主婦フリーランス、家出をする。異国の田舎町…というか村で仕事はできるか!?

主婦フリーランス、家出をする。異国の田舎町…というか村で仕事はできるか!?
フランス領のタヒチで暮らす日本人フリーランサーが、家出を決意しました。家事と育児を行ないつつ、フリーランスとして仕事までしている頑張り屋さんの彼女。ひょんな事から堪忍袋の緒が切れて、家を飛び出し最果ての地へ。喧騒から逃れても、仕事の締め切りは迫ってきます。静かな環境で仕事に集中すべく敢行した家出旅。果たしてその結末は?
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もう耐えられない!こうして私は家出をしました

フランスは今、バカンス・シーズン。南仏からはるばる義理の姉家族がタヒチの我が家にやってきました。

滞在なんと三週間!義理の姉夫婦と小学生~中学生の三姉妹が、我が家で毎日朝から晩まで大ゲンカ!思春期に入り部屋にひきこもりがちな長女。ケンカっぱやく口が達者で悲劇のヒロインな次女。その年子で能天気だけど、キレると椅子や物を投げまくる三女。ケンカを止めようとして一番ヒートアップする義姉。いい加減にしろ!と怒鳴りまくる義姉の旦那さん。

一方の私は、仕事の締め切りが迫ってきておお焦り。家で働いていると、またもやケンカがはじまり、トイレに閉じこもった次女が「わかったわよ!私は一生ここに住めばいいんでしょ!」と泣きわめき、義姉が「出てきなさい!!」と叫び、別の場所で長女と三女が怒鳴り合い、ドアを激しく開け閉めし、義兄が怒鳴り……ここで、遂に私の堪忍袋の緒が切れました。

涙がダーダー勝手にあふれてきて、なぜ私はケンカばかりしている義姉家族の食事を作り、掃除し、汚したトイレを綺麗にしているのか!?そう思うと、いてもたってもいられず、荷物をまとめてうるさい我が家を飛び出しました。

友人の家に転がりこみ、タヒチで暮らす先輩方から含蓄あるお言葉をいただくことに。曰く「フランス人は“察する”能力ゼロ」。「戦え、戦え、戦え」のマインドコントロールをかけてもらい、深夜1時まで語り明かしました。

タヒチ島のはずれまで家出旅

チョーポー村

翌日は一人タヒチ島の最果て、サーファーの聖地Tehaupoo(チョーポー、チョープー、テハウポウ)の安バンガローホテルに向かいます。そのホテルを選んだポイントはフリーwi-fi!

自宅の喧騒から離れ、締め切りの迫っている仕事に取り掛かるためにも、静かでネット環境の整った場所を選びました。

ネットでホテルの場所を調べると、目的地は海の中……。タヒチに15年以上住む友人に尋ねるも、「そんなホテル聞いたこともない」と言われ不安になりつつも、静かな環境で思いっきり仕事する自分の姿を想像し、片道約80キロ、土砂降りの中で車を走らせました。

無事ホテルに着いたものの……

いよいよチョーポーに。タヒチに住んでからはじめて訪れた最果ての地は、ほとんど車が走らず、まるで植物園のように鬱蒼と木が生い茂っています。

ヤシの木でほとんど隠れてしまっているホテルの看板をどうにか見つけ出し、舗装されていないガタガタ道を数十メートル進むと、古めかしいバンガローが……。『ここかなぁ?』と不安になっていると、人懐っこい笑みを浮かべたタヒチ人女性スタッフ、イザベルが迎えてくれました。

早速、彼女に連れられてホテルを一回り。といっても小さなバンガローが全部で5つ。共同キッチン、食堂、海に面した小さな庭があるだけのこじんまりした敷地です。

バナナ食べ放題

小雨の中、一人海岸を歩き、巨大な貝殻を拾っていると、イザベルが「バナナ食べる?」と採れたてバナナを持ってきてくれました。「食べ放題だからね!」と指差した先には、巨大なバナナの房が。パパイヤ、マンゴー、バナナ、アボカドなどの木がきちんと手入れされていて、イザベルが丁寧に育てているのが分かります。

