複業の実践者が語る、複数の名刺をもつ生き方

複業の実践者が語る、複数の名刺をもつ生き方
従来の「副業」ではなく、複数の仕事を並行してかけ持つとことを「複業」といいます。8月22日(土)に代官山蔦屋書店で、この複業をテーマにトークセッションが開催されました。ノマドワーカーとして一躍有名になった安藤美冬さんをはじめ、複業を実践されている4名の方をお迎えし、仕事や生活について赤裸々に語っていただきました。
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”複業”を実践する3名にその仕事・生活を聞く

7月20日(月)より代官山蔦屋書店にて開催されていた『クラウドソーシングで変わる、新しいクリエイターの横顔。』フェア。クラウドソーシングサービス「ランサーズ」で生まれた日本中のあらゆる商品が展示・販売されました。

フェア内の関連イベントとして、8月22日(土)に開催されたトークセッションの様子をご紹介します。セッションテーマは『”複業”時代の到来 2枚目の名刺を持つ生き方とは?』です。

「1人につき仕事は1つ」の当たり前が崩壊した現在。異なる複数の職業をかけ持つ「複業」が話題を集めています。トークセッションでは「複業」を実践している4名の方をお招きし、日々の仕事や生活について語っていただきました。

登壇する4名は、プロのウェイクボーダーとしてW杯出場経験もあり、映像クリエイターとしてRED BULL公式HPの動画制作も手がける田口勇樹さん。フリーランスとしてグラフィックデザインを手がけながら代官山蔦屋書店でデザインコンシェルジュとして勤務する籔田千晴さん。地元・山形県で雑貨屋を経営しながら、地域企業のプロダクトデザインを手がける高橋天央さん。ノマドワーカーとして一躍有名になり、コラム執筆やイベント出演など幅広く活躍する安藤美冬さんです。

※ トークセッションの全容を書き起こしでお届けします。

テーマ:『“複業”時代の到来 2枚目の名刺を持つ生き方とは?』 代官山蔦屋書店トークセッション
■ パネラー
・プロウェイクボーダー&映像クリエイター / 田口 勇樹
・代官山蔦屋書店デザインコンシェルジュ&クリエイター / 籔田 千晴
・雑貨店経営者&クリエイター / 高橋 天央
・株式会社スプリー 代表取締役 / 安藤 美冬

■ モデレーター
・ランサーズ株式会社 代表取締役 / 秋好陽介

それぞれの複業に至るルーツを探る

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秋好:本日のトークセッションのテーマは『”複業”時代の到来 2枚目の名刺を持つ生き方とは?』。複数の異なる仕事を並行してかけもつ「複業」が今注目を集めています。そこで、実際に複業生活を送っている4名の方をお迎えしました。

1人目はプロのウェイクボーダーとして活動しながら、映像制作を手がけている田口勇樹さん。ウェイクボーダーとしては2012年にW杯に出場。映像クリエイターとしてはRED BULL公式HPの動画制作も手がけていらっしゃいます。

2人目はここ代官山蔦屋書店のデザインコンシェルジュでありながら、フリーランスのクリエイターのご経験をもつ籔田千晴さん。

3人目は地元の山形県で雑貨店を経営しながら、企業のプロダクトデザインも行なっている高橋天央さん。

そして最後は、情熱大陸でノマドワーカーとして取り上げられ一躍有名になった安藤美冬さんです。本日は、みなさんよろしくお願いします。

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秋好:ではまず最初にお聞きしたいのは、複業を始めたきっかけについて。僕が一番気になるのは、プロウェイクボーダーの田口さんなんですが、いったい、どんなタイミングで映像クリエイターになられたんですか?

田口:最初から映像クリエイターをやろうと思っていたわけではないんです。ウェイクボードというスポーツをプロとしてやっていたので、ライダーが出演するDVD制作とかで動画撮影をすることがよくあった。でもプロのカメラマンの人たちは、来てちゃっちゃっと撮影したら終了。すぐ、どっかに行っちゃって。制作に必要な部分以外は彼らは撮ってくれないので、「じゃあ、自分達でもっと撮影しようよ」と、遊びでカメラを回し始めたのが最初のきっかけですね。

秋好:じゃあ、もともとは違うプロのカメラマンの方に撮ってもらっていたんですね。それを見て、プロカメラマンの方がいない時は自分で撮ってみようと。じゃあ、趣味が高じてみたいな話なんですね。

僕だって写真とかビデオとか楽しいなと感じることはあるんですけど、それを「仕事にする」ってのは繋がらないというか非連続な感じがするんですが。実際に仕事に変わったのはどの段階だったんですか?

