南国 奄美大島、フリーランスが最も働きやすい島化計画はじめました。

南国 奄美大島、フリーランスが最も働きやすい島化計画はじめました。
九州南方海上にある奄美群島の主要な島、奄美大島。澄んだ海と手つかずの山々など、大自然と共存できる南国の楽園です。東京から直行便が飛び、夏休みの旅行先としてもってこい。そんな奄美大島の進める「フリーランスが最も働きやすい島化計画」。計画を推進する勝 眞一郎さんに、計画の背景と奄美での暮らしについて聞いてきました。
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美しい海まで、直行便で2時間5分。大自然に囲まれた奄美大島

透明度の高いコバルトブルーの海。珊瑚礁でブレイクする上質な波。蒸留酒で糖分ゼロなのに、黒砂糖のまったりとした甘みを感じる黒糖焼酎。南国らしく楽しむなら、フルーツと一緒にトロピカルカクテル。

東京から直行便で2時間5分。透き通る海でのダイビングも、マングローブ原生林のカヌーツーリングも楽しめる楽園。「名前は知ってるけど行ったことのない島」である奄美大島で、自治体としてフリーランスが最も働きやすい島化計画 を立案し、移住者を積極的に募るそうです。

なぜ、奄美大島が「フリーランスが最も働きやすい島化計画」?

奄美大島の海の写真

計画の背景にあるのは、若年者が能力を発揮する就業の場が少ないという問題。世界自然遺産に登録が期待されるほどの観光資源を持ちながらも、本土の経済圏から離れ、市内に大規模な産業がないという離島特有の課題がありました。

一方で、近年はインターネットの活用が進み、離島にいても都心と変わらない仕事環境が整いつつあります。実際に、フリーランスや実力のあるエンジニアが少しずつUターン・Iターンという形で、島内で働きながら暮らし始めたとか。これらの傾向を踏まえ、「フリーランスが最も働きやすい島化計画」をスタート。2020年までに200名のフリーランスを奄美市内で育成すること、また、50名以上のフリーランスの移住者を呼びこむことを目標にしています。

しかし「名前は知っているけど、行ったことのない島」である奄美大島。現地での暮らしは、どのようなものなのでしょうか。本計画の推進役である勝 眞一郎氏に話を伺います。

勝さんは小学生まで奄美で育ち、現在はサイバー大学で教鞭をとりながら、業務系のコンサルタントであり、奄美市の通信産業インキュベーションマネージャーを務める人物。いわば、ご自身もフリーランスのような働き方をしています。勝さんに聞く、奄美大島の魅力とは。

観光業・農業に続く産業の柱と、移住者

勝先生

―「奄美にフリーランスを」という計画の背景を、簡単に教えてください。

奄美市として、産業を通じて人を増やしたい、増やさなくてはいけないという課題がありました。奄美群島の市町村の出生率は、全国的に見ても非常に高いんですね。でも大学がなかったり雇用が少ないせいで、若者が島外に出てしまう。

「観光客を増やすだけでなく、島内で暮らす人を増やしていこう」「そのために雇用の受け皿となる産業を確立しよう」という流れになり、産業の柱として選ばれたのが観光業と農業、そして情報通信産業でした。

奄美市は、取り組みのひとつとして、『奄美市ICTプラザかさり』という情報通信産業のインキュベート施設を平成24年につくりました。奄美大島の特産品である、大島紬の製造工程や商品を展示する施設だった建物が活用されていなかったのでリノベーションしたのです。

施設の場所は、奄美空港のすぐ近くにあります。島外の人には便利ですが、奄美の人にとっては中心街から離れて不便。じゃあ島外を含めて集客する必要があるよね、ということで計画したんです。ざっくりこれが「フリーランスが最も働きやすい島化計画」の前段の動きになります。

移住するなら知っておきたい、奄美大島の環境

奄美と都会の違いって?ネット回線はあるの?

勝先生の日常

―そもそも、奄美大島での暮らしって想像がつかないんですね。生活するにあたっての良い所とか、逆に不便かもしれないことなどを教えてください。

奄美大島の市街地で、名瀬という場所があるんですね。ここは普通に色々なお店やビル、居酒屋とか家電量販店、TSUTAYAもある。まぁ、日本中のあちこちにある市街地です。

でも東京など大都市と比べたら、コンフォータブルな環境ではなくって。いたるところにコンビニがあるとか、何もかも揃った利便性を望むと、奄美に来る理由はないですよね。そうじゃなくて、やっぱり手付かずの大自然。これはちょっと、都会の人には想像がつかないと思います。

海は当然、透き通って綺麗。サーフィンやダイビングなど、マリンレジジャーは最高ですね。夜になれば星空が広がって。ここに魅せられて移住する人も少なくないんですが、どんなに語っても伝わり切らないのが残念で仕方ない(笑)。