一息ついたら、早速バンガローのテラスで、持ってきたノートパソコンを開いて、久々に静かな環境のなか仕事をはじめると……、イザベルが突然どっかりと私の前に腰かけて、「あぁ~疲れた。スタッフ私だけなのよ。ボスが、超嫌な奴でさぁ」など愚痴の嵐。

村対抗のお祭りに

しばらく彼女の愚痴に付き合い、もうすぐはじまるプロ世界サーフィン大会やチョーポーについて話し、ふと私が「オリタヒチ(タヒチアンダンス)踊らないの?」と尋ねると、彼女の瞳がキラリと輝き「今夜私の娘が踊るの!一緒に来る?」と。「一人で優雅に仕事」の当初の計画もどこへやら、二つ返事で「行く!」と答えると、彼女は早速娘さんの携帯に電話を掛け、弾んだ声で「今夜、友達も一緒に行くよ!」。

出会ったばかりでも“友達”なのが、タヒチ人の大らかで良いところです。電話の向こうから準備で忙しそうな娘さんの様子が伝わり、私もワクワク。

タヒチアンダンス

夜、車でイザベルの家に迎えに行き、彼女と甥っ子を乗せてダンス会場に向かいました。オシャレして集まったタヒチ人たちにまじって、村対抗のタヒチアンダンスのコンクール鑑賞。子どもから大人まで混じったグループが、精一杯踊る姿に会場は大盛り上がりです。舞台効果のスモークは会場の串焼きの煙。満席の観客は飲んで食べて、大声援!観光客は全くいないディープなお祭りは、夜遅くまで続きました。(あれ?仕事は……?)

やっと仕事ができる!?

その夜は雨がしとしと降り、波の音が響くなか、祭りの興奮を引きずって久々によく眠れました。翌朝は日曜日。教会のミサに行くイザベルは仕事が休みの日。彼女に邪魔されず、仕事できるぞ!と、食べ放題のバナナ片手にパソコンを立ち上げるも……wi-fiが繋がらず。

何度試すも全く繋がらず、結局チョーポーのサーフスポットを観光し、たっぷり深呼吸して家に帰りました。

タヒチのサーフスポット

家に着くなり、早速義姉に時間をつくってもらい、『家の中では靴を脱いで』『汚したら掃除して』『ゴミは捨てて』『ケンカは外で!』を伝え、ハグして仲直り。義姉家族の滞在はまだしばらく続きますが、うまく息抜きして、気持ちを伝えて、おもてなしできたら良いなと思います。

仕事はできなかったけれど……

当初、家出しても働けるのがフリーランスの良いところ!というレポートを書く予定だったのですが、人懐っこいイザベルと脆弱なネット環境で働くことはほぼできませんでした。『wi-fi完備』と表記があっても繋がるとは限らない。こと陽気な性格の国や地域であれば、「繋がらなくてもそれはそれで……」という心のゆとりを持つことが必要かもしれません。海外のカフェやホテルで「ネットに接続して仕事をしよう」と考える方は、くれぐれもご注意ください。

結論:人懐っこいイザベルに出会わず、ダンス大会に飛び入り参加せず、wi-fiが繋がりさえすれば、落ち着いて仕事ができるので、家出の際には場所選びが重要。

そういえば、ホテル前の海岸で拾った巨大貝殻は、計ったら1.4kgもあり、今パソコンに向かう私の傍らで、書類を抑えつつ磯の香りを振りまいています。ずっと欲しかった文鎮がタダで手に入ったと思えば、有意義な家出旅だったのかな?

タヒチの貝殻

仕事で、またプライベートで息がつまったら、ふらりと家出旅してみませんか?タヒチへの家出旅ももちろん大歓迎です。

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