“専業主婦 = 無職扱い”? 男前なほどアッサリ移住を決めた女性のフィンランドでの働き方と生活スタイル!
男前な決断力でフィンランドへ転居
「サンタクロースとムーミンで有名なフィンランドに住んでいます」と言うと、どこかドリーミーな印象を与えてしまいがちですが、私がフィンランドに引っ越してきたきっかけはそんなかわいいものではありませんでした。
東京ではWebエンジニアとしてバリバリと、本当に音が出そうなぐらいバリバリと働いていました。零細ブラック企業や倒産寸前のゲーム会社などで働いていたので、若さと体力を武器になんでも経験させてもらえましたし、そのあとに転職した安定企業では繁忙期以外がマイルドすぎた反動でプライベートでも副業をしていました。主に古いコネクションを使った簡単な開発業務やライター業です。
そのままキャリアを積めれば良かったのですが、忙しい中でも片手間でできる恋愛を、とうっかり遠距離恋愛、それも国際恋愛を始めてしまったのが誤算でした。
私自身はしばらく遠距離を続けて数年したら一緒に住めばいいか、ぐらいの軽い気持ちでいたのですが、今では夫となったフィンランド人と付き合って間もない頃、さっそく「この先どうしようか?」と聞かれる展開に……。
日本が大好きで住みたいけれど日本語をまだまだ勉強中の普通の会社勤めの彼と、英語なら話せるしどこでもできるWebの仕事をしている自分。
一見すると将来を話し合う恋人同士のロマンティックなひとときのはずなのに、私はとっさにその場でどちらが引っ越すのがより効率的、低コストかなどを計算をし「じゃあ私引っ越すよ」と男前にも答えてしまっていました。そうして仕事を辞め、フィンランドに引っ越してきました。
専業主婦などという職業は存在しない、ただの無職だと知る
引っ越して結婚をすると、ビザの申請やら保険証の発行やら、必要書類がどっさりとやってきました。仕事に関しては就労ビザがおりるまで時間がかかるので「現地語であるフィンランド語を習得して、それからゆっくり就職すればいいかな」と思っていた私はそこである事実に気付きました。
職業選択欄に『主婦』がない…………! 結婚して家にいる私は、不本意ながらも自分は専業主婦であると思っていたのですが、フィンランドの書類にはそんなくくりはなく、「会社員」「役員」「学生」「リタイア生活」それから「無職」、それのみです。つまり仕事をしていない私は、ただの無職です。
これには少なからずショックを受けました。日本ではフィンランドの福祉が手厚い点ばかりをメディアが取り上げ、「子育て家族に優しく、男性も家事に協力的で女性も男性もみんな平等」というようなイメージを与えています。
ですが実際フタをあけてみると、男性も女性も働き方が平等なのは、共働きではないと豊かな暮らしが送れない家庭がほとんどだからであって、決して女性が優遇されているわけではありません。
もちろん言葉としての「専業主婦」は存在しますが、一職業としてはいまいち認められていないようです。
実際にしばらく家にいると、夫の実家から「毎日どうしてるの?」と心配されたこともありました。私としては毎日大好きな料理をしたり、新居の整理を楽しんでいたのですが『無職で一人で家にいる = 不健康』となんとなーく思われている気配がして、「このままじゃいかん」と仕事を始めることにしました。
とはいえ最初の数ヶ月は就労ビザは申請中でしたし、フィンランド語習得の為に語学学校にも通い始めたので、その傍らでできる仕事を、と日本でしていたようにフリーランスとして仕事を受注し始めました。
フリーランスと語学学校の両立生活
空き時間で自由に作業ができ、休暇に合わせて受注量を調整できるフリーランス生活は、始めて見るとなかなか快適でした。
我が家の場合は、夫も普通の会社勤めでありながらリモートで仕事をしていて、出勤するのは週に1回程度。朝はゆっくりなので、2人そろってしっかりと朝食を食べます。
東京にいた頃は私が働き詰めで食事もまともに摂れないのをいつも心配そうに見ていた夫でしたが、いまはそんな生活の陰もありません。
朝食が終わると夫は仕事、私は語学学校の宿題に取り組みます。これが結構なボリュームが出るので1時間以上かけることになりますが、その合間にメールチェック。
日本では夕方なのでその日の内に返さなければいけないメールにレスしたり、ちょっとしたライティングならここで済ませてしまいます。
それが終わるとすぐにランチの用意です。学校がない日は近所のレストランにランチを、これも夫婦そろって食べに行きますが、学校がある日は簡単な昼食をとりばたばたと出かけていって、15時か16時に帰ってきます。
私はそこから仕事に取り組みますが、夫の仕事が終わるのも同じ頃。仕事が早く片付いた日は一緒に散歩にでかけたり、夏場だと日が長いので自転車で遠出したり近くのビーチに泳ぎにいきます。むしろ夏場はこの楽しみの為に早起きして仕事を済ますこともあるほどです。
「平日昼間から夫婦そろってぶらぶらしてるなんて無職だと思われるんじゃないか」と思われそうで気が引け、最初は近所をうろつくにもびくびくしていたのですが、実際は同じようなカップルを見かけることもまったく珍しくありません。
若い働き盛りのカップルが午後早い時間からジョギング姿で出かけていったり、犬の散歩をしたり。もちろん職業柄平日がお休みの人もいるのかもしれませんが、うちの夫の会社のようにリモートワークを推奨していたり、終業時刻が16時という会社がほとんどだからかもしれません。
残業もほとんどなく、平日のプライベート時間もしっかり確保されているので、フィンランドでこそ副業としてのフリーランス生活が送りやすいのではないかとひそかに思っています。
実際のフリーランス生活
フリーランスになろうと固く決意したわけではなく、海外在住ゆえ仕方なくフリーランスの道に流れた私。最初は日本で働いていた頃のようにがむしゃらに働かなければうまく行かないと思っていたのですが、実際は仕事量を調整できるので、学校の長期休暇などで生活パターンが流動的になりがちな私には合っているのだと気付きました。
また、フリーランスの良いところは仕事量を増やそうが減らそうが、それがキャリアとなって確実に積み重なっていくことだと思います。
普通の会社勤めではクライアントからの評判を次への会社へ持ち越すことは難しいですが、フリーランスの場合は、ランサーズなどのサービスの発達のおかげで実績や評価がよりダイレクトに見せやすくなっています。
よい結果を残せばその分受注しやすくなりますし、また育休や時短勤務から復帰してもギャップだと取られる心配もありません。
私の場合、就労ビザはおりたのでもしかしたらこの先就職するかもしれませんが、いまいちEUの経済情勢を信じていない私としては、夫が現地通貨であるユーロを、私が日本円を稼いでリスク分散するのが理想なので、就職しても日本企業相手のフリーランス生活は何らかの形で続けようと思っています。