田口:はっきりと仕事に変わったなと思ったのは、自分のDVDを制作したタイミングです。ウェイクボードのDVDですね。ある会社の方からウェイクボードのDVDを作りたいと依頼をされたんです。ただ、その予算がすごい莫大な金額だったので、当時の僕はビビってしまって。ちょっと今のままでは制作できないなと思って、それで映像制作を勉強しだしたのが大きかったと思います。

秋好:すみません。ちょっと僕の興味で恐縮なんですけど、プロのウェイクボーダーって具体的に何をしているんですか? 各地をまわって戦というか大会があるんですよね?

田口:そうですね。戦はありますね。基本的に国内をまわります。大会は大会で、映像は別のときにライダーを集めてやっています。お互いの時間でいうと大会のほうが多いかもしれないですね。

秋好:なるほど。ありがとうございました。

新しいブランドを立ち上げるために、会社を退職。

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秋好:高橋さんの複業のきっかけは何だったんですか?

高橋:以前は家具の会社に勤めて設計を担当していました。そこで毎日ゴミとしてたくさんの廃材が生まれていくのを見ていたんです。「この廃材を使って何か出来ないかな」と考えて、社内で何かブランドを立ち上げようと思ったんです。

ところが田舎の会社だったからか、創業者の90歳のおじいちゃんから「待て!」がかかって。「おまえは、うちの会社で勝手に何をやっているんだ」と。やりたいなら外でやれと言われました。独立とか複業とか全然、興味がなかったんですけど、ブランド立ち上げのためには独立せざる得なかった。食っていくためにデザインをやり始めたといった感じです。

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秋好:なるほど。一番最初は1つだけだったんですか? 現在の複業のスタイルが生まれたのは?

高橋:そうですね。自分で作ったオリジナルブランドだけをやりたいと当初は思っていたんですけども、それだけでは食っていけないので。今までの自分のキャリアを生かして何か出来ないかと考えた時にデザイナーが出てきました。

秋好:そこで複業が生まれたという感じなんですね。仕事の時間はどうですか? 同じ場所で2つの仕事をしているので難しいかと思いますが。

高橋:デザインをしている時間のほうが長いですね。

秋好:ということはあまりお客さんが来ないんですか?

高橋:はい。(笑)売り上げのメインはネットでの販売ですね。

今までの自分にない新しいチャレンジ | 1日1投稿が蔦屋書店員に繋がった

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秋好:では、籔田さんはどのようなきっかけだったんですか? ここ代官山蔦屋書店がオープンしたのが2011年ごろだと思うんですが、デザイナーと蔦屋書店員ってどっちが早いんでしょうか。

籔田:デザイナーは大学を出てからすぐになったので、少し前ですね。(笑)

秋好:5年くらい前ですかね。

籔田:そのくらいにしておいてください。はい…ちょっと昔の話になります。

秋好:では最初にデザイナーとしてエディトリアル的なものを収めていて、なぜ蔦屋のコンシェルジュのキャリアを手にしようと思ったんですか?

籔田:ずっとフリーランスで活動していたんですけども、2010年くらいにレギュラーで持っていた雑誌がパタパタと3本ほど無くなっちゃったんです。「これからどうしようかな〜」と。新しく営業活動を始めるっていう道もありだけど、また仕事を請け負うことに自分でも飽きてきていたんです。

それで、自分で発信者になってみようと思い始めたんです。何が出来るかは分からないけど、写真だったら撮れるかなと思って。それで毎日1日1枚写真を撮ってコピーをつけてSNSで公開することをスタートしたんです。すると、何か周りが動き出して、交わって、蔦屋書店の求人を目にするに至りました。

秋好:個人で365日Facebookに写真を投稿するという活動から、蔦屋書店のコンシェルジュに繋がったんですか?