マリンレジャー、シュノーケリング

―そのあたりは写真を見てもらうとして(笑)。そんな素敵な土地へフリーランス50人に移住してもらう、という計画です。実際に働くとなると、住む家やネット環境とかが気になりますよね。

市街地やインキュベート施設は光回線が入っていますが、施設のある空港近く、笠利町という場所はADSLなんですよ。「今どきADSLかよ」って思うでしょうが、下りで2Mbpsくらいは出ていて。使う人が少ないので、あんまり混んでない(笑)。

とはいえやっぱり回線の整備は必須なので、NTT西日本様に市長名で毎年要望は出しています。費用も莫大なので、今後優先順位を決めて地区ごとに徐々に整備を進めていく計画です。

奄美に住みたいと思ったら、簡単に住居は見つかるのか

奄美の暮らし、住宅

―住宅事情はいかがでしょうか。エイブルとかないわけですよね?

ないです。アットホームもない(笑)。今回の計画では、仕事支援はランサーズさんと、教育は奄美市のプログラム、そして住居の支援については、「空き家バンク」っていう奄美市の宅建協会と組んで仕組み化したんですね。

昔よりはポンと行って、見に行きやすくはなったと。それでも、やっぱり後々のことを考えると、これは奄美に限ったことではありませんが、地元の人とコネクションをつくっておくのが良いと思います。「アイツだれ?」みたいな話になるので。

コミュニティに入らなくても生活はできますけど、「つまんない!」というか、せっかく移住するのであれば、一人でこう海を眺めて……っていう生活もありですけど、やっぱり面白いのは集落のコミュニティに溶け込むことだと思うんですね。

花火大会

これからの季節なら夏祭りがたくさんあるんですけど、舟こぎ競争とか花火大会とか。そういう行事や住民同士の触れ合いが醍醐味なんですよ。川に行って魚の捕り方を教えてもらえたり、そういうのやりたいじゃないですか、せっかく行くんですから。

暮らしをちゃんとやりたい、それこそ子育てとかも含めてですね。そうなると都会にいたら体験できない楽しみがたくさんあるんです。男の子はまわし付けて相撲をとったり。台風がくるとみんなやることないんで、電話がかかってくる。「家でみんな集まって飲んでるからオマエも来い」ってね。逆にそういうの呼ばれなかったら寂しいですよ。

東京・奄美を結ぶ直行便の利便性と大自然に囲まれた暮らし

勝先生の自宅

―この計画の前から移住する人が出てきたというお話でしたが。

インキュベーション施設の利用者という意味では、他の島から企業が入って、奄美の人を雇用するという動きがありました。そして、新宿に本社を持つ会社や横浜の会社も入ってくれて。

あとは名古屋大学出身者が立ち上げたゲノム解析のベンチャー企業。ひとりが奄美出身で、実家がお味噌屋さんなんですね。家業を継がなくちゃいけないってなったときに、午前中はお店に出て午後は施設で開発するという働き方を始めました。

彼はすごく腕の良いエンジニアなんですけど、帰ってきてから奄美の風景や暮らしの写真を仲間に送ったらしいんですね。そしたら他のメンバーが羨ましがって、結局、会社の登記を移しちゃって、社長も移住してきました。奄美での生活を本当に楽しんでて、昼休みになると潜りにいって、帰ってくるとトイレに海パン干してたりして(笑)。

神秘的な海

働きやすいっていうのは、ネットや住環境、仕事の斡旋とかだけではなくて……生活が豊かであることが大事だと思うんです。自然がたくさんあって子供を育てやすいとか。そういうバランスとって仕事をするのがフリーランスのメリットでもあるじゃないですか。

中でも奄美は特に良い環境だと感じています。東京から直行便が出ているっていうのも、離島にしては珍しい。自然豊かな環境で暮らしながら、必要があれば飛んで行く選択肢があるのは、奄美の利点でもあると思うんです。

豊かな人生って、ひとつはこういう場所での暮らしで実現できるんじゃないですかね。海は青くて、空もグラデーションが綺麗で、夜は満点の星空。山や森もあって色々な動物に会える。むやみに入らないように、ちゃんとハブもいますし(笑)。冬はホエールウォッチングも楽しめる。

―夏だけじゃなく、季節を問わずに楽しめるんですね。

芸術的ですよ。見てるだけで「おおお……」ってなる。感動的な景色と暮らしがあるんです。

勝 眞一郎:1964年生まれ、奄美大島出身。大学院を卒業後、大手製造業で情報システム、設計管理、物流管理、経営企画を担当。米国シカゴに4年駐在。IT企業の経営を行なった後、2007年ソフトバンクの立ち上げたインターネットの大学「サイバー大学」IT総合学部に就任。奄美市情報通信産業インキュベーションマネージャー、NPO法人離島経済新聞社理事。著書に『カレーで学ぶプロジェクトマネジメント』。
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