてからは、諦めかけていたんです。ただ、どうしても諦めきれず、24歳で結婚を決めたときに会社を辞めて、再チャレンジ。なんとか、派遣社員として出版社で働き始めました。

田島:ライターのお仕事は、その時から?

佐野:「出版社で雑誌のライターになりたい」と思っていましたが、現実はそう甘くなかったですね(笑)。なかなか社員に登用してもらえず、希望していた雑誌の部署にも配属してもらえず……。

だったら、ウェブから入り口を探そうと考えて、ウェブで1本500円の記事を書いたのが最初の仕事です。なので、まだライターの仕事を始めてから2年くらいしか経っていないんです。

田島:クラウドソーシングを通じて、ライターのお仕事を見つけたんですか?

佐野:クラウドソーシングではなく、ツイッター上で新しいメディアのライター募集があったんです。そこに応募しました。

田島:ウェブでライターを始めることに迷いはなかった?

佐野:たしかに、1本500円の記事だけで生活していくのは大変です。ただ、出版社でのアルバイトと、結婚という生活のベースがあったので、物書きへの挑戦を続けることができました。

田島:なるほど。結婚をすれば自分以外の収入も前提にして、思いきり挑戦できるというメリットもありそうです。

女性ならではの悩みも? 女性ライターの苦労

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田島:次の質問です。執筆や編集を職業としていて、女性ならではの苦労をした経験はありますか? 小川さん、いかがですか?

小川:女性って、前厄と後厄を含めると30代のうち6年間が厄年。私、30代で初めて盲腸になって、最初は切らなかったから再発したんです。昔の人は体調不良が起こりやすい年齢を鑑みて厄年を設定したとも聞くので、やっぱり女性の30代って体の変化を感じやすい時期なのかなと思います。働き盛りだけど体の曲がり角でもあるっていう。

田島:それは災難でしたね……。

小川:そんなこともあって、以前は限界まで働いてしまうこともあったけれど、最近は無理しなくなりました。あと、私自身の苦労話ではないのですが、年下の女性からセクハラ被害の相談をされることがたびたびあります。例えば、取材先で名刺を渡しますよね。その名刺に書かれた携帯電話の番号に直接電話が来て、取材先の方からご飯を誘われる、とか。

田島:お仕事の話ではなさそうですね……。

小川:やっぱり、お世話になった方だと断りづらい、と悩むみたいです。特に取材先だと、原稿チェックでOKがもらえなければ記事を公開できないという力関係を利用して、ご飯に誘っているんじゃないかな、と思います。実際に、取材先から誘われた食事をやんわり断ったら、「掲載なしにしてください」と言われたライターさんもいて。けしからんな、って思いますね!

田島:それは、怒りたくもなります。

小川:あとは、クライアントとの打ち合わせ後に、クライアントの中で一番上司の既婚者からメールでご飯に誘われる、とか。その女性ライターさんは、男女の関係としてなのか仕事としてなのかわからないように誘われるから困る、と悩んでいました。

田島:これって、よくあることなんでしょうか。紫原さんは聞いたことがありますか?

紫原:ありますね。取材先の有識者や会社経営者の方って、どうしても男性が多いんです。だから女性が取材に行くと、そういうことが起こりがち。女性の有識者や会社経営者の方が少ないですからね。

田島:なるほど。取材相手に男性が多いというのは、納得です。紫原さんご自身は、女性ライターとして苦労したことはありますか?

紫原:私自身の体験というより、一般的によく聞く話になりますが、まずは、女性ライターは婚期が遅かったり離婚率が高かったり、という問題。有識者や会社経営者ってカリスマ性があって、魅力的な人が多いですよね。

そういう方々に取材をして、カッコいい話ばかり聞いていると、必然的に男の人の「カッコいいレベル」が上がってしまうみたいで。仕事の忙しさに加えて、さらに特殊な魅力がある方じゃないとカッコいいと思えなくなるのが、婚期が遅く離婚が多い原因じゃないかなと考えています。

小川:仕事を通じていろいろな人と出会えて、刺激が多いので、恋愛しなくても十分楽しいと感じてしまうこともありそう(笑)。

柴原:あとは、記事のコンテンツですね。ウェブに特化したコンテンツって、20〜30代男性向けのものがとても多いと思うんですよ。

田島:たしかに、そうかもしれません。

紫原:少し前に「電ファミニコゲーマー」で公開された、元ジャンプ編集長の鳥嶋和彦さんの記事がバズったのはご存知ですか?

