フリーランスの妻は何を思う? 妻のホンネ、徹底取材。
フリーランスの夫を持つ、妻の本音とは!?
家族を持つフリーランスにとって、家族からの理解は欠かせません。会社員からフリーランスになる。それだけで、日常生活にも大きな影響を及ぼすでしょう。
フリーライターの三河さんは、2社での会社員経験を経て独立しました。現在は3人の子どもを持ち、独立したのは2人目のお子さんの出産を控えた時期だったとのこと。そんな状況で「独立する」と言われ、奥様はいったいどう感じたのか。
独立から5年が経った今、その後の変化や抱えている不安などを奥様に伺ってみました。
Q.「独立する」と言われたとき、率直にどう思われましたか?
特に男性にとっては、仕事って人生のうちとても多くの時間を費やすものですよね。だからこそ妻としては、喜びを得て、楽しんでやってくれることが一番嬉しいなと。あとは、ちゃんと支えていければいいなと思っていました。
昔から独立することを予見していたとは驚きですね。三河さんご夫婦は、仕事を通じて出会ったと言います。その働きぶりを見ていたからこそ、結婚当初から“覚悟”ができていたのかもしれません。
Q.フリーランスとしての働き方を継続できると思っていましたか?
だから『継続できると思っていた』というより、『継続できると信じていた』という感じでしょうか。主人自身が望んでいることなら、後ろ向きになってもしょうがないので信じてあげようと、思いを合わせていた記憶があります。
信じていた。だからこそ、三河さんご本人もそれに応えるため、必死に取り組んだのでしょう。むしろこれだけ信頼されると、プレッシャーも大きそうです。
Q.三河さんの知らないところで、奥様もいろんな苦労があったのではないですか?
水面下でそれとなく親戚を当たってみたり、なけなしの貯金を崩したりしたことも。金利の高い消費者金融を最後の砦としてやむを得ず提案したこともあるのですが、『それだけはやめてくれ』と猛反対されましたね(笑)。お金がなければ即生活に響くので、私なりに『なんとか切り抜けたい』と必死だったんです。
支払いが滞っているなんていうこともあって、不測の事態にも備えて置かなければいけませんから。しかし知恵は出てくるもので、節約などだいぶ主婦力が身につきました。今となっては、それもまた楽しい思い出ですね。
やはり、お金については苦労された様子。奥様による節約、まさに“縁の下の力”ですね。
Q.独立してから三河さんが「良くなった点」「悪くなった点」を教えてください。
でも自分の時間が持てる分、特に平日は夕食など子どもたちと食卓を囲むのが難しいですね。仕事に集中していると、呼んでも部屋から出てきません。特に男の子は親離れも早いですし、私としてはたわいもない日常を語り合える食卓での時間が貴重なので、できるだけ一緒に過ごしたいかな……と。贅沢な悩みですけど。
そして、自宅で仕事しているとオン・オフの切り替えが難しいようで、ピリピリしてるときはこちらにも緊張が走っています。電話対応中に子どもが騒いでいれば、それを静めるのは大変。『ごはんできたよ』『お風呂が沸いたよ』なんて声をかけるときも、タイミングに気を使います。自分の時間ができる分、悪いというわけではないですが、どうしても難しい部分なんでしょうね。
独立すると、いろんな変化が起きるもの。その良し悪しは人によって異なりますが、確かに自宅に仕事が入ってくると、日々の生活にも影響があるのでしょう。
Q.家庭環境全般で見たとき、独立前後で大きく変わったことがあれば教えてください。
ともすると外勤している私より主人の方が在宅しているので、保育園から緊急時の連絡を受けた際のお迎えや、長男の友達が来たときの対応などしてくれます。子育てのサポート面で安心感は強まりました。そして何より、やはり“家にいてくれる”ことは何かと安心ですよね。
特に3.11の地震では強く思いました。緊急時に家族が近くにいることは、何よりも命にかかわる重大要素ではないでしょうか。やっぱり男性が家にいると心強いですよ。お隣さんにも、『何かあったら、うちは主人がいるから頼ってね』と言っています(笑)。子を守らなきゃいけない親としての責任が、私だけでないのは助かります。
ご主人がいることの安心感、家庭をお持ちの方であれば納得されるのではないでしょうか。お子さんが小さければ、緊急対応など分担できるのもメリットと言えそうです。
Q.子育て環境として、夫がフリーランスであることのメリットとデメリットは何でしょうか?
反対に、デメリットは『土日がオフ』などハッキリ決まっていないので、1日じゅう子どもたちと遊ぶ機会がなかなか持てないことかもしれません。時間を作るのも自分次第だと思うので、最近は土日のどちらかを必ず在宅してもらうなど、子育ての協力要請をしているところです。こちらから言わないと、すぐ走ったり泳いだりしに出かけてしまうんですよ。他にも突然温泉に行くなど、自分の時間で動いて満足感を得ているタイプなので(笑)。
将来、子どもたちも『フリーランスになりたい!』なんて言い出すかもしれません。そのときは、やりたいことがあるなら応援します。でも、自分で責任を取れない、あるいは独立しなくてもできるような甘いものなら反対。我が家は“プレゼンテーション式”の教育方針なので、私たちを納得させられなければ負けです。こういう考えができるのも、主人がフリーランスだからなのかもしれません。
プレゼンテーション方式、お子さんも小さいうちから鍛えられそうですね。お話を聞くと、フリーランスという働き方は、子育て世代にこそマッチしている気もしてきます。
Q.最後に、フリーランスの夫を持つ人へ一言お願いします
洞察力のある女性ならば、本人が『独立したい』と言い出す前になんとなく察知できるのではないでしょうか。だからこそ相手のことをよく見て、自分が妻としてはどうしたいのかを考えておくこと。何か意見があれば、ちゃんと伝えることも大切ではないでしょうか。フリーランスって、働くのは本人1人ですが、夫婦あるいは家族で支え合ってこそ成り立つものなのだと思います。
働きぶりを含めて相手を理解しているというのは、フリーランスを夫に持つうえで確かに安心なのかもしれません。もし突然、夫に「独立する」と言われたら、フリーランスの夫を持つ生の声は、とても参考になったのではないでしょうか。
奥さまの本音を聞いたフリーランスはどう思った?
最後に、フリーランスである三河さんご本人に感想を伺ってみました。
まず、こんなインタビューが行われていたことに驚きました……。ドキドキしながら読みましたが、一応ちゃんと夫として、父親として認めてもらえているようで安心です。しかし自分ではできているつもりでも、まだ妻から見れば“もっとこうしてほしい”ということが山ほどあるんですね。確かにレジャーでも“パソコン持参”ということが多くて、がっつり1日中遊ぶという機会は、厳密に見ると少ないなと反省しています。
私は万能な人間ではありませんし、苦労をかけていることは承知しています。消費者金融はもはや笑い話ですが、あの頃はそこまで妻も追い詰められていたんですよね。独立したばかりの頃なんて、今思えば「よく離婚されなかったな」と思いますよ。
フリーランスを選ぶことで、時間や場所にとらわれない自由な働き方を実現できます。家族がいれば、一緒に過ごせる時間が増えるでしょう。趣味に充てる時間を増やせるかもしれません。
会社勤めという、ある種の安定を捨てて飛び込んだフリーランスの世界。成功するには、本人の努力はもちろん、それを支える人の存在があることに、あらためて気付かされました。
(おわり)