「起業の小学校」として利用者に寄り添う、大宮の『コワーキングスペース7F』

「起業の小学校」として利用者に寄り添う、大宮の『コワーキングスペース7F』
埼玉県・大宮に構える『コワーキングスペース7F(ナナエフ)』を運営する代表の星野 邦敏さんは、もともとは東京で廃校になった中学校の教室でIT企業としてオフィスを構えていました。ですが、2011年の東日本大震災を機に取り壊すことになり、「自らが生まれ育った街で周囲の人とコミュニケーションを取れるビジネスモデルを始めたい」と思いコワーキングスペースをオープンさせたとのこと。地元への愛情が深い星野さんが語る、コワーキングスペースに寄せる想いとは?
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まだ完成し切っていない“黎明期にいるユーザー”に携わることが運営の喜び

2012年12月にさいたま市で生まれた「コワーキングスペース7F(ナナエフ)」。大宮駅東口から徒歩1分。名前の通り「7F(階)」にあるコワーキングスペースです。

受付を通ると、外の喧騒とは違い少し落ち着いた、けれど人々の息づかいの聞こえる広々としたオープンスペースが広がります。

WordPressの著作などで有名な運営代表の星野さんに、設立のきっかけや運営していく上での想い、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

『コワーキングスペース7F(ナナエフ)』ワークスペース情報
■ 住所: 〒330-0802 埼玉県さいたま市大宮区宮町1-5 銀座ビル7階
■ アクセス:大宮駅東口徒歩1分
■ 営業時間:年中無休 朝7時~夜23時
■ 利用料金:一時利用2時間500円、1日1,000円 / 月額会員5,500円より
■ 特徴:貸し会議室、電源、Wi-Fi、Web系やビジネス系の蔵書、フリードリンク、無料貸し出し機器あり

生まれ育った街で、『自分が一番早く始めた」』と言い切れる業態を

星野さん

ー まずは、コワーキングスペースを始めようと思ったきっかけを教えていただけますか?

コワーキングスペースを始める直前までは、東京都荒川区の廃校になった中学校の1教室にIT企業としてオフィスを構えていたのですが、2011年の東日本大震災がキッカケで建て壊しが決まり、建物が利用できないことになりました。

起業当時の2008年には東京都北区赤羽のインキュベーション施設にオフィスがあり、周りの方たちとの関わりがあったのですが、自分たちの会社のオフィスを新しく探さなければいけないとなったときに、やはり周りの人たちとコミュニケーションを取れるビジネスモデルが欲しかったんです。

自分自身もコワーキングスペースを利用者として使ったことはありましたが、2011年や2012年の頃は地方都市ではコワーキングスペース自体の数はまだ少なかった。

いまコワーキングスペースを始めたら、その地域の人たちにとっての「初めて」になれる。それを自分が生まれ育ったさいたま市でやるというのが、とても魅力的だなと思いました。

オープンソースのサーバーインストール型CMSの『WordPress』の日本でのシェアが低くまだ流行っていなかった時からコミットしていますが、まだ完成されていない黎明期に何かを始めるのって、関わっている人たちも面白いんですよね。

業界自体が成熟していなかったので、このタイミングで成功する人はまだ少ないな、というのもありました。優秀だから成功するのではなく、タイミングが重要であり、やるかやらないかを決めるタイミングは、今だと思いました。

それに、ITで起業していた当時から出資も受けておらず外部借入も無いので、コワーキングスペースを自分の生まれ育った地元に戻って始めるという意思決定について外部からの経済的圧力が無かった。

コワーキングスペース立ち上げの初期投資も自分がゼロから立ち上げた会社にあるキャッシュから出せる。経営している会社の規模を考えても、この規模だったらリスクも負えるなと思いました。埼玉県さいたま市の中でも地域的な規模、立地などを考え、場所を大宮駅に決めました。

7Fが掲げる「3つのテーマ」

ソファー

ーどういった方が利用されるのでしょうか?

利用されるのは学生の方がだいたい1割で、あとはフリーランスの方やサラリーマンの方などです。以前はさいたま市役所に勤める方々の横断的な有志のイベントで利用していただいたりもしました。

ただ利用者が増えていって、今では1日にドロップイン利用(1日利用)を含めて80人前後、いつでもご利用できる月額会員だけでも100人以上在籍する規模になり、日によっては利用をお断りしなければならないことが出てきたんです。

そこで今年の3月に1つ下のフロア、6Fで「貸会議室6F」と「シェアオフィス6F」を新たに始めました。現在は、固定席を持ちたい事業者にはシェアオフィスを、大人数の打ち合わせやグループワークなどは会議室を利用してもらっています。

7Fでは3つのテーマを掲げています。1つ目が「創業支援・就労支援」。何かをやりたいことがあって起業を考えている人たちへ、インキュベーションマネージャーとしての役割を果たすことを目的としています。