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紫原:1万字以上ある超長編インタビューなのに、当時1400はてブ(はてなブックマーク)が付いていて。めちゃくちゃ読まれているんですよね。インタビューとしても素晴らしい内容なんですが、やっぱり20〜30代男性向けのコンテンツが、ウェブ上で盛り上がるテーマなんだと痛感しました。

そう考えると、女性が一致団結できる話題ってあまりないんですよね。小さい頃だって、男子なら漫画やゲームという、みんなが好きなものがあるけど、女子だと子どもの頃から好きなものがいろいろと分かれています。盛り上がりが可視化されるウェブの世界だと、ちょっと不利ですよね。

田島:バズりやすいコンテンツを作るという点で言えば、男性のほうが有利ということですね。紫原さんの経験上、どのようなネタなら女性にバズりますか?

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紫原:女性の間でバズるネタは、離婚したり、キャバクラで働いたり、セックスレスに悩んだりと言った話題が多い気がします。キレイで徳の高い女性の話は読まれないんです。

田島:「離婚をしたらお仕事が増えた」というのも、通じる部分がありそうですね。お次に佐野さんは、女性ならではの苦労はありましたか?

佐野:あまり思いつかないですね……。ただ、不倫おじさんに出会ったことはあります。

田島:誘われたんですか?

佐野:そうなんですよ。ごく普通にいます。会社を経営されている既婚者でした。その方とお仕事で接点があり、打ち合わせをすることになったんです。ただ、先方から指定された時間帯が夜で、調べてみたらお店の周りはラブホテルだらけ。時間をお昼にしてもらい、打ち合わせだけで帰りました。

田島:露骨ですね(笑)。

佐野:そうやって成功したことがあるんでしょうね……。

田島:逆に、女性だからこそできたという仕事や案件はありますか?

小川:紫原さんのように自分の経験談を書いたり心の内面を書いたりするコンテンツは、女性ライターの方がパンチのあるネタをもっているのではないかと思います。

紫原:確かに。男性のエッセイストさんって、あまり見ないですよね。

小川:この話を男性ライターさんにしたとき、「いや、僕の心情を書いても、誰も読みたがりませんから」と言われたんです。そんなこと言ってないで男性も書けばいいのに、と思う。売れないのかな?

紫原:男性は「文章や日記なんて書いてないで稼げよ」といった昔の考え方を押し付けられてしまいがちなところがあるのでしょうか。

小川:以前noteに自分の心情を赤裸々に書いたら、「問題は、男はこういう気持ちを吐き出せないことなんだよな」というコメントがついていたんです。「男の人も吐き出せばいいじゃん!」って思うのですが、いろんな抑圧があるのでしょうね。

田島:そうですね。言われてみると男性ブロガーさんでも、記事の内容はデータが中心で、自分の気持ちを書き記す方って少ないな、と。

徹底検証! 女性ライターは理想の仕事か

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田島:続いては、「ライターや編集者は女性にオススメの仕事? フリーランスと会社員、どちらが女性にオススメの働き方?」です。

佐野:女性はライフステージの変化で悩みがちだと思いますが、ライターという職業なら、悩みすら武器にできるんじゃないでしょうか。何より結婚や出産の経験談を記事にして生かすこともできますし、お仕事の内容が変われば、刺激にもなります。

私は既婚者で、将来的には出産もしたいなと考えています。生活の変化を不安に思うこともありますが、うまく仕事に結びつけて、ポジティブにとらえていきたいですね。

田島:今までの佐野さんのお話を聞いていると、理解のある会社にいらっしゃるのかな、という印象です。

佐野:そうですね、会社にはすごく柔軟に対応してもらっています。「雇われている」というよりも、個人事業主が集まって会社を作ったので、その延長線上で好きなことをしているイメージです。

「自由にする代わりに、いいコンテンツを作ってくださいよ」と代表は言っていて。お言葉に甘えて、5月から8カ月くらい海外を転々と巡りながら、リモートで働くことになりました。

田島:会社員をしながら世界一周! 斬新です。でも、フリーランスなら、いつでも世界一周に行けると思うのですが、あえて会社員でいるメリットってなんでしょうか?