籔田:直接ではないんですが、もしじっと家にいたら、繋がってなかったなと思います。写真を投稿しているうちに、何となく周りが動き出していったというか、私自身も考え方が変わったり、新しい方と知り合っている内に蔦屋書店の求人が目の前に出てきたという感じでした。

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秋好:籔田さんが複業をはじめて、苦労話というか具体的に一番困ったことは何ですか?

籔田:困ったことは、いつもやることがいっぱいあって、どう片付けていくのかということ。それと、ずっとクリエイターで、いつも遅寝遅起きの生活をしてきたので、早起きすることですね。

蔦屋書店に務めるにあたって、どうやら早朝勤務があることを知ったんです。これは早起きをするチャンスなんじゃないかなと思って、あえてすごく苦手な一番早朝の朝7時勤務のオープンスタッフに挑戦してみることにしたんです。ただ、いつも朝4時起きで、冬とか暗くて寒くてちょっと泣きそうになるんですけども。

秋好:僕もエンジニアなので分かるんですけど、大抵は昼頃に起きて、夜中まで作業をして。デザイナーもエンジニアも朝が苦手な人多いじゃないですか。そこの部分はうまく切り分けられたんですか? 早朝4時ですよね。今、夜の7時回ってますけど眠くないんですか?

籔田:何となく大丈夫です。オープニングスタッフって何人もいないので、私が寝坊をすると2号館が開かないみたいなことになっちゃうので。

秋好:自分にプレッシャーをかけて追い込んでチャレンジをしている感じですね。

籔田:そうですね。でもすごい高揚感もあったりして。もう4年も経つんですけども、まだ早起きに慣れてなくて、朝早い時間に道を歩いていると「早起きしている自分ってスゴいな」と思います。

2つの仕事の切り替えが複業の1つの課題点

秋好:高橋さんは複業をしていての苦労話などはございますか?

高橋:デザインをしていると、かなりのお客さんがくるのですが、その時に作業の手を止めないといけないことですかね。集中してしかめっ面のところから笑顔に切り替えるのはすごい大変ですね。

秋好:いつもすごい笑顔な感じがしますけど、しかめっ面して仕事をしているんですか?

高橋:めっちゃいらいらしてます。無表情のような時もあるし。

秋好:でも、今後お店が繁盛することになったら苦労しませんか? 今後はしかめっ面から笑顔の課題、どう乗り越えるんですか?

高橋:そしたらスタッフを雇うなど考えていこうかなとは思います。

秋好:なるほど。ということは、バランスを考えたら繁盛すればいいってことでもないんですね。

日中はアスリート。夜はクリエイターとして働くことの苦労とは

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秋好:田口さんはウェイクボードと映像制作。むちゃくちゃ苦労しそうな感じがしますが、いかがですか?

田口:練習時間の合間を縫って映像編集をしなあかんというのがちょっと苦労します。大会に出るための海の練習で結構、体がボコボコになっちゃうので。

秋好:練習場所は西宮にお住まいなので大阪湾になるんですかね。でもウェイクボードの練習と映像制作の時間はどうやって確保しているんですか?

田口:練習場所は大阪湾ですね。制作の時間は、夜ですよね。昼はウェイクボードをして、終わったら夜はパソコンで作業みたいな。だから、全然遊んだり友達と会ったりという時間はないですね。

秋好:いつも何時くらいまで働いているんですか?そもそもウェイクボードって早起きなんでしたっけ。

田口:仕事はだいたい1時くらいまでしてますね。ウェイクボードの練習時間は、実は結構自由に調整できるんですよ。行ける時に海に行って、1〜2時間練習して、自宅に戻ってといった感じですかね。

秋好:分かりました。他に苦労話はありますか?

田口:作業時間もそうですが、映像をやり始めた時にまわりに映像関係の知り合いがいなかったので、作るのがすごく大変でしたね。

秋好:先ほどウェイクボードで自分の動画を作ることがきっかけだったとお話されていましたが、複数の仕事を抱えていると、その経由でいろいろな人と繋がれそうですけども。それは違うんですか?