以前は起業したい人たちは同じ場所に集まることが多かったのですが、現在は不特定多数の人が集まる場へ、集まる場所がシフトして来ているんですね。

まだやりたいことが決まっていないけど起業したいという人は想定していないのですが、選択肢を増やすためのインプット量を増やす目的でいろんな人に話を聞くのに使ってもらえることも、ありだとは思います。

「7F大学」という名前で、起業に必要な知識の講義を行う活動もしています。もう一方の「就業支援」ですが、日本は新卒でない人の社会への出方が難しいですよね。

私自身も大学卒業後は実家に5年くらい引き籠もって無職だったので、初めてサラリーマンとして会計や税務の仕事で税理士法人に就職したのが27歳の時だったのですが、それまで社会との関わりがない人がいきなり会社に就職するのは心理的にちょっとハードルが高い。

しかも当時の私もそうでしたが、不利な状況なのに職を選ぶ傾向がある。そういった人たちが、さまざまな仕事を行なう人たちの様子を目にしたり、ここにくることで外に出るための準備運動になったりすればいいかなと思っています。

作業する女性

もう1つが「子育て支援」です。日本の女性の働き方は、年齢階級別労働力率を表したグラフ(縦に労働人口、横に年齢)で見ると「M字」のカーブを描きます(ちなみに諸外国は逆U字)。

出産したときに子育てのため、どうしても一度職を離れてしまう。そういった方々が再び働き始めたときの「準備運動」、たとえばここにきて本を読むだけだったり、週1~2回くらい来ることでも気分転換にもなる。

そういう風に利用してもらってもいいと思います。以前は仕事をしているオフィスの一角に、子どものスペースを設けていました。

しかしながら、利用者数増加に伴い、より創業支援や地域活性化の側面が強くなってきたので、子どものスペースを設けるのは難しくなってきた。

そこで、現在は大宮駅西口にある『mama’s smile』と提携をして、7Fを利用する前提であれば託児料金を半額で利用できるようにしています。

最後の1つが、「地域の課題解決の場」。地域が抱えている課題を解決したい人たちが、集まることのできる場所としての役割です。

行政の中心である浦和にはそういった施設がいくつかあるんですが、意外と大宮には少ないんです。また、他の地方都市のモデルケースになるということも意識しています。

さいたま市は地方都市としては元気な状態を維持できていると思います。そして地方都市のコワーキングスペースは東京のコワーキングスペースのように業種や趣味や活動の種類などの「属性」でわけると、採算を取るのが難しい。

民間企業として採算を合わせて空間を維持成長させていくためには、「地域」に絞ってなにかを起こしていかなければいけないと考えています。

そして、最近は、地域活性化や地方創生が話題に上がることも多いですが、地域活性化の前提として、若い人がその地域に残りたくても仕事が無いということがあると思うんです。

このとき、コワーキングスペースがあることで、創発的な活動やコミュニケーションが増えて、その地域に産業が生まれ、仕事が生まれ、売上が上がって、雇用が生まれ、人が定着して。それからでないと地域活動はなかなかに難しいと考えています。

少子化と高齢化が進み限界集落化する都市も増えていくと言われている中で、コワーキングスペースが地域活性化や地方創生のプラットフォームの1つになれば良いなという想いがあります。

現在さいたま市の人口は現在128万人ですが、人口30万人以上の規模の地方都市におけるモデルケースとしての意識をして運営していますね。

「起業の小学校」から「起業の中学校」までを

作業スペース

ー7Fの今後のビジョンはどのように考えられていますか?

利用する人の層を増やしたいと思っています。3月に会議室(貸会議室6F、シェアオフィス6F)を作ったので、使える人の層を広げられるようにはなりました。

7Fの目的と売上って矛盾しているんです。創業支援してその規模が大きくなったらここを出ていかなければならない。つまり、中長期的に見たら、空間としての目的を達成すると売上が落ちて採算が合わず場所が維持できない。それが課題だと思っていました。

そこで、創業後ある程度の会社規模までは利用してもらえるように貸会議室とシェアオフィスも設けました。

今までは「どう起業するか」までの基本的なところ、小学校までって感じでしたが、6Fは小学校を卒業したあとに進む中学校といった位置付けです。「義務教育まではここでできるよ」みたいな。

そのあと会社が大きくなって6Fも出るような規模にまでなったときに、「7F出身です、卒業生です」って言ってもらえたらいいかな、と思っています。

■ 利用者の方の声

ウェブ開発・制作の仕事をしています。法人ですが一人で運営しています。7Fは事務所を持たない選択をしたときに、仕事をする場所を探していて見つけました。

最初は料金や場所などの条件が合っていたので利用していましたが、星野さんの人柄もあって利用者との関わりの中で新しい仕事が始まるなどがありました。これは、利用しようと思った当初は予想していなかったことでしたね。

(おわり)

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