佐野:チームで仕事ができるという点ですね。実務の面だと、確定申告をしなくていいとか(笑)。あと、会社員のメリットとして、愚痴を言い合えることは大きいです。

田島:世界一周に行くと決めた際、フリーランスになろうとは考えなかったのですか?

佐野:会場に会社の同僚がいる手前、言いづらいのですが(笑)。辞めるべきだと思ったので、初めに代表に「辞めます」って相談しました。そしたら、代表は「ここまで一緒にやってきたのだから、一緒に続けていく道を探しましょう」と言ってくださって。ありがたい限りです。

田島:だからこそ、佐野さんのような働き方が実現できるのですね。今後出産するときなども相談できそうです。紫原さんはどうですか?

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紫原:私は先ほどお話したように、半分OLの仕事をしながら、半分執筆の仕事をしているので、このスタイルをオススメします。フリーライターになって原稿を1本書いても、何万円も貰えないじゃないですか。しかも、コラムとなると実体験をベースにしていないと説得力がないので、量産ができないんですよね。

それでも家族がいるし、たくさん稼ぐ必要があるので、副業をたくさんするようにしました。そのうちのいくつかが安定収入になると、フリーランスでも生活の基盤ができます。

田島:お子さんがいる場合だと、不安定なフリーランスは精神衛生上あまりよくないのではないか、と思ってしまうのですが。

紫原:そうですね。ただ、フリーライターといっても、コラムを書きたいのか、取材記事を書きたいのかでも変わってくると思います。取材記事だけで生活している方は多くいますが、ウェブのエッセイだけで食べていくのは、相当な作家性がないと難しいんじゃないかな。

あと、エッセイは自分の実体験を引っ張り出してつくるものなので、枯渇して何も浮かばなくなるときもあって。そういうときに他の仕事を淡々とこなすことは、自分にとってリフレッシュになっています。金銭的にも、精神的にも副業をたくさん持っている方がいいと思います。

田島:実体験ですが、私は出産を機に働き方を変えたんですね。私が担当しているのは自動車のメディアなので、取材のために山奥のサーキットに行くことも少なくありませんでした。

でも、もし妊娠中に山奥で何かあったら、病院に搬送されるまで、例えば1時間半とか、かかってしまいます。そういうこともなく無事に出産したとして、保育園に預けられたとしても、もし子どもが熱を出して、保育園に登園できなかったら? 

レースやイベントはその日しか行われなくてリスケはできません。妊娠中や子育てをしながら自分が取材記事を書くことに限界を感じて、編集やディレクション中心の働き方に変えていったんです。

紫原:たしかに妊娠中に取材は難しいかもしれませんが、この問題に関しては、周りの人も変わっていくべきだと思います。

田島:どんな点ですか?

柴原:取材って、どうしても予断を許さない空気感がありますよね。「子どもの用事で休むなんてもっての外」というプレッシャーもあります。

そうじゃなくて、ライターが子どもの病気を理由に取材日に休んでも、取材相手や編集側が許容できるようになった方がいいんじゃないかな、という提案です。「お子さんが熱を出したのはしょうがないから、取材日をリスケしよう」って言えるような。

小川:女性イラストレーターさんが取材に行き、取材内容をイラストにする仕事があったのですが、その方にはお子さんがいて。最初の打ち合わせの帰り際に「私は子どもがいるので、急に取材に行けなくなることがあります。そのときはごめんなさい」っておっしゃったんです。