田口:やっぱ、ウェイクボードってまだまだマイナーなスポーツなんで。なかなかそういう人たちが入ってきてくれなくて、出会いのチャンスは少なかったですね。

複業における時間管理術は……特にない?

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秋好:では、次に複業における時間管理術をお聞きしたいのですが、みなさんいかがですか?

安藤:時間管理術はないですね。ただ、自分のキャリアを3年ごとに一括りにして3年サイクルの中長期的な目標は立てます。『20代のうちにやりたいこと手帳』っていう本として手帳も出しているので。

なので、目標管理はよく考えているとは思うんですが、時間管理に関しては一番下手だと思いますよ。遅寝遅起きですし。

秋好:じゃあ、どうやって時間管理しているんですか? 例えば、googleカレンダーみたいなもので。

安藤:googleカレンダーと手帳ですね。

秋好:アナログも使うんですね。

安藤:アナログも使います。目標を立てたりする時は携帯のメモだと味気ないので、自分の手を動かして、実際手帳に書き込んでいくという方法をとります。まあ、日々のスケジュールはgoogleカレンダーで共有することが多いんですけどね。

秋好:今ってスプリーさんはお二人でしたっけ?

安藤:私と業務委託の人だったんですけども、最近、広い事務所に入って。その事務所はメディアを中心に行なうので、従業員はそんなにいないんです。昔はテレビ出演お打ち合わせだったりで共有事項が増えていったので、アシスタントがいたんですけど。私は人を雇っていくのはとにかく向いていなくて。なので、なるべく1人でやりますね。

秋好:じゃあ、未来の目標は明確に持って、日々はだらだらといった感じ?

安藤:日々はそんな感じ。だから、移動時間とかもいつも何かやっている。あまりぼ〜っとしてはいないですね。時間管理は特にせず、気合で乗り切るって感じです。

ツタヤしゅうせい

秋好:その他のみなさんはどうですか?

高橋:時間管理は出来ないのでしません。しようと思うとストレスが溜まるので、最初からしないって決めています。行き当たりばったりではないですけども、何とか生きています。

それでもスマホのカレンダーは入れていますね。機種はXperiaなんですけども既存でついているもの。お客さんとのアポイントとか、人に迷惑をかけることだけは入れます。

田口:僕も同じく出来ていないですね。僕は結婚しているんですけども、奥さんにやってもらっています。家の事情と重なってしまうことがよくあって、なので入れてくれと。最低限の納期だけは入れておきますね。

籔田:私も出来ていなくて。二足のわらじを履くつもりで早朝勤務にしたので、予定としては朝から働いて、午後は早めに帰る。だいたい13時には帰っているので、そのあと仕事をすれば素晴らしいじゃないですか。でも寝ちゃうんですよね。で、夜になってSNSに写真をアップしているうちに、仕事の時間も押し迫ってきてみたいな感じなんで。早朝勤務な割には、寝るのが1〜2時だったりして、全然時間管理出来ていないです。

秋好:ありがとうございます。ここまで実際に複業を実践されてきた方々にお話を聞いてきました。今後、日本において労働人口は減少していくなかで、一生一つの仕事をするのってなかなか難しいのではないかと思います。ただ1人の人が2の仕事をするとか、今まで働けなかった人がちょっとだけ働くとか、日本の課題解決になる。ただのトレンドというものではないんじゃないかと思います。

もう一つが、スキルの掛け算によって唯一の存在になること。例えばエンジニアで世界一になるのってなかなか難しいことだと思うんですけど、僕エンジニアで鎌倉に詳しいんですよ。そしてチャーハンを作るのが上手い。(笑) なので、エンジニアで鎌倉に詳しくて、チャーハンを作るのが上手いだとナンバーワンなんじゃないかと。この例えは微妙ですが、”掛け算を作れるキャリア”が大切だと感じています。

本日のトークセッションを受けて、みなさんもがんがんアクションを起こすなり、起業するなりして、行動に落とし込んでいただければと思います。登壇者の皆さま、そして会場に足をお運びくださった皆さま、30分という短い時間ではありましたが、本日はありがとうございました。

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