きっと、ちょっと覚悟を持ってそうおっしゃったんだろうなという緊張が伝わってきて。もちろん、そうしてくださいと思っているので、こういう話はお互いに最初にしておくといいなと思いました。

紫原:子どもだけでなく、病気になったり骨折したりして休むということは、誰にだって起こり得ます。このリスクを認めていけば、もっと働きやすくなると思います。

田島:このような配慮があれば、妊娠・育児中のライターも取材に行きやすくなりますね。話を戻しますが、小川さんは「ライターや編集者は女性にオススメの仕事なのか? フリーランスと会社員、どちらが女性にオススメの働き方か?」という点については、どうお考えですか?

小川: 10年ほど前、編集プロダクションや出版社で働く女性の多くは、出産するとフリーランスになっていた印象があります。一部の大手出版社じゃない限り(笑)。会社勤めだと、時間の融通が利かず、長時間労働だったので。でも、最近は少し状況が変わり、会社に復帰する方も多いですね。

田島:私も出産後に会社に復帰しました。会社に復帰することに、あまり違和感はなかったですね。

小川:それって、働き方を選べる状況になったからじゃないでしょうか。会社も働き方の多様化を認めるようになったというか。

田島:社会全体としても、柔軟になりつつあると思います。

小川:大企業も女性支援の制度を設けるなど、積極的に取り組んでいる様子が話題になっていますよね。また、中小企業はむしろ確立されたルールがないので、かえって個人に合わせやすい場合も。

田島:社会全体が良い方に向かっているのかもしれませんね。私は月に一度、お得意様の大企業と編集会議をするんですが、夫が休みの木曜日に開催してもらっています。

その日であれば、子どもが体調不良で登園できなかったとしても、私は会議に参加することができるからです。突然、図々しく「木曜にして」とは言えませんが、それをお願いできるような人間関係を少しずつ築いてきたつもりです。ただ、人間関係を築く前から個人の都合を尊重する空気感ができれば、もっと良いと思います。

先輩女性ライターから後輩へのリアルなアドバイス

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田島:最後の質問です。ライターの女性、もしくはこれから執筆や編集を職業にしようとしている女性に伝えたいこと、キャリアプランのアドバイスがあればお願いします。紫原さんはどうですか。

柴原:一度「ヨゴレ仕事もいける」というイメージがつくと、払拭がなかなか難しいです。というのも、企業のオウンドメディアがブームですが、ブランドを気にするような企業さんは、依頼相手のこれまでの仕事の内容も気にするようなのです。

私のような離婚経験者だけでなく、例えば過激な性風俗の話題は無条件にPVを稼ぎやすく、人目につきやすい、というウェブ業界の風潮はありますが、駆け出しのライターさんが安易にそういった話題を扱うと、それ以降、単価の高い企業の仕事を請けられなくなるかもしれません。生活のことを考えるのであれば、他に副業をするなどのリスクヘッジをするというのも考慮してみるといいと思います。

田島:「エッセイで勝負をしたい!」という書き手は、どうすればいいと思いますか?

紫原:限定的なイメージがつくネタを扱いたいなら、作家を目指した方がいいんだろうと思います。作家であれば、一般的には汚れ仕事と認識されてしまうような経験も、個性としてメディアに取り上げられますから。ただ、本を出しても売れない時代に、本を出したからと言って売れる保証はないですね……。

田島:なるほど。小川さんはどうですか。

小川:ウェブでメインに活動するライターや編集者にとって、広告案件のお仕事は単価が高く安定しているので、重要な収入源だと思います。でも実は、私自身は広告案件が苦手なんです。かといって、私が取り組みたい性暴力の問題に関する記事だけだとお金にならない。

だから会社では、自分の取り組みたい問題を取材しながら広告案件のお手伝いをして、なんとかお金を稼いでいます(笑)。やりたいことをやるためにフリーランスという考え方もありますが、逆にやりたいことをやるために会社に入るのも選択肢の1つではないでしょうか。

田島:小川さんは編集者でもあるので、編集者の目線から見てライターさんにアドバイスはありますか?

小川:いろいろなライターさんと接していて思ったのは、この仕事は「人と人」「人と仕事」の相性に左右されやすいということですね。私が信頼しているライターさんでも、他の担当者の案件ではあまり上手くいかないことがあったりします。

逆に、私と仕事をしたときにイマイチだった人も、別の編集者さんと良い仕事をしていたりすることもありました。ある人からはライターとしてのスキルを評価してもらえなくても、他の人から評価されるということは、よくある。だから、ライターとして頑張りたいなら、自分に合う仕事や編集者さんはどこかに絶対存在するって思ってほしいです。

田島:フリーランスだったら、いろんな編集者さんや編集プロダクションさん、出版社さんとお付き合いをすることも大事かもしれませんね。佐野さんはいかがでしょうか。

佐野:小川さんが先ほど、ご自分の好きな分野だとお金にならないという話をされていたのですが、好きなことから広げていくことはできる、と思っています。実は、『灯台もと暮らし』は立ち上げ当初は広告を入れず、ほかの受託授業で稼ぎながら持ち出しで運営していたんです。最初は地域取材に行くのも、全部自腹。

でも、そうやって無料でやり続けているうちに、いつの間にかスポンサード案件が増えたり、イベントに呼んでいただいたり、書籍出版のお話をいただけたりするようになりました。はじめは収入が0円でも、こういう広がり方があるんだなと思いました。

小川:投資がうまくいった、ということですね(笑)。

佐野:そうです。本当に背水の陣のような、大きな賭けでした。でも、こうやって何か1つを追及した結果、今回のイベントにも参加できているので(笑)。やりたいことを貫く道もあると思います。

田島:投資をするのも、タイミングが大事なんじゃないでしょうか。例えば、子育て中だと難しい、とか。「稼げない仕事をするのは子どものためにならない」などと、どうしてもブレーキをかけてしまうと思うんです。投資できる期間があるとしたら、やはり子どもを産む前かもしれません。紫原さんはどうお考えですか?

紫原:私は30歳まで就職したことがなかったので、いきなり会社に入るのが不安で。最初は、ウェブ系のイベントや勉強会を実施する非営利団体にボランティアとして入ったんです。その団体が年に1回大きなイベントをやるのですが、搬入とイベント当日、撤収で2泊3日かかるので、3日まるまる子守りをしてくれる人が必要でした。

誰かに頼むわけにもいかず、福岡から母を呼んでいたので、毎回飛行機代だけで7万とかかかって、金額的には赤字だったのですが、ここでの活動のおかげで社会人の基礎ができました。ビジネスメールの書き方もこのときに学んだんです。今の仕事にもつながっているので、子どもがいるとしても「今が投資のタイミングだ」というチャンスは、逃しちゃいけないと思います。

田島:お金がどうこうではなく、「自分の学びになる」と思ったときは、投資をした方がいいということですね。小川さんはいかがですか?

小川:田島さんが「子どもを産んだら投資できない」とおっしゃっているのを聞いて、ハリーポッターの著者を思い出しました。たしか、シングルマザーで生活保護を受けながら、ハリーポッターを執筆したんですよね。J・Kローリングの話を出したら稀有な例に聞こえちゃうけれど(笑)、紫原さんの例もあるし、出産してから投資することが絶対できないかといったらそうではないと思います!

田島:そのひとつが、ライターへの挑戦ということかもしれません。ありがとうございました。

ライター交流会まとめ

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ライターというのは、自由度の高い職業であるのは間違いない。ライフステージの変化が大きい女性にとって、働きやすい環境が実現しやすいと言えそうだ。働く女性にとって、結婚・出産はキャリアの「妨げ」だと思われるかもしれない。

しかし、ライフステージの変化が時に「武器」になる職業も確かに存在する。ライター業もその1つだろう。クライアントや編集者、家族といい関係を築くことが、女性ライターとして「武器」を磨いていくことにつながるなんて、ライターはやっぱり素敵な仕事だとあらためて感じた。

(ミノシマタカコ+ノオト)

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